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マーケティングオートメーションとは?メール配信ツールと何が違う?

マーケティングオートメーションとは?メール配信ツールと何が違う?

マーケティングオートメーション(MA)ツールは、BtoBのデジタルマーケティングにおいて代表的なツールの1つです。特に最近では、コロナ禍においてセールスプロセスのデジタル化が急速に求められる中で、新たにマーケティングオートメーションツールの導入を検討されたり、デジタルマーケティング施策の強化のためにより高機能なツールへの乗り換えを検討される企業様も増えてきています。

しかし、マーケティングオートメーションとは何なのか、よく理解しないままでは、自社に合った適切なツールを選定することはできません。また、それぞれの企業のビジネスの特質や状況によっては、一般的なメール配信ツールで十分な場合もありますし、マーケティングオートメーションツールの導入よりもウェブ広告の最適化やウェブサイトの整備、SFA/CRMの整備の方が優先順位が高い場合もあります。

そこで、今回は改めて「マーケティングオートメーションとは何なのか?一般的なメール配信ツールと何が違うのか?」「どういった場合に導入・強化すべきなのか?」といった点について整理していきます。

マーケティングオートメーション=マーケティングの自動化、じゃあマーケティングとは?

マーケティングオートメーションツールとは何なのか、と言われれば、文字通り「マーケティングを自動化するツール」です。
では、「マーケティング」とはそもそも何なのでしょうか?
元々はアメリカ発祥の考え方ですが、さまざまな定義があり、企業によってもマーケティング部門が担う役割は様々です。
また、日本企業、特にBtoB企業においては、ある程度の規模でも独立したマーケティング部門が存在しない場合もあり、広報部門や営業企画部門の方が兼務といった形でマーケティング施策を担当するなど、隣接する部門との役割分担が曖昧な場合も多々あります。

しかし、マーケティングオートメーションツールによって自動化すべき「マーケティング」とは何なのかが曖昧なままでは、ツール選定も運用もうまくいきません。そこで、まずはマーケティングオートメーションツールによって自動化すべき「マーケティング」について考えます。

マーケティングには様々な定義がある

上で述べた通り、マーケティングには様々な組織・学者等による定義があります。まずはどんな定義があるのか、代表的なものをいくつか見ていきましょう。

Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.

American Marketing Association(アメリカマーケティング協会)(2017年)

まずはアメリカにおける代表的なマーケティングに関する組織であるAmerican Marketing Associationによる定義です。
簡単に訳すと、
「マーケティングとは、顧客、依頼者、パートナー、そして社会全体にとって価値のあるものを創造し、伝え、届け、交換するための活動や制度、プロセスのことである」
という意味になります。

マーケティングとは、企業および他の組織1)がグローバルな視野2)に立ち、顧客3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動4)である。

1)教育・医療・行政などの機関、団体などを含む。
2)国内外の社会、文化、自然環境の重視。
3)一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む。
4)組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう。

公益社団法人日本マーケティング協会(1990年)

次に、日本における代表的なマーケティングに関する組織である公益社団法人日本マーケティング協会による定義です。
注釈も合わせて読むと、顧客だけでなく取引先や関係する機関・個人、地域住民と言った社会全体を視野に入れている点や、プロモーションだけでない幅広い活動を指している点など、American Marketing Associationの定義と近いものと言えそうです。

マーケティングを最も短い言葉で定義すれば「ニーズに応えて利益を上げること」となろう。

 

フィリップ・コトラー 著、恩藏 直人 訳
『コトラーのマーケティング・マネジメント -ミレニアム版-』
(ピアソン・エデュケーション、2001)

3つ目は、マーケティングの大家フィリップ・コトラーによる定義です。非常にシンプルな表現です。「利益を上げること」は企業活動そのものの目的ですが、単に利益を上げるのではなく、「ニーズに応えて」というのがポイントではないでしょうか。
ニーズとはつまり「顧客のニーズ」であり、この「顧客」の存在を重視する考えと言えると思います。これは、最後に紹介するドラッカーによる定義とも通じるものがあります。

販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。何らかの販売は必要である。だが、マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。

 

ピーター・F・ドラッカー 著、上田 惇生 訳
『ドラッカー名著集7 断絶の時代』(ダイヤモンド社、2007)

