基幹システムの保守切れのリスクとは?対応方法についても解説

基幹システムは企業の運営を支える重要なインフラですが、時間の経過とともにその保守契約が終了し、いわゆる「保守切れ」のリスクが生じます。
保守切れとは、システムを製造・提供したメーカーが、システムに対するサポートを終了することを指します。ハードウェアの修理、ソフトウェアの更新やパッチの提供、技術サポートなどを含むサービスが受けられなくなるため、企業にとって大きなリスクとなります。
本記事では、基幹システムの保守切れのリスクと、保守切れ時の対応方法について詳しく解説します。

目次

保守切れとは

保守切れとは、ハードウェアやソフトウェアのメーカーが提供するサポートや修理サービスが終了し、何か問題が発生した際に修理や交換ができなくなる状態を指します。一般的に、ハードウェアやソフトウェアには一定の保守期間が設定されており、この期間中は故障時の対応やソフトウェアのアップデートが提供されます。
しかし、保守期間を過ぎると、新しい部品の供給や修理が不可能になり、サポートの継続が難しくなるため、企業は自らのリソースで問題に対処しなければならないことが増えます。この状態が「保守切れ」です。
例えば、サーバーやPCなどのハードウェアの保守期間は、通常5年から10年程度とされていますが、その後のサポートが終了すると、故障部品の交換や性能低下を防ぐための手立てが難しくなります。ソフトウェアの場合も同様に、開発ベンダーのサポート終了後はセキュリティアップデートが提供されなくなるなど、リスクが高まります。

基幹システムの保守切れが起きる理由

基幹システムの保守切れが起きる理由については、主にハードウェアとソフトウェアの2つの側面から考える必要があります。それぞれの特性と背景を詳しく解説します。

ハードウェアの保守切れ

ハードウェアの保守切れは、主に機器の寿命と後継機の供給に起因します。サーバーやクライアントPC、専用端末などのハードウェアには、通常5年から10年の使用寿命が設定されています。メーカーはこの期間中に新しい後継機を開発・販売し、その後継機に対しても保守を継続します。

ユーザー企業はこの後継機へのリプレースを行うことで、保守を継続しながらシステムの運用を維持することが可能です。しかし、後継機が出なくなると、リプレースするハードウェアがなくなり、保守切れのリスクが高まります。

具体的には、メーカーから保守の終了通知が送られ、その後、システムが故障した場合、修理や部品交換ができず、システムの運用が停止する恐れがあります。

ソフトウェアの保守切れ

ソフトウェアの保守切れは、ハードウェアとは異なる要因で発生します。ソフトウェアの場合、ミドルウェアとアプリケーションソフトウェアの2つの保守に分けて考えることが重要です。

ミドルウェアの保守切れ

ミドルウェアの保守は、ハードウェア保守と同様に、後継バージョンの提供に伴って保守が継続されます。しかし、ミドルウェアのバージョンアップが頻繁に行われることで、旧バージョンの保守が終了するリスクが発生します。これにより、システムの一部が正常に稼働しなくなる可能性があり、業務の継続に支障をきたすことがあります。

アプリケーションソフトウェアの保守切れ

アプリケーションソフトウェアの保守切れは、さらに複雑な要因によって発生します。特に、ソフトウェアベンダーが保守環境や保守要員を確保できなくなった場合、保守の更新が突然打ち切られることがあります。

これは、ユーザーにとって予期しにくいリスクであり、唐突に保守切れの通知を受けることも少なくありません。

基幹システムの保守切れのリスク4つ

基幹システムの保守切れにより、次のリスクが生じます。

1.システムの安定性低下とダウンタイムのリスク

保守切れ後は、システムの故障や不具合が発生した際に、メーカーからのサポートを受けられなくなります。特にハードウェアの故障が発生した場合、修理用の部品が入手困難になり、システム全体が停止するリスクが高まります。
企業の業務に直接的な影響を与え、生産性の低下や顧客対応の遅延を引き起こす可能性があります。

2.セキュリティリスクの増加

ソフトウェアの保守が切れると、セキュリティパッチや更新プログラムが提供されなくなります。これにより、新たに発見された脆弱性に対する対策が取れなくなり、システムが外部からの攻撃にさらされやすくなります。
特に、基幹システムが外部ネットワークと接続されている場合、セキュリティリスクは飛躍的に高まります。

3.法令遵守の難化

多くの業界では、法規制に従って特定のセキュリティ基準を満たす必要があります。保守切れによってシステムが最新の法規制に対応できなくなると、コンプライアンス違反となり、罰金やその他の法的措置を受ける可能性があります。
例えば、金融業界や医療業界では、データの保護やプライバシーに関する厳しい規制があるため、保守切れは重大な問題を引き起こします。

