新規事業のためのBtoBマーケティングとは?軌道に乗せるためのポイント

新規事業に特化したBtoBマーケティングとして、発生しがちな課題や既存事業との違いについて確認しておくことが重要です。

今回は、実際に新規事業を軌道に載せるためのマーケティングについて紹介します。

目次

新規事業におけるBtoBマーケティングの落とし穴

新規事業におけるBtoBマーケティングは、既存事業のBtoBマーケティングとはやや毛色が異なります。端的に言えば、「既存事業よりも顧客の解像度が低いため施策が空回りしやすい」のです。

顧客の解像度が低いことで起こる失敗

新規事業では顧客の解像度が低いことで、主にコミュニケーション面のつまずきが発生します。具体的には、顧客接点の構築や、顧客に対するメッセージの伝達がうまくいかない可能性があります。これらは事前に計画しておくべきなのですが、解像度が低い段階ではその計画の妥当性を判断することができません。また、新規事業は顧客にアピールできる実績がないため、ゴールから逆算して顧客を獲得することができないという弱点もあります。

こうした事情から、顧客へのアプローチに計画性がうまれず、場当たり的になってしまいやすいのです。その結果、以下のような失敗を招く可能性があります。

失敗①「市場そのものが存在しなかった」

バリュープロポジションの解説でも紹介しましたが、新規事業で見込んでいた市場がそもそも存在しない可能性があります。どちらかといえばビジネスモデル構築段階の失敗なのですが、マーケティングの段階まで発覚しない可能性もあるでしょう。海外のリサーチを参照すると、スタートアップの失敗原因として「市場が存在しなかった」という理由が上位にありますが、日本国内でも同様のことが言えそうです。

出典:CBINSIGHTS The Top 12 Reasons Startups Fail

https://www.cbinsights.com/research/startup-failure-reasons-top/

失敗②「リードが浅く商談化されない」

顧客の解像度が低い=顧客の情報が少ないということですから、ペルソナやカスタマージャーニーの精度も落ちます。したがって、SEO対策やメールマーケティングなどの施策も効果が出にくくなってしまいます。また、既存事業のように過去の商談データや営業インタビューを参照しつつ、顧客の解像度を高めることもできません。その結果、深く狭いニーズと捉えることができず、製品やサービスに興味を持ってもらいにくい状況が生まれます。さらに興味はあっても実績がないゆえに、顧客側で購入予算の稟議が下りない可能性もあるでしょう。

失敗③「受注できない」

顧客の解像度が低いと、受注や契約継続のための決め手を欠いてしまうことがあります。特に新規事業の場合、営業部門にノウハウが無いことも多いです。このことが「他社製品との差別化ができない」「費用対効果を定量的に提示できない」といった事態を招き、失注・解約につながってしまうのです。

新規事業のパターンとやるべきこと

これら新規事業でありがちなBtoBマーケティングの落とし穴に遭遇しないためには、新規事業のパターンによって施策を変えていく必要があるでしょう。販売戦略の話題でよく使用される「アマゾフの成長マトリクス戦略」によれば、新規事業のパターンは以下3つだと考えられます。

出典:経済産業省 ミラサポPLUS

https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15043/
  • 既存商品の市場(顧客)に新規製品の販売と顧客開拓を行う
  • 新規市場(顧客)を開拓し既存製品を売る
  • 新規市場(顧客)の開拓と新規製品の販売を同時に行う

この3パターンのうちのどれに該当するかによって、最適なマーケティング施策は変わってきます。前述の失敗例は、②や③を狙う場合がほとんどですが、①であっても市場に製品・サービスがフィットしなければ失敗の可能性が高くなってしまいます。

そのため、まずは既存顧客を相手に改善を続け、PMF(プロダクトマーケットフィット)の目途が立った段階で新規事業のマーケティングをスタートする、という方法がよいかもしれません。

しかし、新規事業の場合、企業の決算状況や予算の関係から、早急に結果を求められることもあります。そのため、PMFだけに注力していると新規事業自体が頓挫してしまうこともあるでしょう。これを回避するために、PMFと並行しながら下記のような施策も継続していきましょう。

プレ営業の実施

3パターンすべてに効果がある方法としては、「プレ営業」が挙げられます。プレ営業とは、製品やサービスが完成する前に顧客になりそうな相手に対し、試験的に営業活動を行うことです。プレ営業を徹底することにより、最低でも「そもそもニーズがない(=市場が存在しない)」という状況は回避できます。

また、仮に市場がありそうな場合は、製品・サービスへのフィードバックを得てマーケティング施策の糧にすることができます。プレ営業をできるだけ頻繁に、複数回行うことでマーケティングの精度を高めていきましょう。

既存商品を提案、納品完了後に追加提案

前述の成長マトリクスのうち①(新規製品×既存市場)の場合は、既存商品の納品と同じタイミングで新商品の提案を行うという手もあります。取引実績のある顧客から製品・サービスのニーズや改善点などを、効率よく得ることができます。

購買に近い顧客層から狙う

③のように市場(顧客)も製品も全く新しい場合は、PMFを進める前に実績を求められることもあります。この場合は、顧客層をピラミッドに見立て、購買に最も近い層から優先的にアプローチする方法がおすすめです。

なぜなら、購買に近い層をターゲットにすることで、マーケティング施策の実行と検証が素早く行うことができるからです。商談内容や受注・失注の理由を記録し、営業担当者の情報とともにまとめて次の施策に活かすようにしましょう。