最後に紹介するのが、マネジメントの大家ピーター・ドラッカーによる定義です。ドラッカーと言えばマネジメント、つまり経営や組織といったテーマにおいて有名ですが、マネジメントにおける重要な要素としてマーケティングにも言及しています。それが上記の定義です。
先に紹介した3つの定義とはやや趣が異なるように思われるかもしれませんが、「顧客視点」という点は共通していると言えるのではないでしょうか。

マーケティングとは、企業と顧客をつなぐあらゆる活動のこと

マーケティングとは何なのか、4つの定義をご紹介しました。どれも具体的な施策について触れてはいませんから、結局よくわからない、という印象を受ける方もいらっしゃるかもしれません。
共通する要素をあげるとすれば、それは「マーケティングとは、企業と顧客とつなぐあらゆる活動」であるということだと思います。
「企業が顧客にとって必要な製品・サービスを届けるためのあらゆる活動」ともいえるかもしれません。
市場調査から顧客が何を必要としているかを探り、製品・サービスの企画に繋げるいわゆるマーケティングリサーチの分野もありますし、できあがった製品・サービスの存在を顧客に知らせ、必要な情報を届けるのもマーケティングの重要な役割です。また、製品・サービスを実際に顧客の手元に届けるための販売網の構築なども広義のマーケティングといえるでしょう。

マーケティングオートメーションとは、アナログの営業活動をデジタルの力でサポートするもの

上述した通り、マーケティングは様々な施策・領域を含む言葉です。だからこそ、マーケティングの中でも特にどの部分を自分たちの部門やチームが担っているのかを明確にし、目的を共有することが重要です。
そこで、ここからマーケティングオートメーションツールというのは幅広い施策を包含するマーケティングの中でも特にどのような施策を自動化するのかを整理していきます。

BtoB企業において、これまでに企業と顧客をつなぐ役割の大部分を担ってきたのが営業部門です。見込み顧客からの問い合わせに対して資料を送ったり説明に行ったり、そして最終的に商談をまとめて契約に至るまでの販売活動の大部分を営業部門が担当しています。
また、契約後のサポートも、独立したカスタマーサポート部門がない場合は、担当の営業マンが行う場合が多いでしょう。カスタマーサポート部門がある場合でも、何か困ったことがあったときに、「まずは担当の営業さんに聞いてみよう」という顧客も少なくありません。
あるいは、さまざまな商材を扱っている企業では、既存顧客を定期的に訪問して、新製品などを紹介していわゆるアップセルやクロスセルを狙う動きも営業部門が担当していることが多いと思います。

マーケティングオートメーションツールが自動化するのは、まさにこうした営業活動の一部です。顧客(見込み顧客)への問い合わせ対応、訪問、商談、サポートといったこれまで営業部門が担っていた役割は、企業が利益をあげるために非常に重要な活動です。しかし、これをすべて1件1件アナログで対応していたのでは、効率的ではありません。アナログで丁寧に対応すべき案件に営業部門が注力するためにも、デジタルで対応できる部分はデジタルで自動化することで、セールスプロセス全体を効率化するのがマーケティングオートメーションツールの役割なのです。

マーケティングオートメーションツールで実施すべき具体的な施策

では、具体的には営業プロセスの中でどのような施策をマーケティングオートメーションで自動化できるのかを見ていきましょう。もちろんそれぞれのツールによって細かい機能は異なりますが、「マーケティングオートメーション」と名乗っているツールであれば、概ねここで紹介する施策は実行できる機能が備わっていると考えられます。(反対に、これらの機能が備わっていない場合は、マーケティングオートメーションツールというよりも、いわゆるメール配信ツールに近いものと言えるでしょう。)

ホワイトペーパーやカタログ案内とアフターフォロー

ホワイトペーパーなどのお役立ち資料や、新製品発売時のカタログなどのダウンロードの案内をすることで、見込み顧客の興味度合いを計る施策です。
ほとんどのマーケティングオートメーションツールには条件を設定してリストを絞り込むセグメント機能がありますから、保有しているリスト全体に同じものを案内するのではなく、業種や職種。役職、また過去にどういったウェブページを閲覧しているのか、どういったメールに反応しているのか、といった点からセグメントして案内する点が重要であり、この面倒な作業を自動化できるのがマーケティングオートメーションツールのメリットです。

