企業の成長に伴い、経理・財務管理の業務はますます複雑化しています。特に中堅企業や成長企業、IPOを目指す企業、多拠点展開を行うグループ企業では、膨大な取引データの管理や正確な財務報告、効率的な業務フローの構築が課題となることが少なくありません。こうした課題を解決するためのツールとして注目されているのが「勘定奉行V ERP」です。
本記事では、勘定奉行V ERPの機能や導入メリット、費用などについて詳しく解説します。
勘定奉行V ERPとは
勘定奉行V ERPは、企業の経理・財務管理を効率化するクラウド型ERPシステムです。特に中堅企業や成長企業、上場企業、IPO準備企業、グループ経営を行う企業など、さまざまな規模の企業で利用されています。
このシステムの強みは、日本の商習慣に適したSaaS型ERPとしての柔軟性と高機能性にあります。企業の成長とともにデータ量が増加してもスムーズに対応できるキャパシティを持ち、外部システムとのデータ連携機能を備えているため、会計だけでなく販売管理や人事労務管理といった他の業務ともスムーズに統合できます。
ERP市場での評価も高く、日経コンピュータの顧客満足度調査(2023-2024)においてERP部門で1位を獲得するなど、多くの企業から信頼を得ています。
勘定奉行V ERPの導入実績も豊富で、累計80万社が奉行シリーズを採用しており、1669社の上場企業、52%のIPO実現企業、そして790社のグループ会社(うち上場企業)で利用されています。
勘定奉行V ERPの主な機能
勘定奉行V ERPの主な機能は次のとおりです。
会計業務機能
制度会計・管理会計
勘定奉行V ERPクラウドは、制度会計と管理会計の両方に対応し、会計業務の生産性向上と管理レベルの強化を実現します。日々の仕訳処理から会計帳票の作成、決算締処理、消費税申告までの一連の会計プロセスを効率化することで、経理担当者の負担を軽減します。
たとえば、月次決算の締め処理もリアルタイムで進行状況を確認でき、部門ごとの予実管理も容易に行えます。さらに、IFRS(国際財務報告基準)への対応や内部統制、監査対応にも優れており、グローバル展開を視野に入れた企業にも対応可能です。
証憑収集・管理
証憑収集・管理機能では、従業員が受領した領収書や請求書、各拠点で管理されている証憑を電子データとして一元的に収集・管理できます。紙ベースでの管理や物理的な書類のやり取りが不要となり、証憑の紛失リスクを低減するとともに、経理業務の効率化が図れます。
証憑の提出から承認までのプロセスもシステム上で完結するため、承認フローの可視化と迅速化が可能です。
債権債務管理
債権債務管理機能は、売掛金や買掛金といった債権・債務の発生から入金・支払業務までのプロセスを自動化します。たとえば、取引先ごとの入金状況や支払予定をリアルタイムで把握できるため、キャッシュフローの管理精度が向上します。
また、消込作業も自動化され、手作業によるミスを防止し、経理担当者の負担を大幅に軽減します。多通貨取引やでんさい(電子記録債権)管理、手形管理にも対応しており、グローバル企業にも対応可能です。
個別原価管理
個別原価管理機能は、案件やプロジェクト単位で発生する原価を正確に把握し、損益を迅速に分析できるよう設計されています。たとえば、建設業や製造業などのプロジェクト型ビジネスでは、部門別、工程別、プロジェクト別にコストを細分化して管理することが重要です。間接費や共通原価の配賦も自動化され、実際の原価と予算との差異分析が容易になります。
建設業会計
建設業会計機能は、工事や現場単位で発生する原価を詳細に管理し、部門別・工事別・工程別の損益を迅速に把握できます。工事情報の管理から原価計算、間接費の配賦までを一元的に処理できるため、建設業特有の複雑な会計処理にも対応可能です。
労務費の管理や完成・棚卸振替といった工事進行中のコスト管理も正確に行え、原価超過のリスクを早期に発見できます。
固定資産・リース資産管理
固定資産・リース資産管理機能は、企業が保有する固定資産やリース資産に関する情報を一元管理します。資産の取得から除却までのライフサイクル全体をシステム上で管理でき、減価償却の計算や資産除去債務、減損会計にも対応しています。
