SAPとNetSuiteを比較する際、企業のビジネスニーズやシステム要件に応じて最適な選択を行うことが重要です。SAPは世界的に広く利用されており、大規模な企業向けに豊富な機能を提供します。一方、NetSuiteはクラウドベースのERPシステムとして、中小企業や成長企業に適しています。本記事では、SAPとNetSuiteの機能や特徴、移行のポイントを解説します。
SAPとは
SAPは、ドイツの大手ソフトウェアベンダーであるSAP社に由来します。この用語は、SAP社そのものや同社の提供するERP(Enterprise Resource Planning)製品を指す場合があります。
SAP社は、ドイツを拠点とするビジネスソフトウェア企業であり、Microsoft、オラクル、IBMに次ぐ企業として知られています。 2023年度第3四半期においてもクラウド売上16%増、営業利益はIFRSベースで11%増、Non-IFRSベースで10%増と堅調に推移しています。
日本法人のSAPジャパンも設立され、日本国内でも業界をリードする大企業としての地位を確立しました。
SAP社のERP製品
SAPは世界でトップのシェアを持つERP製品を提供しています。ERPは企業の各部門を一元管理するためのシステムであり、「Enterprise Resource Planning」の略称です。ERPの導入により、部門間のデータ共有や統合が容易になり、業務効率化が図られます。
SAP社のERP製品の歴史は古く、初期の製品である「SAP R/1」は1972年に発売されました。「SAP R/3」は1992年に登場し、WindowsやUNIXなど様々なプラットフォームで動作するERPパッケージとして普及しました。「SAP S/4HANA」は「SAP R/3」の後継製品として2015年に発表され、原稿のERPパッケージとなっています。
SAP ERPは2027年に保守サポート終了予定
2027年12月、SAP ERPの保守サポートが終了することが発表されました。日本国内では、このSAP ERPを導入している企業が2,000社以上とされています。
なぜSAP ERPの保守サポートが終了するのでしょうか。その背景には、ビジネス環境の変化と機能の充実によってシステムが肥大化し、情報の自動更新が困難になった事情があります。現代のビジネスには多様な業務や法制度への対応が求められ、古い機能を削除するわけにいかないため、基幹システムの肥大化は避けられませんでした。
企業が取り扱うデータ量はますます増加し、従来のシステムでは対応しきれない状況にあります。そのため、既存システムの改良ではなく、新たなアーキテクチャでERPを再構築する必要性が生じました。その答えとして生まれたのが、「SAP S/4HANA」です。
SAP S/4HANAは、新しい時代に対応するために開発された次世代ERP製品です。その特徴の一つが、インメモリーテクノロジーを活用したデータ処理能力の向上です。これにより、大量のデータを高速で処理し、リアルタイムに分析・予測が可能となります。
また、SAP S/4HANAはクラウドベースのサービスとして提供されるため、柔軟性や拡張性が高く、ビジネスの変化に迅速に対応できます。さらに、ユーザーエクスペリエンスの向上やAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)などの先端技術の統合も図られています。
NetSuiteとは
NetSuiteは、企業の業績向上や業務効率化に深く関わるシステムをクラウド上で提供するERP(Enterprise Resource Planning)です。販売管理、在庫購買管理、生産管理、会計管理など、従来は別々のシステムで運用されていた業務を、単一のシステムで統合管理できる特長を持っています。
従来、企業では各部門ごとに異なるシステムを利用していることがあり、その結果、業務効率が低下したり、データの連携や相関関係の調査が困難だったりすることがありました。たとえ各システムが高品質であっても、これらの課題が解決されなければ、業務効率や収益性の向上は期待できません。NetSuiteの導入により、異なるシステム間でのデータ集計や連携が容易になり、業務効率化や収益性の向上につながります。
NetSuiteは、アメリカの大手ITベンダーOracleによって買収され、現在はオラクルの子会社として運営されています。日本企業を含む多くの企業が、NetSuiteの導入によって高い成果を上げています。