また、製品カタログなど興味度合いが高いと考えられる場合には、資料がダウンロードされた際に担当者に通知をしたり、あるいはお役立ち資料などまだ営業担当者が直接アプローチをするほどには関心度が高まっていないと考えられる場合には、より関心度を高めるために、一定期間後により詳しい内容を案内するステップメールシナリオに移動させたり、といったアフターフォローまで自動化させます。

セミナー・イベント案内とアフターフォロー

セミナー・イベント等に関するコミュニケーションをマーケティングオートメーションツールで自動化します。例えば、以下のような一連の流れです。

また、こうした施策をマーケティングオートメーションツールで自動化しておけば、誰がイベントに申込んだか・参加したかの記録も残りますから、別の施策を実行する際に「〇〇に関するイベントに申込んだことがある人」といった条件で対象を絞り込むこともできるようになります。

セグメント別メール定期配信による認知維持

資料やイベントの案内などがない時でも、定期的にメールを配信していないと見込み顧客に忘れられてしまいますので、認知を維持するためにはいわゆるメルマガを定期的に配信することも重要です。
とはいえ、まったく興味のない内容のメールを送っても配信停止されてしまうなどのリスクがあります。そこで、マーケティングオートメーションツールのセグメント機能が役立ちます。見込み顧客の属性や過去のオンライン上の行動履歴から興味関心に合ったメールを配信することで反応率の向上と配信停止率の低下が期待できます。

スコアリング機能によるホットな見込み顧客の可視化

上記でご紹介したような施策に対してどのような反応をしたか、またターゲットとして適した属性か、といった点から見込み顧客にスコアを付与し、ホットかコールドかを見極めるのもマーケティングオートメーションツールの特徴です。
単純にスコアの高い低いだけでなく、スコアが変化したタイミングで担当者に通知して、フォローをするよう促すこともできます。また、見込み顧客全体でホットな見込み顧客とコールドな見込み顧客のバランスがわかるので、コールドをホット化するための施策に重点を置くべきなのか、コールド層が少なくなってきて新規の見込み顧客獲得を重視すべきなのか、といった全体の戦略を描くためにも重要な機能です。

メール配信ツールとの違い

いわゆるメール配信ツールの場合、上記で紹介した施策のうち、資料ダウンロードやセミナー申込みなどのフォームの作成機能はないことが多いでしょう。
また、メール配信シナリオについても、細かい条件分岐はできないことが多いため、セミナー・イベントのアフターフォローまで一連の流れを自動化するといったことは難しいと思います。

一番の違いは、セグメント機能です。最近ではメール配信ツールでもシンプルなセグメント機能はついていることが多く、例えば特定の業種に絞ったり、特定の職種に絞ったり、といったことは可能な場合もあります。
しかし、複数の条件を組み合わせたり、メールへの反応やフォームの提出状況、ページの閲覧状況といった行動を軸に絞り込むことはできないツールがほとんどです。

そのため、そもそも見込み顧客のリストが少なかったり、商材の種類が少なくターゲットも限定されているなど、細かくセグメントをする必要がない企業の場合にはメール配信ツールでも十分といえます。

代表的なBtoB向けマーケティングオートメーションツール

Oracle Eloqua

Oracle Eloqua(エロクア)はOracle社が提供するマーケティングオートメーションツールです。MAツールの中でも非常に歴史が古く、世界中で利用されています。
「データベースのOracle」が提供するツールとあって、データの柔軟な活用や、きめ細やかなセキュリティ設定が特徴です。Oracle Eloquaの詳細は、「Oracle Eloqua(エロクア)とは?そのメリット・デメリット」にまとめていますので、ぜひご覧ください。

Salesforce Pardot

Salesforce Pardot(パードット)はSalesforce社が提供するマーケティングオートメーションツールです。
Salesforce社のSFA、SalesCloudとの強力な連携が特徴です。Salesforce Pardotの詳細は、「Salesforce Pardot(パードット)とは?そののメリット・デメリット」にまとめていますので、ぜひご覧ください。