また、IFRS基準に基づいた資産管理も可能であり、グローバル展開している企業にとっては重要な機能です。資産台帳の作成や申告書の自動作成機能も備えており、税務申告の準備業務も効率化します。
税務申告
税務申告機能は、法人税や地方税の申告書、内訳書、概況書の作成から提出・納税までの一連の申告業務を効率化します。申告書の作成はシステム上で簡単に行うことができ、電子申告にも対応しているため、税務署への提出もオンラインで完結します。
地方税の納付管理も一元化されており、複数の自治体への納付が必要な企業にとっても負担軽減となります。
支払調書管理
支払調書管理機能は、企業が取引先に対して発行する支払調書の作成業務を効率化します。特にマイナンバー制度への対応が求められる中で、個人支払先のマイナンバー管理も含めたセキュアなデータ管理を実現しています。
電子申告機能も備えており、国税庁への提出もスムーズに行えます。
データ分析・活用
データ分析・活用機能は、膨大な会計データをリアルタイムで集計・分析し、経営判断に必要なインサイトを提供します。たとえば、売上データ、コスト構造、キャッシュフローなどの財務指標をダッシュボード上で可視化でき、経営層は常に最新の経営状況を把握することが可能です。高速集計機能により、数百万件規模のデータも瞬時に処理でき、多角的なレポート作成が容易に行えます。
人事労務機能
人事管理
人事管理機能は、組織情報や社員情報を一元的に管理することで、企業の成長に合わせた柔軟な人事制度の運用を支援します。社員の基本情報だけでなく、入社から退職までのキャリア履歴、異動歴、資格情報、評価結果などを包括的に管理できます。
たとえば人事異動や賃金改定の際には、過去のデータを参照しながら最適な判断を迅速に下すことが可能です。また、人事情報分析機能は社員のスキルや人材配置の最適化にも役立ちます。
給与管理
給与管理機能は、給与計算に関わる一連の業務プロセスを自動化し、正確かつ迅速な給与処理を実現します。
給与賞与処理、社会保険・労働保険の計算、銀行振込データの作成、年末調整、法定調書作成、給与明細の配付までを一気通貫で管理できます。たとえば、年末調整の際には従業員が申告した内容を自動で反映させることで、経理部門の作業負担を大幅に軽減します。
勤怠管理・労務リスクマネジメント
勤怠管理と労務リスクマネジメント機能は、従業員の勤務状況を正確に把握し、労務コンプライアンスの強化を支援します。従業員が自身の勤務予定を入力し、打刻や申請・承認までをオンラインで完結できるため、紙ベースでの勤怠管理に比べて大幅な効率化が図れます。
労務手続き
労務手続き機能は、入社・退社、住所変更、育児休業、結婚・離婚など、さまざまな労務関連の手続きをWeb上で完結できるように設計されています。従業員自身が申請フォームに情報を入力することで、紙の書類提出が不要となり、管理部門の事務負担を大幅に軽減します。
年末調整申告
年末調整申告機能は、年末調整に必要な情報収集から申告処理、電子申請までの業務をWeb上で効率的に実施できます。従業員は自宅からでも年末調整申告書をオンラインで提出でき、控除証明書なども電子データとしてアップロード可能です。
明細書発行
明細書発行機能では、給与明細書、賞与明細書、源泉徴収票などを電子化し、全従業員に対して自動的に配付できます。紙の明細書を印刷して配布する手間が不要になるだけでなく、紛失リスクの軽減や個人情報保護の強化にも寄与します。
従業員は自分のPCやスマートフォンから明細書をいつでも確認できるため、利便性も向上します。
販売管理機能
販売管理
販売管理機能は、見積もりの作成から受注、売上計上、請求書の発行、入金管理まで、商取引における一連のプロセスを効率化します。見積書作成機能を活用することで、取引先ごとの価格設定や割引条件を自動で反映でき、見積もり作成の手間を大幅に削減できます。
受注管理では、受注内容がそのまま売上管理や請求書発行に連携されるため、二重入力の手間を防ぎ、データの整合性が保たれます。
仕入管理
仕入管理機能は、発注から仕入、支払までの一連の購買業務を効率的に管理します。発注管理機能では、在庫状況や販売予測に基づいた適正在庫レベルを自動で計算し、無駄な在庫の発生や欠品リスクを最小限に抑えることができます。
