明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
2020年は新型コロナウイルスの影響が非常に大きかった1年でした。
ビジネス面では感染拡大防止の観点から、出社の制限やリモートワークの拡大、オフラインからオンラインへの営業活動のシフトといった形で、様々な業種における企業活動のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んだ1年と言えるでしょう。
そのなかでもRPAは、様々な後発サービスが登場し、特に自治体での活用が進む一方で、すでにRPAを導入した企業ではいかにRPAを定着・運用・拡大していくかが課題となりました。
今回はこれらを踏まえて、2021年のRPA市場の展望を見てみましょう。
①2021年もRPA市場は拡大の一途
まず、世界でみても、日本で見ても、RPA市場は拡大する予測がなされています。
下記のグラフは世界におけるRPA市場の動向ですが、コロナウイルスの影響にも関わらず拡大の予測がなされています。
また、日本では株式会社矢野経済研究所の調査により、拡大の予測がなされています。
(出典:ガートナー社 グラフは筆者作成)
その理由としてあげられているのは、感染拡大防止の観点から、テレワークの利用増加やペーパレスの普及といった形で、業務効率化・省人化に取り組む企業が増えていくことが考えられます。
これまで、業務効率化といったメリットがありながらも、人手があるためなかなかツール導入に及び腰だった企業も、コロナウイルスによる世界的な情勢の変化で、今後の企業活動のオンライン化・省人化に対応する必要が生じてきました。
2020年は、コロナによる経済の不安定化に対応すべく、ひとまず広告・マーケティング費用の削減や新規事業の一時停止といった形で経費削減を図った企業が多いと思われます。
しかし、今後はコロナウイルスが長期化することを見据えて、業務内容やビジネスモデルの抜本的な見直しが迫られる企業は少なくないでしょう。その中で、定型業務を削減したい企業ニーズはより高まると考えられます。
②日本でのRPA導入の鍵はDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する姿勢にアリ
市場的には拡大予測のRPA市場ですが、こと日本においてRPAが全社的に定着するかはなかなか難しいと言えます。
日本におけるRPA導入は一つのブームが過ぎ、先駆的な企業では定着・運用拡大を図る段階です。一方、今後導入を検討する企業では、これらの先行事例を踏まえて費用面や機能面、サポート体制などから導入の検討がなされる段階です。
では、実際に既に導入した企業の利用状況はどうなっているのでしょうか。
RPAの成功事例が良く取り上げられますが、RPAに関する様々な調査を見てみると、試験的に導入したはいいものの、その後定着・拡大ができず運用を取りやめてしまったケースは少なくありません。
また、現段階では試験的に導入し各種調整を行っている状況の企業も多いです。試験的に導入したこれらの企業で、今後RPAが定着するかはまだまだ未知数です。
その理由のひとつには、以下の引用にもある通り、ツールの導入が先行する一方で、それを運用する組織体制がなかなか整えることができないことが挙げられます。
2021年は「RPAを卒業」–Blue Prism・長谷社長
RPAが他のさまざまなビジネスツールと決定的に異なる点は、自社の業務体制や業務内容に対して、RPAをどのように適用させるか考えなければいけない点です。そのため、RPAの導入はこれまでの業務を洗い出し、場合によっては作業自体を見直す必要があります。
つまり、RPAはツール導入によってすぐ業務を代替できるものではなく、それなりの人員と時間を割いて取り組む必要があります。しかし、導入のハードルやコストがかかればその分導入自体にも慎重になり、経営層が納得する成果も必要になります。
以下の動画でも語られている通り、RPA導入に成功した企業は複数年かけて導入・内製化を行なっていること、定量的な成果に加えて訂正的な成果も評価軸にしていることが導入・定着に必要になってきます。
これらをまとめると、RPA導入・定着で問われてくるのは企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する取り組みの姿勢です。
近年、様々な産業においてデジタル化が進展してきた潮流に加えて、コロナウイルスの感染拡大防止の観点から非接触が要請されることで、リアルでの企業活動や営業活動のオンライン化を進める必要が出てきました。この変化に対応するには、小手先のツール導入で済む事例は少なく、自社のビジネスの進め方そのものを見直す必要も出てくるでしょう。そのためには、経営層と現場が一体となって、自社のビジネスのDXに取り組む必要があります。
RPAも企業活動のデジタル化の一環として考える必要があります。ある程度の人員や時間といったコストを割き、集中して導入と定着に取り組める企業とそうでない企業で、今後の状況が二極化してくると考えられます。
③製品は増加するものの、入り口の利用方法はさほど変化なし
先ほど提示したカートナー社の調査では、市場拡大とツール・サービスの増加にあわせてRPA製品の平均価格は下がる予想がなされています。
2020年を振り返ってみても、GoogleやMicrosoftのRPA事業の参入に象徴されるように、さまざまな企業がRPA製品をリリースしました。その結果、入り口として利用可能な選択肢は広がっているように感じます。
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しかし、その利用先の業務はそれほど変わっていません。
さまざまな製品や機能が存在していると考えられがちですが、RPAの利用先にある業務は基本的に「定型業務の反復作業」です。特に導入段階においては、まずこれらの業務からRPAで自動化を図り、成功体験をつかむことが非常に重要になります。
確かにRPAはデスクトップで操作するあらゆる業務を自動化することが可能です。しかし、自動化のための開発工数や自動化したことで得られる時間削減といった観点で考えると、対象となる業務は現段階では限られてきます。
RPAに触れたことがない企業では、RPAのイメージがなかなかつかめなかったり、RPAに対してある種の万能ツールとみなしてしまうケースも少なくありません。なかなかツールに対するイメージをつかめないことや、過大なイメージを抱くことは、今後のRPA運用・展開で障壁にさえなりえます。
ですから、まず自社内でなにかしらの業務を一つ自動化し、RPAに対するイメージをつかむことはとても大切になってきます。
今後、RPAを導入・運用する企業にとって必要なのは「万能だがよくわからないRPA」というイメージから、いかに「RPAは自社の〇〇という業務に役に立つツール」といった形でイメージを切り替えることです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。今後もRPAは目が離せません。
今年もRPAの教科書では、RPAにまつわるトピックや、具体的な使い方を解説していきます。