NetSuiteは、1998年にEvan Goldberg氏を中心とした4人によって設立され、世界初のクラウドERP企業としての地位を確立しました。その後、2017年12月にオラクル社によって買収され、現在はネットスイート事業部によって運営されています。
NetSuiteは世界で31,000社以上に導入され、高い評価を得ています。実際にシステムを利用者したユーザーが評価する「G2 Crowd Grid」のERP部門では、「Leader」として認められています。
NetSuiteの機能
近年、企業のITシステムはクラウドへの移行が進んでおり、ERP市場も例外ではありません。しかし、クラウドERPとして名乗る製品の中には、実際にはオンプレミス型ERPをクラウドに移行しただけのものや、顧客ごとに独立したテナントを立ち上げるものなど、「名ばかりクラウド」が存在します。これらの製品では、バージョンアップが個別に行われ、管理コストがかさんでしまい、本来のクラウドのメリットを享受できません。
そこで注目すべきなのが、Oracle NetSuiteが提供するマルチテナント型ERPです。NetSuiteはクラウド用に設計され、すべての顧客が1つのサービスを共有します。バージョンアップは自動的に行われ、これまでの管理コストを研究開発費に転換できるため、クラウドの恩恵を十分に享受できます。
NetSuiteは、CRMやERP、Eコマースなど、経営に必要な機能を全て含んだオールインワンシステムです。そして、これらの機能が単独で存在するのではなく、統合されています。これが真のオールインワンシステムであり、各機能のデータを紐付けたり、相関関係を探ったりすることが可能になります。
例えば、CRMとEコマースをERPと連携させれば、売上データや顧客情報から商品の在庫状況まで自動更新され、各部署に最適な形で分析結果が表示されます。そして、リアルタイムでの表示が可能なため、迅速な経営判断が行えます。
NetSuiteはまた、海外展開を行う企業にとっても最適です。190種類以上の通貨と27言語に対応し、217か国で導入されています。業種や国籍、業務プロセスに関わらず導入可能であり、20年以上の歴史に裏打ちされた安定性と柔軟性を兼ね備えています。
NetSuiteについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
SAPとNetSuiteの比較
SAPとNetSuiteは、企業のビジネスニーズや規模に応じて異なる特徴を持つERPシステムです。以下では、それぞれの特徴、機能、そして向き・不向きについて具体的に比較します。
特徴
SAPは、世界的に広く利用されており、大規模な企業向けに豊富な機能を提供しています。SAPは、ドイツの大手ソフトウェアベンダーであり、堅調な業績を誇る企業として知られています。一方、NetSuiteはクラウドベースのERPシステムとして、中小企業や成長企業に適しています。NetSuiteは、1998年に設立され、世界初のクラウドERP企業としての地位を確立しました。
機能
SAPは、企業の各部門を一元管理するための包括的な機能を提供しています。SAPのERP製品は、多くのモジュールから構成されており、財務、人事、生産、購買などの業務を効率的に管理できます。一方、NetSuiteもCRM、ERP、Eコマースなど、経営に必要な機能をオールインワンで提供しています。NetSuiteは、これらの機能を統合しており、異なるシステム間でのデータ連携や相関関係の調査が容易に行えます。
向き・不向き
SAPは大規模な企業向けに設計されており、多機能かつ高度なカスタマイズが可能です。そのため、大規模なビジネスプロセスや複雑な業務に対応する必要がある場合に適しています。一方、NetSuiteは中小企業や成長企業向けに設計されています。クラウドベースの柔軟性と使いやすさが特徴であり、スピーディな展開や低コストでの導入が可能です。また、NetSuiteは海外展開を行う企業にも適しており、多言語・多通貨に対応しています。
企業は、自社のビジネスニーズや規模に合ったERPシステムを選択することが重要です。SAPとNetSuiteは、それぞれ異なる特徴を持ち、適切な選択を行うことで企業の業務効率化や成長をサポートします。
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