支払締処理や支払管理機能により、支払業務の自動化が可能となり、支払期日の管理や支払漏れの防止にも役立ちます。
入出荷管理・在庫管理
入出荷管理と在庫管理機能は、物流プロセスの最適化と在庫の正確な把握を支援します。入荷管理機能では、発注データと連携することで、入荷予定と実績の差異をリアルタイムで確認でき、納品遅延や誤納品の防止に役立ちます。
出荷管理では、受注情報と連動して出荷指示を自動化できるため、出荷ミスのリスクを軽減します。ロット管理やロケーション管理機能を活用すれば、商品の保管場所や製造ロットごとの在庫状況を正確に追跡でき、トレーサビリティの向上にも寄与します。
案件別管理
案件別管理機能は、案件ごとに関連する全ての取引データを一元管理でき、売上やコスト、利益率をリアルタイムで把握することが可能です。たとえば、建設業やIT業界など、長期プロジェクトを伴う業種においては、案件の進捗管理と予算管理を同時に行えることで、コスト超過や納期遅延のリスクを早期に察知できます。
データ分析・活用
データ分析・活用機能は、販売、仕入、在庫などの実績データをリアルタイムで可視化し、経営判断に必要なインサイトを提供する機能です。取引先別、商品別、地域別など、さまざまな切り口で売上データを分析でき、売上の傾向や課題を素早く把握できます。
勘定奉行V ERPを導入するメリット
勘定奉行V ERPクラウドを導入することで得られる主なメリットについて詳しく解説します。
業務効率化と生産性向上
勘定奉行V ERPは、会計処理や人事労務、販売管理といった日常業務を自動化することで、作業負担の大幅な軽減を実現します。例えば、請求書の発行や支払処理、給与計算などのルーチン業務は、従来手作業で行っていたものをシステムが自動で処理するため、ミスの削減と作業時間の短縮が可能です。
また、ワークフロー機能を活用することで、申請・承認プロセスを電子化し、承認フローの可視化や進捗状況の管理が容易になります。自動化によって、従業員はより付加価値の高い業務に集中でき、企業全体の生産性向上につながります。
クラウドならではの利便性
勘定奉行V ERPはクラウド型のため、自社でサーバーを管理する必要がなく、ITインフラの維持管理にかかるコストや手間を大幅に削減できます。システム担当者はサーバー保守やバージョン管理といった煩雑な作業から解放され、コア業務に専念することが可能です。また、インターネット環境があれば、PCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスから時間と場所を問わずにシステムにアクセスできるため、テレワークや出張先での業務もスムーズに行えます。
最新のセキュリティで安心運用
勘定奉行V ERPは、世界的に信頼性の高いクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azure上に構築されており、強固なセキュリティ基盤を持ちます。データの暗号化、二要素認証、不正アクセス検知など、最新のセキュリティ技術が標準で備わっており、企業の重要なデータを外部の脅威から保護します。
常に最新バージョンが利用可能
クラウド型である勘定奉行V ERPは、自動アップデート機能により常に最新バージョンのシステムを利用できます。法改正や税制変更への対応も迅速で、ユーザー側での煩雑なバージョンアップ作業は不要です。
グループ企業の経営管理を強化
勘定奉行V ERPは、複数の拠点やグループ会社を持つ企業に最適な統合管理機能を備えています。国内外の子会社や関連会社の会計データや販売データをリアルタイムで一元管理でき、グループ全体の経営状況を迅速に把握できます。
たとえば、海外拠点の売上や在庫状況も本社からリアルタイムで確認できるため、グローバルな経営判断が迅速に行えるようになります。また、連結決算業務の効率化や内部取引の自動消去など、グループ経営に不可欠な機能も標準装備されています。
勘定奉行V ERPの料金・費用
勘定奉行V ERPの料金・費用については、明確な価格が公開されておらず、導入を検討する企業ごとに個別の見積もりが必要です。これは、企業の規模や業務内容、導入する機能の範囲、カスタマイズの有無など、さまざまな要素によって費用が大きく変動するためです。
