オンライン営業では、営業マンの人柄やアイコンタクト、身振り手振りといった非言語コミュニケーションが伝わりにくい傾向があります。オフラインと比べて成約に至りにくいため、資料作りを工夫することが大切です。見づらい資料では、商品やサービスの魅力が十分に伝わりません。ここでは、オンライン営業の資料作りのポイントについて、表現やデザイン、導入部からクロージングまで詳しくご紹介します。
オンライン営業の資料作りにこだわるべき理由
営業では、オンライン・オフラインを問わず、提供する資料が非常に重要です。勢いに任せた営業では、相手の信頼を得ることはできません。また、オンライン営業はオフラインと比べて相手に商品やサービスの魅力が伝わりにくいため、より質の高い資料作りを目指すことが大切です。
それでは、オンライン営業で資料作りにこだわるべき理由について詳しくみていきましょう。
スムーズな商談に繋がる
わかりやすい資料を提供すれば、質問の数が減少します。質問が多いと、なかなか次の話へと進めず、オンライン営業に時間がかかってしまいます。また、質問によって話がさえぎられると、重要な部分が頭から抜けてしまい、商品やサービスの魅力を十分に伝わらなくなるのです。
スムーズな面談は、営業マンと相手の双方にとってメリットがあります。営業を行う側は、1日の商談回数を増やすことができ、営業を受ける側は業務への支障を最小限に抑えることが可能です。
信頼と安心が生まれる
わかりやすい資料を提供すれば、企業に対する信頼感と安心感が増します。オンライン営業に対応すべく、わかりやすい資料を提供できる対応力が高い企業と思ってもらえるでしょう。商品やサービスを売るときは、それらの魅力を伝えるだけでは成約には至りません。
営業マンや企業そのものを気に入ってもらうことで、成約率が高まります。
商品やサービスの魅力がしっかり伝わる
わかりやすい資料を提供すれば、短時間で商品やサービスの魅力が正しく伝わります。わかりにくい資料では、理解することに意識が集中して、肝心の魅力が伝わりません。商品やサービスの魅力をしっかり伝えるためにも、わかりやすく見やすい資料を作ることが大切です。
1回の商談で商品やサービスの理解を得やすい
わかりやすい資料を提供すれば、1回の商談で商品やサービスの魅力が伝わり、成約に至る可能性があります。通常、複数回の商談が必要ですが、オンラインであればツールを使ってわかりやすい資料を作成でき、それをいつでも閲覧できるため、1回の商談で成約できるケースが少なくありません。
オンライン営業がオフライン営業に劣っているとは限らないことを覚えておきましょう。
オンライン営業の資料作りのポイント
オンライン営業の資料作りでは、表現方法やデザイン、導入部、クロージングなど、さまざまな点を作り込むことが大切です。それぞれの項目における資料作りのポイントについて詳しくみていきましょう。
資料の表現方法
資料の表現方法では、次のポイントを押さえましょう。
資料全体に統一感をもたせる
表現方法に統一感がないと、リズムよく読めません。頭の中で文章を読むときに何度も止まってしまい、要領をつかめなくなります。極端な例では、「ですます調」と「で・ある調」が混ざっているケースがあります。
基本的に、資料は「ですます調」で作成しましょう。そのほか、漢字の配分や言い回しなどの統一も必要です。「様々」を「さまざま」と表記するのであれば、「色々」も「いろいろ」と表記する必要があります。
文章のトーンをそろえることで、スラスラと読みやすくなるでしょう。また、文体はクライアントに合わせて選ぶことが大切です。硬すぎたり柔らかすぎたりする印象を与えると、商品やサービスの魅力が半減したり、不快感を与えたりする恐れがあります。
1スライド1メッセージを基本にする
1スライドに3つも4つもメッセージがあると、理解に時間がかかります。4つめのメッセージを理解した頃には、1つめのメッセージを忘れてしまうでしょう。また、一気に複数の疑問が浮かび、質問の時間をとられてしまいます。1スライド1メッセージを基本にすることで、1スライドごとに不明点を確認できるとともに、1つひとつのメッセージが伝わりやすくなります。
なるべく箇条書きを使う
文章で長々と解説すると、途中で読むのを諦めてしまいがちです。できるだけ箇条書きを使用して、読みやすい資料作りを心がけましょう。例えば、「営業に失敗する原因」について伝える場合、文章と箇条書きでは次のようにわかりやすさに大きな違いがあります。
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【文章】
