OKRとは?組織・個人の足並みを揃える目標管理方法の特徴・導入・運用方法

OKRは、組織の目標達成に向けて組織と個人が足並みを揃えることを目的とした目標管理方法です。組織の目標を達成するのは個人のため、適切な目標設定ができていなければ組織の目標は達成できません。OKRは、Googleをはじめとした世界的な大企業が導入しているため、日本でも多くの企業が注目しています。ここでは、OKRの特徴やメリット、導入・運用方法、導入事例まで詳しくご紹介します。

目次

OKRとは

OKR(Objectives and Key Results)は、企業の目標達成を目的として、主要な成果と達成目標を繋げ、個人と組織の方向性を揃える目標管理方法です。企業が目標を従業員に共有しても、適切な方向性を持って業務を遂行しなければ、目標は達成できません。

企業規模が大きい場合、会社の方針は部長や課長などの管理職を通して、現場の従業員へと伝わります。このとき、組織の目標を伝えるだけでは、従業員が何をすればよいのかがわからず、目標達成に向けた業務を遂行できません。

そこで、OKRを導入することで、組織と個人の足並みが揃い、適切な方向性を持って業務を遂行できるようになります。

OKRの特徴

OKRの導入時に重要なのは、「組織の目標」と「個人の目標」が繋がっていることです。「個人の目標」を達成することで、結果的に「組織の目標」を達成できる必要があります。

OKRを適切に運用するには、次のポイントを押さえなければなりません。

・個々のスキルで達成できる目標よりも少しだけ高い目標を設定する
・成功の基準は達成率60~70%程度
・「組織の目標」と「個人の目標」の進捗をいつでも確認できるようにする
・個々の従業員の評価に用いない
・数値化できる「個人の目標」を設定する

このようなポイントを押さえることで、「個人の目標」を適切に設定できて、OKRの効果を実感できるでしょう。

KPIとの違い

OKRと似た業績管理手法に「KPI(Key Performance Indicator)」があります。KPIは、「最終目標の達成に必要なプロセスの経過目標」のことで、KPIを達成することで最終目標を達成できるように設定します。

MBOとの違い

MBO(Management by Objectives)は、「組織の目標達成に繋がる個人の目標を設定する目標管理方法」です。適切な目標を設定して従業員のモチベーションを高めることも目的としており、上司による励ましや労いといった行為なしでパフォーマンスを発揮できるようにします。

OKRを導入・運用するメリット

OKRを導入・運用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。OKRを適切に運用できれば、次のメリットによって組織の目標が達成しやすくなります。

業務効率と生産性の向上

組織の目標を全従業員で共有し、目標達成度指標(Key Results)を意識して業務を遂行します。これにより、目標達成に繋がらない業務を排除でき、業務効率と生産性が飛躍的に向上するでしょう。

また、新たな企画を立てるときに、「本当に組織の目標達成に繋がるのか」を考えるきっかけになります。

企業に対するエンゲージメントの向上

OKRでは、組織の目標と個人の目標が連動するため、会社への貢献度が見てとれて、会社への愛着や働くことに対する意欲の向上に繋がります。

従業員も組織から期待されている成果を意識できて、モチベーションが上がります。また、月1回~四半期に1回の振り返りによって、企業への貢献度を短期的に確認できるため、パフォーマンスやモチベーションを維持しやすいのです。

目標達成への意欲の維持と方向性の修正

OKRは、目標達成の成功基準を60~70%程度に設定します。達成できない無理な目標ではなく、現実的かつ努力すれば達成できる目標が設定されるため、目標達成を諦めてしまう心配がありません。

また、組織の目標達成とは無関係の小さな目標に惑わされず、適切な方向性で挑戦できるようになります。

OKRの導入方法

OKRは、組織全体の目標から細分化して個人の目標を設定することが基本です。順序は、「組織の目標」、「チームの目標」、「個人の目標」となります。

また、「チームの目標」の達成によって「組織の目標」が達成できて、「個人の目標」の達成によって「チームの目標」を達成できるようにOKRを設定しましょう。

それでは、OKRを導入するための5つのステップをご紹介します。

ステップ1:SMARTに基づいた目標の設定

組織とチーム、個人の目標は、「SMARTの法則」に基づいて設定してください。SMARTは、次の頭文字からとった言葉です。

・Specific(明確性)
・Measurable(軽量性)
・Assignable(割当設定)
・Realistic(実現可能性)
・Time-related(期限設定)