Marketo

Marketoは2006年にアメリカで設立されたMarketo社の製品で、2018年にAdobe社に買収され、Marketo Engageという名前になりました。世界で5000社以上に導入されているマーケティングオートメーションツールです。
BtoB、BtoC問わず利用しやすいツールとして、幅広い企業に導入されています。
機能面では、リードのステージ管理機能が特徴的です。それぞれの企業に合わせて商談プロセスを分解し、どのステップにどれだけのリードが存在しているのか、商談プロセス全体を効率的に管理できるようになっています。

マーケティングオートメーションツールの導入を検討するときに必要なこと

ここまででマーケティングオートメーションツールで自動化できるマーケティング施策について整理してきました。では最後に、どういった企業の場合にマーケティングオートメーションツールを導入する必要があるのかについて整理していきます。

セールスプロセスの整理と課題の特定

上述した通り、マーケティングオートメーションツールで自動化するのはこれまでアナログで対応してきたセールスプロセスの一部です。ですから、既存のセールスプロセスや営業担当者がどういった施策を日々行っているのかを整理し、そこから見えてきた課題がマーケティングオートメーションツールによって解消できるのか、という検討が必要です。

最もわかりやすいのは、見込み顧客は十分獲得できているのに、営業部門の手が足りていないためにフォローしきれていない、という企業です。これはまさにマーケティングオートメーションツールの得意分野で、営業部門に見込み顧客に優先順位をつけてパスし、優先順位が低い見込み顧客にはメルマガ等でフォローをする、といった施策によってセールスプロセス全体の効率化を図り、利益に繋げることができるでしょう。

反対に、まだマーケティングオートメーションツールの出番ではない、というケースもあります。例えば、そもそも見込み顧客が足りておらず、営業部門のリソースもそこまでひっ迫していない、という場合です。この場合は新規見込み顧客の獲得が先ですから、ウェブ広告やウェブサイトのSEO(検索エンジン最適化)などの施策の改善を検討すべきでしょう。

また、ニッチな分野でそもそもあまり新規の見込み顧客獲得は期待できないという場合もあります。この場合は、既存顧客の解約率の低下やアップセル、クロスセルといった既存顧客のフォローが重要です。マーケティングオートメーションツールによって改善できる部分もありますが、SFA/CRMといった顧客管理の仕組みが未導入だったりあまり活用されていない場合は、SFA/CRMの整備を優先したほうがよいかもしれません。

このように、自社のセールスプロセスのどこに課題があるのか、それはマーケティングオートメーションツールで解決し得るものなのか、をマーケティング部門だけでなく、営業部門とも協力して議論し、整理することが非常に重要です。

顧客(見込み顧客)データの整理

また、上述のような検討の結果マーケティングオートメーションツールが必要だと判断された場合に、もう1つ気を付けなければならない点があります。それは、ツールを導入すればすぐに施策が実施できるわけではなく、下準備が必要だという点です。

特にネックになることが多いのが、顧客データです。主に以下の点について事前にチェックしておくとよいでしょう。

顧客データが10万件あると思っていても、古いデータの場合は人事異動や転職などでメールアドレスが使用不可能になっている場合も多く、実際に配信してみたら2~3割は使えないリストだった、というケースもよくあります。
また、過去にメール配信を行っていた場合に、一度配信停止されているメールアドレスが混じっていないか、配信許諾の状況がわかるようになっているかも、トラブルを避けるためには重要です。
さらに、例えば業種別にメール配信をしたいと思っても、業種データがなければその施策は実現できません。業種・企業規模などの属性データや、購買履歴などの付加情報がすでにあるのか、これから整備していくのかではツール導入後に成果が出るまでにかかる時間が変わってきますので、こうした点についてもあらかじめ整理しておくことが重要です。

ここまで、マーケティングオートメーションツールとはこれまで営業部門が担っていた役割の一部をデジタル化することでセールスプロセス全体を効率化するものであること、そしてその具体的な施策・活用例、さらに導入を検討する上で注意すべき点についてまとめてきました。
ぜひ参考にしていただき、適切なデジタルマーケティング戦略構築のお役に立てれば幸いです。
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