営業に失敗する原因は、事前の調査不足や魅力に終始した商品説明、打ち合わせ時間に遅れるなどさまざまです。そのほか、笑顔がなかったり、疲れた印象を与えたりすることも失敗に繋がります。
【箇条書き】
営業に失敗する原因は次のとおりです。
・事前の調査不足
・魅力に終始した商品説明
・打ち合わせ時間に遅れる
・笑顔がない
・疲れた印象を与えている
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このように、箇条書きの方が情報が伝わりやすくなります。ただし、箇条書きは7つまでにしてください。それ以上は文章形式の場合と同じく相手に伝わりにくくなります。重要な7つをピックアップして、残りは後の文章で補足説明しましょう。
専門用語を使用しない
資料に専門用語を使用してはいけません。常識と思われるような専門用語でも、相手が知らない可能性があります。その時点で用語説明の手間が増えるうえに、話をさえぎることになります。また、相手に渡す資料にも専門用語が多数使われている場合、1つずつ意味を調べながら資料を読むことになるでしょう。
スラスラと読み進められない資料は、途中で読むのをやめてしまう方が多いでしょう。専門用語を使用することで専門性をアピールできると思っている方もいますが、実際には相手がわからない用語を使うことで「相手の立場を想定できない企業」と思われてしまいます。
資料のデザインに関して
オンライン営業の資料は、デザインにもこだわる必要があります。見づらいデザインになると、最後まで読み進めてもらえません。次のポイントを押さえて資料のデザインを決めましょう。
文字サイズは小さすぎないか
資料の文字サイズが小さすぎると、読むのに時間がかかります。目をこらして読むことに労力がかかり、肝心の内容が入ってこなくなるでしょう。大きすぎず小さすぎない文字サイズに設定することが大切です。
資料によって最適な文字サイズは異なります。図やグラフなどとの位置関係や入力箇所によっても適切なサイズが異なるため、1ページごとに読み直しましょう。少しでも読みづらいと感じたときは、サイズを0.5ずつ調整してください。
凝りすぎたデザインになっていないか
オンライン営業では、オフラインよりも魅力的な資料が必要と考え、デザインを凝りすぎてしまう場合があります。文字よりもデザインに目が行くことで、資料の読み込みが難しくなるでしょう。デザインは、シンプルかつ視認性に優れたものがおすすめです。
また、商品やサービスのイメージカラーや形を取り入れましょう。ビジネスツールでは、ブルー系のデザインがよく使用されます。環境やエコをイメージさせるときはグリーン、飲食関連はレッドなどを選びましょう。
イラストレーターなどのプロにデザインのテンプレート作成を作ってもらえば、デザインの考案に時間を費やす必要がなくなります。商品やサービスに合わせて、情報を当てはめていくだけで作成できます。
デザインに使うのは3色まで
資料に使う色は3色までにとどめてください。それ以上の多色づかいは、文章を読むことに集中できなくなります。また、イメージカラーがボヤけることで、商品の魅力が伝わりにくくなるでしょう。
イメージカラーがブルーの場合は、淡いブルーや濃いブルーを組み合わせることが大切です。他の色を使う場合でも、近い色を選ぶ必要があります。レッドとブルーなど反対色を組み合わせると、派手な印象を与えてしまいます。
資料の目次を作成する
資料の1ページ目に目次を記載しましょう。目次がないと、読むべき箇所や所要時間がわかりません。資料を渡しても読んでもらえなかったり、忙しいことを理由に商談をキャンセルされたりする恐れがあります。
目次はメインのページではないため、シンプルに構成しましょう。記載すべき項目はページとタイトルのみです。簡単な内容を記載する必要もありません。
導入部の商品を魅力的に見せる要素
資料の導入部からいきなり商品の説明をしてはいけません。商品を魅力的に見せるには、ストーリーの設定や簡潔な紹介などが重要なポイントです。それでは、導入部における商品を魅力的に見せる要素について詳しくみていきましょう。
ストーリーのある資料作り
資料の最初から商品の魅力を伝えると、読み手は自分のニーズに合った商品・サービスなのか判断できません。読み手が課題を認識できるように、よくある悩みを解説しつつ、「この商品・サービスなら課題を解決できる」ということを伝えましょう。