つまり、個々に対して実現可能な目標を一定期間ごとに設定する必要があります。どれか1つでも欠けると、適切なOKRになりません。それぞれの要素を詳しくみていきましょう。

少し高めの目標を設定する

OKRでは、「努力は必要だが十分に達成できるレベル」の目標を定めることが大切です。簡単な目標だと、従業員のモチベーションが下がり、生産性や業務効率に問題が生じます。そして、達成率が60~70%程度になる目標を設定しましょう。

見る人によって認識が変わらない目標を設定する

目標は全体で共有する必要があるため、見る人によって認識が変わらない目標を設定します。明確かつ明瞭、それでいて定量的な目標であることが必須です。例えば、「顧客を○○人笑顔にする」といった目標は、笑顔の基準が人によって異なります。

一方で、「○○の月度売上1,000万円を達成する」を目標にすれば、誰もが共通の認識を持てます。

目標の数を絞り込む

複数の目標を設定しても問題はありませんが、数が多すぎると力が分散して中途半端な結果になる恐れがあります。目標の数は厳選したうえで、個人のスキルやポテンシャルまで踏まえた目標を設定しましょう。

目標の理想の数は3~5個とされていますが、企業規模、個人のスキルやポテンシャルで異なります。

明確な期限を設定する

OKRにおける目標は、期限を明確に設定します。期限の設定により、目標達成に向けた行動計画を立てやすくなります。また、目標の存在が現実を帯びることで、モチベーションを維持しやすくなるでしょう。企業にとってベストな期限を設定してください。

ステップ2:主要な成果を設定する

達成目標の設定後は、主要な成果(Key Results)を設定します。

誰が見ても同じ認識ができる数値化した目標を設定しましょう。達成目標と同じく、明確かつ誰が見ても同じ認識ができる主要な成果を設定すれば、従業員間での認識に相違が生まれません。

また、主要な成果には、3~5つの数値目標を設定しましょう。達成目標に対して3~5つの主要な成果を設定することで、目標達成に必要な具体的な行動が見えてきます。

ステップ3:組織の目標からチーム・個人の目標へと順を追って設定する

組織の目標をチーム・個人へと落とし込み、リンクさせましょう。個人の目標達成でチームの目標が達成でき、そして最終的に組織の目標を達成できるのが理想です。

整合性がとれていない目標を設定すると、OKRのメリットを得られません。定期的に整合性チェックをしましょう。また、多すぎる目標はリソースをうまく割けなくなるため、3~5ほどに絞り込んでください。

ステップ4:全社員でOKRを共有する

OKRは、全社員がいつでも確認できる必要があります。社内SNSでの共有、全社員向けメールでこまめに共有など、常にOKRを意識できるように工夫しましょう。

また、役員クラスが全社会議で従業員にOKRを伝えるのも有効です。言葉で伝えることで従業員としてもOKRの重要性がわかり、目標達成に向けて行動しやすくなります。

ステップ5:目標のフィードバックを欠かさない

OKRは、定期的に目標のフィードバックが必要です。期間内の達成は可能かどうか、目標達成に何か障害はないかなど、こまめにフィードバックすることで目標達成率が上がります。

また、具体的なアドバイスで目標達成に対するモチベーションを維持させることも重要です。そして、四半期など定期的にOKRの目標の妥当性を確認しましょう。もし、妥当ではない目標だった場合は、組織の目標と整合性がとれなくなっているので、全体の見直しが必要です。

ステップ6:成果の測定と評価

OKRは目標管理方法の1つのため、期日が終了したら目標達成度を評価します。60~70%程度が成功の基準として、どれだけの成功を修めることができたか確認しましょう。結果を踏まえ、必要であれば目標を再設定してください。

OKRの適切な運用方法


OKRは、まだまだ浸透していない手法のため、間違った運用をする企業が少なくありません。OKRを運用するときは、次のポイントを押さえましょう。

人事評価制度とは切り離す

OKRの目的は、組織目標を達成するためのコミュニケーションを促すことです。そのため、OKRと個々の人事評価は切り離して考える必要があります。人事評価制度にOKRを組み込んでいる企業もありますが、本来の活用方法とは異なります。

