工数管理とは?NetSuiteを活用した効率的な管理手法と導入のポイント

目次

はじめに:工数管理の重要性

近年、企業の競争力強化と収益性向上のために、工数管理の重要性が急速に高まっています。特に、プロジェクトベースのビジネスを展開する企業にとって、適切な工数管理は不可欠です。本記事では、工数管理の基本概念から、NetSuiteを活用した効率的な管理手法まで、詳しくご説明します。

工数管理の基本と重要性

工数管理とは、業務やプロジェクトの遂行に要した時間と人数を正確に把握し、常に確認可能な状態に保つことを指します。具体的には、「作業時間×人数」で算出される「工数」を管理することです。

工数の計算は以下の式で表されます:

工数 = 作業時間 × 人数

例えば、5人で8時間作業した場合、工数は40人時となります。ただし、実務では以下のような点も考慮する必要があります。

  • スキルレベルによる重み付け
  • 残業時間の扱い
  • 休憩時間の除外

工数管理の主な目的は以下の通りです。

  • 業務効率化の促進
  • 従業員のコスト意識向上
  • スケジュールや見積もりの精度向上
  • プロジェクトの採算性把握
  • 適切な人員配置の実現

管理工数とは

管理工数は、直接的な業務遂行以外に発生する間接的な工数を指します。例えば、会議や報告書作成、メール対応などがこれに該当します。この管理工数を適切に把握し、最適化することで、組織全体の生産性向上につながります。

管理工数の例:

  • チーム会議:週1回2時間 × 5人 = 10人時/週
  • 日報作成:毎日30分 × 20人 = 10人時/日
  • トレーニング:月1回4時間 × 15人 = 60人時/月

工数管理が必要な理由

現在、日本企業が工数管理に注力する主な理由は以下の2点です:

労働力人口の減少

急速な少子高齢化社会が進む日本では、1995年から15歳以上65歳未満の生産年齢人口が減少し続けています。内閣府の発表によると、2060年には総人口のうち労働力人口の割合が約44%まで低下すると予測されています。この人員不足に対応するためにも、工数管理による作業効率化が不可欠です。

2025年の崖問題

2018年に経済産業省が発表した「2025年の崖」問題も、工数管理の必要性を高めています。この問題は、2025年にITシステムの老朽化、サポートの終了、IT人材の大量退職などにより、最大12兆円もの経済損失が生じる可能性を指摘しています。DX推進による工数最適化は、この問題への対策としても重要です。

NetSuiteを活用した効率的な工数管理

NetSuiteは、クラウドベースのERPシステムとして、効率的な工数管理を支援します。主な機能と利点は以下の通りです:

タイムリーな工数入力と集計

NetSuiteでは、従業員が日々の工数をタイムリーに入力でき、自動的に集計されます。モバイルアプリを通じて外出先からも入力可能で、タイムリーな工数把握が実現します。

プロジェクト別の工数管理

複数のプロジェクトを並行して進める企業にとって、プロジェクト別の工数管理は非常に重要です。NetSuiteは各プロジェクトに固有のコードを割り当て、工数をプロジェクトごとに自動集計します。これにより、プロジェクト単位での進捗や採算性の把握が容易になります。

柔軟なレポーティング機能

NetSuiteの強力なレポーティング機能により、部門別、従業員別、プロジェクト別など、様々な切り口で工数データを分析できます。カスタマイズ可能なダッシュボードにより、経営者やプロジェクトマネージャーは必要な情報を一目で把握できます。

予実管理の効率化

計画工数と実績工数の比較が容易になり、プロジェクトの進捗や採算性の管理が効率化されます。差異が生じた場合、アラート機能により早期に問題を発見し、対策を講じることができます。

原価計算への活用

入力された工数データを基に、人件費を含めた正確な原価計算が可能になります。これにより、より精度の高い採算管理や見積もり作成が実現します。また、将来のプロジェクト計画立案にも活用できます。

効果的な工数管理の手法

効果的な工数管理を実現するために、以下の手順を踏むことをおすすめします:

現状の把握

まず、現在の業務フローを詳細に分析し、各作業にかかる時間と人数を正確に把握します。この段階で、無駄な工程や非効率な作業を特定することができます。例えば、1週間のタイムログを全従業員に記録してもらい、業務の実態を把握するのも効果的です。

ECRSの原則による業務整理

「ECRS(イクルス)の原則」を用いて業務を整理します。これは以下の4つのステップからなります:

  • Eliminate(排除):不要な作業を完全に取り除く(例:不要な会議の削減)
  • Combine(結合・分離):類似の作業を統合する、または複雑な作業を分割する(例:報告書のフォーマット統一)
  • Rearrange(交換):作業の順序や担当者を最適化する(例:スキルセットに基づくタスク割り当て)
  • Simplify(簡素化):作業をより簡単に行えるよう改善する(例:承認プロセスの簡素化)

優先順位の決定

「業務における重要性」と「工数管理における緊急性」の2軸で作業を分類し、優先順位をつけます。重要度が低く緊急性の高い作業から着手するのが一般的です。

担当・範囲の明確化

各業務の担当者と作業範囲を明確に定義します。これにより、作業の重複や責任の所在不明を防ぐことができます。RACI(Responsible, Accountable, Consulted, Informed)マトリックスの活用も効果的です。

計画の実行

策定した工数管理計画を全社に周知し、実行に移します。この際、現場の混乱を避けるため、段階的に導入することが重要です。例えば、特定の部門や小規模なプロジェクトからパイロット的に開始し、徐々に範囲を広げていくアプローチが有効です。

PDCAサイクルの実施

計画の実行後は、定期的に効果を検証し、必要に応じて改善を行います。このPDCAサイクルを継続することで、より効果的な工数管理が実現できます。月次や四半期ごとのレビューミーティングを設定し、継続的な改善を図ることが重要です。

NetSuite導入時の注意点

NetSuiteを活用した工数管理を成功させるためには、以下の点に注意が必要です。

業務プロセスの整理

既存の業務プロセスを棚卸しし、必要に応じて見直すことが重要です。NetSuiteの機能を最大限に活用するためには、業務プロセスとシステムの適切な擦り合わせが必要です。場合によっては、業務プロセス自体の再設計(BPR)も検討しましょう。

従業員教育の徹底

新しいシステムの導入には、従業員の理解と協力が不可欠です。工数管理の重要性や具体的な入力方法について、十分な教育を行うことが成功の鍵となります。ハンズオントレーニングやe-learningの活用も効果的です。

カスタマイズの検討

NetSuiteは柔軟なカスタマイズが可能です。自社の業務に合わせて、必要な機能をカスタマイズすることで、より効果的な工数管理が実現できます。ただし、過度なカスタマイズは将来のアップグレードの障害となる可能性があるため、標準機能の活用を基本とし、必要最小限のカスタマイズにとどめることをおすすめします。

まとめ

適切な工数管理は、企業の生産性向上と収益性改善に直結する重要な取り組みです。NetSuiteを活用することで、より効率的かつ正確な工数管理が可能になり、経営判断のスピードアップや競争力の向上につながります。

ただし、システム導入だけでは十分な効果は得られません。経営層のコミットメント、従業員の理解と協力、適切な業務プロセスの設計など、総合的なアプローチが必要です。

工数管理の重要性は今後さらに高まると予想されます。NetSuiteのような先進的なツールを活用しつつ、自社の特性に合わせた工数管理戦略を構築することが、これからの企業経営には不可欠です。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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