課題を解決できる商品・サービスであれば、購買意欲が高まります。また、実際に導入した結果、本当に課題が解決するのかどうか気になるため、導入事例も紹介することが大切です。そして、最後に価格を提示しましょう。
資料の途中で価格を提示すると、価格に見合っているかどうか判断できません。
商品・サービスを簡潔に紹介する
商品・サービスは、簡潔に紹介することが大切です。魅力を伝えるために何ページにも渡って解説をすると、読み手は疲れてしまいます。商品・サービスは、1~3ページ程度で完結にまとめましょう。
大きな機能が4つある場合は、1ページに2つずつ掲載し、オプションを次のページに掲載することがおすすめです。ただし、文字サイズを小さくして詰め込んではいけません。視認性を維持しつつ、簡潔にまとめましょう。
商品・サービスの事例と実績を提示する
商品・サービスの事例があると、実際に導入して成功している企業がいることに安心感を覚えます。そして、実績も提示すれば、信頼性がより一層高まるでしょう。実績を提示するときは、魅せ方が重要です。
1万社が導入している場合、短期間で最も多く導入された実績を提示しましょう。「月100件のお問い合わせ!」や「半年で200社に導入!」など、期間と一緒に提示することで、より魅力的に見えます。
課題認識させるページを作り込む
どれだけ優れた商品・サービスでも、相手が抱える課題を解決できなければ成約には至りません。ここで注意したいのは、相手が課題を認識していない場合があることです。隠れたニーズを探り当てられるような課題認識ページを作りましょう。
例えば、営業支援ツールを売り込む場合は、下記のような課題を挙げることがポイントです。
・直行直帰を実現できない→帰社に時間がかかることで残業代が余計にかかる
・商談先が多くて管理しきれない
・営業成績を常に把握することが難しい
このような課題をピックアップしたうえで、次の商品紹介ページで課題を解決できることを示しましょう。
クロージング
クロージングでは、下記のポイントを押さえましょう。
顧客が得られるメリット・価値を提示する
商品・サービスを導入することで顧客が得られるメリット・価値を具体的に提示することが大切です。商品・サービスの機能や役割などを提示するだけでは、「結局のところ、どのように課題を解決できるのかわからない」といった問題が発生します。
導入すれば、具体的にどのようなメリットを得られるのか、その先に何が起こるのかまで詳しく解説しましょう。
他社と差別化できるポイントを提示する
他社と差別化できるポイントがない場合、比較検討が難しくなります。他社製品・サービスの方が魅力的な資料を提示していた場合、そちらを選ばれる恐れがあります。そのため、他社と差別化できるポイントを明確に示すことが大切です。
そのときは、他社製品の名称を出すのではなく、「A社」、「B社」など、伏せる必要があります。価格だけではなく、機能やオプション、アフターサポートの内容など、さまざまなポイントを比較しましょう。
客観的なデータ(根拠)を提示する
導入実績を提示するときは、根拠となる客観的なデータの提示も必要です。例えば、実際に商品やサービスを利用した従業員に匿名でアンケートをとり、その結果を資料に掲載する方法があります。
そのほか、課題認識のページにおいても、公的機関の信頼性が高いデータを引用するなど、さまざまな部分に根拠を記載することが大切です。数字の根拠があるかどうかで、資料全体の信頼性が変わってきます。
申し込み後の流れとアフターサポートの紹介
相手が興味を示したら、申し込み後の流れとアフターサポートの紹介をしましょう。資料に記載するとともに、口頭で説明することが大切です。申し込み後の流れが明確であれば、安心して申し込めるでしょう。また、導入して終わりではなく、充実したアフターサポートがあることを強調してください。
実際に、アフターサポートはできるだけ充実させることが大切です。快適に商品・サービスを利用してもらうとともに、他の商品・サービスの紹介に繋げることを目的としてください。
一度、獲得した顧客は、会社に信頼感や安心感を覚えることで、課題が生じたときに気軽に相談してくれます。そのときに、再び課題を解決できる商品・サービスを提案すれば、成約に至るでしょう。
まとめ
オンライン営業の資料作りでは、オフラインのときと同様にわかりやすい資料を作ることが大切です。また、非言語コミュニケーションがうまくいきづらいため、何度も質問されることがないように、専門用語を使わず、できるだけ明確かつわかりやすい文章を記載してください。資料の内容次第で成約に至るかどうかが決まるといっても過言ではないため、十分に検討して作成しましょう。