顧客の解像度を上げて次の施策に活かす

これらを繰り返すことで、そもそもの課題である「顧客の解像度の低さ」が改善されていきます。顧客の解像度が上がってきたら、改めてペルソナとカスタマージャーニーを作成し、オウンドメディア構築・広告出稿・メールマーケティング・SEO対策などに組み込んでいきましょう。

商材の認知度によってとるべき施策は違う

新規事業では新しい商材を扱うことも珍しくありません。また、「商材の認知度」もバラバラです。そのため、商材の認知度によってマーケティング施策の内容を変えていく必要があるでしょう。具体的には、以下のような点に着目して場合分けをしながら施策を変えていくべきです。

「トランザクショナルクエリ」で検索されているか

まず、商材が検索エンジンでどの程度、どのようなキーワードで検索されているかを調査します。次に、その結果を3つのクエリにまとめていきましょう。3つのクエリとは「トランザクショナルクエリ」「インフォメーショナルクエリ」「ナビゲーショナルクエリ」です。

トランザクショナルクエリ

トランザクショナルクエリとは取引や購買行動に直結するクエリです。検索意図に明確な欲求(~したい)が含まれ、最も購入に近いクエリです。具体的なサービス名や製品名などが含まれます。

インフォメーショナルクエリ

検索意図が主に情報収集(~を知りたい)であるクエリで、取引や購買からは少し距離があります。BtoBの場合は「業務効率化の方法」など、主にノウハウ系のキーワードが含まれるでしょう。

ナビゲーショナルクエリ

検索意図が案内(~へ行きたい)である検索クエリです。BtoBの場合は、検索キーワードが社名である場合が多いでしょう。
上記3つのクエリのうち、新規事業のBtoBマーケティングで最初に着目すべきは「トランザクショナルクエリ」です。もし、トランザクショナルクエリが存在していれば、商材が何らかのかたちで認知されていることになります。また、購買意欲を持った顕在層・準顕在層が存在している可能性が高いです。逆にトランザクショナルクエリが存在していなければ、商材が認知されておらず、潜在層のみの可能性が高くなります。

商材の認知度別、とるべき施策

では、トランザクションクエリがある商材(商材が認知されていて顕在層、準顕在層が存在している場合)と、そうではない商材で、取るべき施策を整理してみましょう。

トランザクショナルクエリがある場合

自社製品・サービスの名称や関連キーワードでWeb検索されていることが確認できている場合は、Webマーケティングの各施策に注力すべきです。なぜなら、Google、Yahooといった検索エンジン経由で新規リードを獲得できる確率が高いからです。バーチャル経営では、以下のような施策を推奨しています。

イメージとしては、顧客インタビューや営業担当から得た情報をもとにサイト構成やコンテンツの内容を改善していきます。また、ペルソナやカスタマージャーニー、サーチジャーニーなどを通じて顧客の解像度を上げていき、質の高いリードの獲得を目指します。もし、リードが獲得できない場合は、広告やSEOへの投資を増やし、状況次第でアナログ広告への出稿も検討します。さらに獲得したリードを商談・受注につなげる施策として、以下も併用するとよいでしょう。

トランザクショナルクエリがない場合

関連キーワードでも検索されていない場合は、トランザクショナルクエリが存在していないことになります。この場合は、以下2つのパターンのうちいずれかを実行します。

ターゲット企業の特徴が絞り込めていない場合

認知されておらず、ターゲットが広い場合は、商材の内容から一旦離れて集客に専念します。具体的には、潜在層が興味を寄せているであろうテーマで、セミナーやウェビナー、展示会などを開催していきましょう。また、SNS広告やコラム記事、資料DLなどを併用しながら、まずはリードの数を増やすことに専念してみてください。

特にウェビナーは、コロナ禍以降、一気に普及した比較的新しい施策です。「聴衆からの質問にリアルタイムに解答できる」「資料DLやホワイトペーパーDLにつなげやすい」といったメリットがあります。もし、ウェビナー開催に関するノウハウがない場合は、ウェビナー企画サービスなども検討してみてください。

ただし、セミナーやウェビナー、資料DLなどで獲得した顧客は商談につながりにくいという特徴があります。もし商談化率が低ければ、少人数セミナーや勉強会などで信頼関係を築き、徐々に商談へつなげていくと良いでしょう。

ターゲット企業の特徴が絞り込めている場合

ある程度ターゲット企業を絞り込めている場合は、テレアポ、DM、少人数ウェビナー、ABMなどを検討してみましょう。ちなみに、バーチャル経営で特に推奨しているのはABMですね。ABMは、「ニッチ市場の顧客から見つけてもらう」という効果が期待できます。これについては過去の記事でも解説しているので参考にしてみてください。ABMについては、弊社でも独自のサービスを展開しています。

まとめ

ここでは、新規事業のBtoBマーケティングを商材の認知度別に解説しました。新規事業のBtoBマーケティングは、基本的に既存事業と同じような施策を進めていきます。ただし、各施策の使いどころや繋げ方が既存事業とは異なります。もし、BtoBマーケティングのノウハウを持っていない場合は、伴走支援を活用することも視野に入れてみてください。次回は「イノベーションとICT」について解説します。

お問い合わせはお気軽にどうぞ

株式会社ベンチャーネットでは、BtoB・BtoCともに豊富なSEO関連のご支援実績がございます。
現在のウェブサイトの問題点の洗い出しから、コンテンツの作成やウェブサイトの修正、リニューアルなど専門のコンサルタントを中心にライター、エンジニアなど各分野のプロがチームでご支援します。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次