この記事では、NetSuiteパートナーとして様々なNetSuite導入・保守プロジェクトに携わらせていただいた弊社が考える、NetSuite導入におけるベストプラクティスを紹介します。
NetSuiteを導入する際には、ビジネスのニーズや業務プロセスの改善を最優先に考え、適切な計画とリソースを用意することが不可欠です。また、導入後のサポートや保守にも十分なリソースを割くことで、システムの最適な活用を実現できます。この記事では、導入前から導入後までの段階での注意点やポイント、成功事例などを交えて、より効果的なNetSuite導入のためのベストプラクティスを解説していきます。
NetSuite導入に必要な準備とは? – ニーズの洗い出しと業務プロセスの改善
NetSuiteを導入するにあたり、まずは自社のビジネスニーズを洗い出し、業務プロセスの改善点を明確にすることが重要です。NetSuiteは、会計や在庫管理、販売管理などの業務を統合的に管理するERP(Enterprise Resource Planning)ソフトウェアですが、それ以外にも様々な機能があります。例えば、顧客管理やマーケティング、プロジェクト管理など、業務のニーズに合わせて必要な機能を選択して導入することができます。
様々なプロジェクトを概観すると、「販売在庫管理(=モノの管理)」または「プロジェクト管理(=ヒトの管理)」がERP運用のメインターゲットの場合、NetSuiteとマッチしている可能性が高いです。一方、「財務会計(=カネの管理)」がメインターゲットの場合、NetSuite導入前にいくつかの課題を検討する必要があります。
詳細は下記の記事で解説しておりますが、NetSuiteで日本の財務会計を行うのはいくつかのハードルがあります。弊社のNetSuite導入プロジェクトでも、財務会計はフェーズ2以降での運用を推奨しております。財務会計を行うにあたっては、充分なスケジュール期間とリソース、そして下記課題に対する検討を行ってください。
また、単に機能を導入するだけでは効果的な業務改善は期待できません。自社の業務プロセスをよく理解し、必要な機能やカスタマイズの方向性を決定することが重要です。具体的には、業務プロセスのマッピングや問題点の洗い出し、改善案の検討などが必要です。そのためには、各部門の担当者や利用者、ITスタッフなどの意見を集約し、共通認識を形成することが必要です。
NetSuiteに限らず、SaaSツールの導入運用にあたっては、なるべく標準機能での運用を目指すことが肝心です。最初からカスタマイズありきの場合、SaaSツールの定期的なバージョンアップの恩恵を受けられません。一方、標準導入を目指す場合でも、現場とやり取りの中で業務プロセスで変更できない箇所が見つかった、というケースもあります。そのため、可能な限りNetSuiteで運用を予定している業務に関して、現状のプロセスと変更の可能性を事前に把握しておきましょう。
導入にあたっては、十分なリソースを確保することも大切です。プロジェクトマネージャーや専門スタッフの配置、予算やスケジュールの確保、業務改善に向けたトレーニングなど、必要なリソースを適切に割り当てることで、スムーズな導入が可能になります。以上のような準備を行うことで、より効果的なNetSuite導入が実現できます。
- NetSuiteの導入の目的を明確化し、「モノの管理」または「ヒトの管理」に当てはまるかを確認する
- 運用の対象となる業務プロセスをあらかじめ明確化しておく
SuiteSuccessの正しい理解とは – 確実に生じるカスタマイズについて
SuiteSuccessは、NetSuiteの豊富な導入経験を基に構築された導入のためのベストプラクティスであり、迅速でスムーズな導入を可能にします。SuiteSuccessには、導入に必要な各種テンプレートや手順書、トレーニングコースなどが含まれており、これらを活用することで導入のスピードを向上させることができます。現在のNetSuite導入プロジェクトの大半はSuiteSuccessのテンプレートを導入したうえで、必要な設定やカスタマイズを行っております。
それでは、SuiteSuccessの範囲外でカスタマイズが生じるのはどのような内容でしょうか。代表的なものは下記の通りです。
- 各種帳票
- 承認フロー関連
- ロット・シリアル番号での在庫管理
- プロジェクト管理
特に、帳票カスタマイズは導入・運用でほぼ必ずと言っていいほど挙がってくるカスタマイズ内容です。デフォルトやSuiteSuccessでもテンプレート帳票は用意されていますが、レイアウトや項目を変更してほしい要望が多いです。そして、帳票カスタムのUI上での変更はクセが多いため、カスタマイズを依頼される方が大半です。
また、各業務プロセスが全てSuiteSuccess内に収まることは多くはありません。そのため、SuiteSuccessのパッケージをスタート地点として、何をアドオンやカスタマイズ、システム連携等で解決するかを検討する必要があります。
- 帳票・承認フローなどの必要なカスタマイズを要件整理の段階で予定に組み込んでおく
- 連携や開発、カスタマイズが必要な場合、リソースと時間をあらかじめ確保する
ベストプラクティスに学ぶ成功事例 – 実際に導入を成功させた企業の事例紹介
ここでは、実際にNetSuite導入に成功したプロジェクトを紹介し、そこから何を学ぶことができるのかについて記載します。
業種:小売業
プロジェクト体制:弊社ー顧客パートナー企業ー顧客
対象範囲:販売管理、在庫管理
スケジュール | 概要 |
---|---|
2022年5月 | プロジェクトキックオフ |
5月 ~ 8月 | 要件整理・アカウントセットアップ・データインポート |
9月 ~ 2023年1月 | サンドボックス環境受入テスト 倉庫管理システムとの連携開発・各種開発 |
2023年2月 | 本番稼働開始 |
この導入プロジェクトの成功のポイントは3つ挙げられます。
- NetSuiteの運用目的が「モノの管理」で明確化されており、目的に向けた準備やMTGができた
- 本番稼働までに十分なスケジュール・リソースを確保できた
- フェーズ1:標準機能と設定セットアップ / フェーズ2:開発関連とフェーズを分けて進めることができた
NetSuiteは様々な機能が含まれていますが、すべての機能を同時に使用開始するには相応の準備が必要になってきます。弊社では、いくつかの業務範囲に絞って導入~運用までを進めていき、そこから範囲を拡大していく流れを推奨しております。
段階的に導入を進める、徐々にNetSuiteの機能を活用していくことで、これまでのERPプロジェクトで頻発した「スケジュール遅延」「予算超過」という落とし穴を回避することができます。また、弊社では導入前の教育・トレーニングも行っており、お客様の業務ニーズに合わせた最適なカスタマイズも提供しております。
目的を絞り、充分にリソースとスケジュールを確保する