たとえば、会計業務だけを効率化したい企業と、人事労務や販売管理など多岐にわたる機能を統合したい企業とでは、必要なライセンス数やサポート範囲も異なるため、コストも大きく異なります。
勘定奉行V ERPの導入の流れ
勘定奉行V ERPの導入の流れについて詳しく解説します。
現状の業務プロセスやシステム環境の分析から始まります。企業が抱えている課題や業務上のボトルネックを明確にすることで、ERP導入によって解決すべきポイントを洗い出します。たとえば、手作業が多く非効率な会計処理や、データが部門ごとに分散していることで情報共有が難しいといった課題がここで浮き彫りになります。また、各部門へのヒアリングを通じて業務フローを可視化し、ERP導入後に目指すべき業務の理想像を明確にします。
現状分析と課題整理が完了したら、次に行うのが要件定義です。どのような業務をERPで管理するのか、どの機能が必要かを明確にします。たとえば、「販売管理機能でリアルタイムな在庫管理を実現したい」や「人事労務のワークフローを自動化したい」といった具体的なニーズを洗い出します。
また、会計基準や税務要件、法令対応といった法的要件も考慮に入れながら、システム設計を行います。さらに、他の業務システムとの連携が必要な場合は、APIやデータベースの仕様についてもここで定義します。
要件定義に基づいて、実際のシステム構築と必要なカスタマイズを行います。勘定奉行V ERPクラウドは高い柔軟性を持つため、企業ごとの業務フローや管理体制に合わせて細かいカスタマイズが可能です。
システム構築が完了したら、次はテスト運用フェーズに移ります。ここでは、実際の業務データを使用してシステムが正しく機能するかどうかを検証します。具体的には、入力したデータが正確に処理されるか、各種帳票が正しく出力されるか、他システムとの連携がスムーズに行われるかといったポイントを重点的にチェックします。
勘定奉行V ERPが向いている企業
勘定奉行V ERPは次のような企業に向いています。
中堅企業・成長企業・IPO準備企業
勘定奉行V ERPは、中堅企業や成長企業、IPO(新規株式公開)を目指す企業に特に適しています。
IPO準備企業にとっては、上場審査に必要な透明性の高い財務報告や迅速な決算対応が重要です。勘定奉行V ERPは、リアルタイムでの財務データの可視化や、正確な会計処理を自動化することで、短期間での決算業務の効率化と内部統制の強化を実現します。
グループ企業や多拠点展開企業
複数の子会社や海外拠点を持つグループ企業、多拠点で事業を展開する企業にとって、勘定奉行V ERPは統合管理の強い味方となります。
各拠点や子会社ごとに異なる会計基準や通貨に対応しつつ、グループ全体の財務データをリアルタイムで集約・分析できます。国内外の拠点で発生する取引情報を一元管理することで、グループ全体の財務状況を迅速かつ正確に把握でき、経営層はリアルタイムで意思決定を行うことが可能です。
また、多通貨対応や国際会計基準(IFRS)への準拠機能も備えており、グローバルに事業を展開する企業でも安心して利用できます。
煩雑な経理・財務管理を効率化したい企業
多くの企業では、売掛金や買掛金の管理、支払調書の作成、取引先ごとの消込作業など、手作業による処理が多く、ミスの発生や作業負担の増大が課題となっています。勘定奉行V ERPは、これらの業務を自動化することで、人的ミスの削減と業務効率の向上を実現します。
取引先ごとの入金消込作業もワンクリックで完了し、膨大な取引データの中から不一致を自動で検出することが可能です。また、AIを活用したデータ分析機能により、財務データの傾向分析や課題発見も迅速に行えるため、経営判断の精度向上にも貢献します。
勘定奉行V ERPで企業の成長を加速させよう
勘定奉行V ERPは、企業の経理・財務管理、人事労務、販売管理といった幅広い業務の効率化と経営基盤の強化を支援するERPシステムです。
特に成長著しい企業や複雑な組織構造を持つグループ企業、IPOを目指す企業にとっては、内部統制の強化やリアルタイムでの経営データ分析など、多くのメリットをもたらします。
ただし、課題やニーズを明確にした上で、最適なERPを選びましょう。