4.システムの操作性や機能性の低下

保守切れ後に新しい機能やバージョンアップが提供されなくなるため、システムが時代遅れになるリスクがあります。これにより、業務プロセスの効率化が進まなかったり、競争力が低下する可能性が高まります。企業が新たなビジネスニーズに対応できず、結果として市場での競争力を失うリスクもあります。

基幹システムの保守切れ時の対応方法3つ

基幹システムが保守切れになると、企業はそのシステムを引き続き安全かつ効率的に運用するために、いくつかの対応策を検討する必要があります。以下に、具体的な対応方法として「サポート期間の延長」「第三者保守の利用」「システムの乗り換え」について詳しく解説します。

サポート期間の延長をお願いする

1つ目の対応策として、システムの製造元や提供元にサポート期間の延長を依頼する方法があります。

例えば、Microsoftが提供するWindows Server 2008のサポートが終了する際、多くの企業が特別な延長サポート(Extended Security Updates, ESU)を利用しました。この延長サポートでは、セキュリティ更新プログラムが追加で提供され、システムを安全に運用し続けることが可能となります。しかし、サポートの延長には高額な費用がかかることが一般的であり、その費用対効果を慎重に検討する必要があります。

また、基幹システムによってはサポート期間の延長を一律で断っている場合もあるため、この方法は現実的ではありません。

第三者保守を利用する

サポート期間の延長が難しい場合、またはメーカーのサポート終了後もシステムを使用し続ける必要がある場合、第三者保守を利用する方法があります。第三者保守は、メーカーではない外部の保守サービス提供会社がサポートを提供するもので、特に旧型のハードウェアやソフトウェアの延命に役立ちます。

第三者保守の大きなメリットは、メーカー保守よりも低コストであることと、メーカーが提供する保守サービスが終了しても、引き続きサポートを受けられる点です。リユース部品を用いた修理や、幅広い機器に対応した保守が可能なため、費用対効果が高い選択肢となることが多いです。

システムを乗り換える

最後に、システムそのものを新しいものに乗り換えるという選択肢もあります。これは、保守切れのリスクを根本的に解消する方法です。

例えば、旧式のERPシステムが保守切れを迎える前に、最新のクラウドベースのERPシステムに移行すれば、システムの安定性とセキュリティが大幅に向上し、さらにクラウドのスケーラビリティを活用して業務の効率化を実現できます。

システムの乗り換えは初期投資が必要となりますが、長期的な視点で見れば、最新技術の恩恵を受けることで業務プロセス全体の改善が期待できます。

基幹システムの保守切れによるトラブルの対策

基幹システムの保守切れを未然に防ぐためには、システム運用の段階からいくつかの重要な対策を講じておくことが有効です。以下に、保守切れを回避するための主な対策を紹介します。

1.定期的なシステム監査を実施する

システムの状態を定期的に監査し、どの部分が老朽化しているか、どのハードウェアやソフトウェアが保守切れに近づいているかを確認することが重要です。これにより、突然のシステム障害や保守切れリスクを未然に防ぐことが可能となります。

年に一度のシステム監査を実施し、サーバーやソフトウェアの保守状況をチェックするとよいでしょう。

2.システムのリプレース計画を立てる

どれだけ優れたシステムでも、いずれは保守切れを迎えます。そのため、システムの導入段階から将来のリプレースを見据えた計画を立てておくことが重要です。特に基幹システムの場合、業務の根幹を支える役割を果たしているため、計画的なリプレースが業務の安定性を保つために不可欠です。

3.クラウドベースのソリューションを検討する

最近では、基幹システムもクラウドベースで提供されることが増えてきています。クラウドソリューションの利点は、ハードウェアの更新や保守切れのリスクを気にすることなく、常に最新の状態でシステムを運用できる点です。また、クラウドベースのソリューションはスケーラビリティが高く、業務拡大にも柔軟に対応できます。

基幹システムを乗り換える場合はサポートが必須

基幹システムの乗り換えは、慎重に進める必要があります。システムの切り替え時には、適切なサポートが欠かせません。新システムへの移行は、単に技術的な問題だけでなく、業務プロセスやデータ移行、社員のトレーニングなど、さまざまな課題が伴います。
移行計画を立て、専門家のサポートを受けることで、システム移行による業務の混乱を最小限に抑えられます。

基幹システムの乗り換えはベンチャーネットにお任せください

基幹システムの保守切れやリプレースを検討中の企業にとって、信頼できるパートナーが不可欠です。ベンチャーネットでは、システムの診断からリプレース、移行後のサポートまで、包括的なサービスを提供しています。
経験豊富なエキスパートが、貴社のニーズに合った最適なソリューションを提案し、スムーズなシステム移行を実現しますので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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