企業が商品やサービスを販売する際は、利益率に注目が必要です。利益率が低すぎると、それだけ大量に販売しなければ大きな利益は得られません。商品やサービスの性質上、どうしても利益率が低くなることもありますが、そうではない場合は原因を突き止めて対処した方がよいでしょう。ここでは、利益率とは何か、計算方法・出し方などについて詳しく解説します。
利益率とは
利益率とは、売上に対する利益の比率を指します。費用に対してどれだけ多くの利益を得られたかを示します。利益率が低い場合は、少ない費用で大きな利益を得られているため経営の安定性が高いと言えるでしょう。
反対に、利益率が高い場合は投入した費用の割には多くの利益を得られていないことを指します。利益率が低い場合、オフィスの家賃や借入金の返済などを考慮すると赤字になる恐れがあります。
利益率の計算方法・出し方
利益率の計算方法・出し方は次のとおりです。
例えば、ITサービスの月額料金による売上が1,000万円、費用を差し引いて残った利益が600万円の場合は、600万円÷1,000万円×100=60%となります。
なお、企業の損益計算書などに利益率の項目はありません。利益率の計算は、以下の2つを用いて算出し、経営に役立てます。
- 営業利益
- 売上総利益(粗利)
それぞれの利益率の計算方法について詳しく見ていきましょう。
営業利益の利益率の計算方法
営業利益とは、売上から商品やサービスの販売にかかった費用を差し引いて算出する利益です。商品やサービスの販売にかかる費用には、商品原価や人件費、家賃、広告費などがあります。
売上1,000万円、経費500万円
1,000万円-500万円
=500万円
この場合の利益率を計算してみましょう。
このように、利益率は50%だとわかりました。
売上総利益(粗利)の利益率の計算方法
売上総利益は会計上の名称、粗利は普段使用する場合の言葉です。
売上総利益(粗利)の計算方法は次のとおりです。
例えば、100万円のオーダーメイドのITツールを販売し、製作にかかった費用が40万円であれば粗利は60万円です。
この場合の利益率は、40万円÷100万円×100=40%です。
IT企業における売上原価とは
売上原価とは、商品やサービスの製造、仕入れ、提供などにかかった費用のことです。IT企業においてITツールを販売している場合は、システムエンジニアやデザイナー、ライターなど、ツールの作成に関わった全ての人に支払う人件費が含まれます。これは、社内で作製した場合も外注した場合も同じです。
また、ITツールを独自の設定に変更する際に、販売先企業へ従業員を派遣し、サービスを提供した場合にかかった費用も売上原価です。
利益率から販売価格を決める際の注意点
利益率を40%にしたい場合、原価50万円のITツールをいくらで売るべきか計算するとき、原価の40%の価格を50万円に上乗せしてしまいがちです。その場合、下記の計算式になります。
- 50万円×40%=20万円
- 50万円+20万円=70万円
それでは、この計算で本当に利益率が40%になるか計算してみましょう。
このように、利益率は28%となります。利益率は販売価格に対する利益の割合のため、原価に利益率をかけても正しく算出できないのです。
正しくは、次のように計算します。
これを当てはめると次のようになります。
販売価格が83万3,333円であれば、原価50万円で利益率が40%になることがわかりました。本当に利益率が40%になっているか計算してみましょう。利益率の計算式は「利益÷売上」のため、次のように計算します。
- 83万3,333円-50万円=33万3,333円=利益
- 利益33万3,333円÷売上83万3,333円×100=40%
このように、利益率が正しいことがわかりました。
まとめ
利益率は、投入した原価や販管費などに対して得られた利益の割合を示します。利益率が低くても、薄利多売のビジネスモデルを確立できているのであれば問題ありません。しかし、意図せずに利益率が低くなっているのであれば、その原因を突き止めて対処することが大切です。今回、紹介した利益率の計算方法・出し方を経営の分析に役立ててください。