OKRのメリットを適切に得るためにも、人事評価制度とは切り離すことが大切です。

進捗の共有できる環境を整える

OKRの進捗を共有して、従業員がそれぞれの役割を認識し、とるべき行動を明確化できる必要があります。OKRを誰かいつどこにいても確認できるように、社内整備をしましょう。社内SNSを利用すれば、OKRを容易に共有できます。

コミュニケーションを強化する

OKRは、従業員同士、チーム間、経営層とうまく連携できてこそメリットを発揮します。お互いのOKRを確認し、それぞれが目標達成に向けて働ける環境を構築しましょう。ただし、無駄なコミュニケーションではなく、有意義なコミュニケーションを実現できる環境づくりが必要です。

管理者は、OKRに集中できる環境を整え、適切な業務量を割り振りましょう。

目標設定の妥当性とOKRへの理解度を確認する

OKRでは、高めの目標を設定することが基本です。その旨を必ず従業員に伝えましょう。理由を伝えずに高めの目標を設定すると、モチベーションが低下する恐れがあります。また、OKRが高めな設定の場合、スパンが長すぎるとモチベーションが低下するでしょう。

長くても四半期程度のスパンで区切り、OKRの評価を従業員に伝えることが大切です。

報酬に連動させない

OKRは、個人のスキルを評価するものではありません。OKRの達成度で個人のスキルを評価すると、結果的に報酬に連動します。OKRは、目標達成に必要な行動を明確化し、コミュニケーションの密度を高めてパフォーマンスを発揮させる手法です。

そのため、OKRは個人のスキル評価に影響しない形で導入することが大切です。

経営陣・管理職がOKRの必要性を伝える

OKRの導入に対する従業員の反応は様々です。新たな管理方法が導入されると、従業員が意識すべきことが増え、負担に感じる場合があります。そのため、OKRの必要性やメリットについて、経営陣や管理職が丁寧に説明することが大切です。

OKRについて記載されたレジュメを配るだけでは、現場に浸透しません。責任ある人物が言葉でOKRの必要性を伝えることで、従業員が理解・納得して業務を遂行できるようになります。OKRは従業員の自発的な行動なくして成り立たないことを覚えておきましょう。

OKRの導入例

これまでの解説を踏まえ、OKRの設定例をご紹介します。

目標・・・マーケティングで価値ある商品を世に広げて喜んでもらう
主要な成果・・・営業部門の売上50%アップ、新規顧客月30件達成

これは、「営業部門の売上50%アップ」と「新規顧客月30件達成」の実現で、「マーケティングで価値ある商品を世に広げて喜んでもらう」という目標を達成できる必要があります。

OKRを導入している有名企業

OKRは、Google社をはじめ、大手企業が積極的に導入しています。各企業の導入事例をご紹介します。

Google社

Google社は、検索エンジンやスマホなど、テクノロジー業界で常に一歩先を行く企業です。2000年代はじめにOKRを導入し、常に高い成果を挙げてきています。現在は、1年と四半期単位でOKRを設定し、定期的に従業員にフィードバックしています。

Google社がOKRを導入したことがきっかけで、他の大手企業も導入を始めました。そのため、Google社が導入しているOKRはもっとも基本的なものです。成功の基準は達成率70%で、基本的なOKRを守っています。

導入から20年程度が経過したことで、多くの活用事例を持っており、しばしばインターネットで配信しています。OKRの有用性はGoogle社が証明しているため、OKRの設定に悩んだときは深く考えすぎず、基本を守ることが大切です。

株式会社メルカリ

フリマアプリの「メルカリ」を運営する企業で、2015年からOKRを導入しています。今では、鹿島アントラーズを傘下に持つなど精力的に広報活動をしており、売上高を着々と伸ばしています。

株式会社メルカリでは、グループ全体から各事業部へ、そして各チーム、個人へとOKRを落とし込んでいます。評価のスパンは四半期です。

OKRの進捗は、グリーンとイエロー、レッドの3パターンで評価しており、一目で大体の達成率がわかるようになっています。この確認はチームと個人は日々の面談、事業部では全体会議や隔週でのフィードバックで伝えられます。

また、OKRを人事評価の指標としているのも特徴です。ただし、OKRは達成率60~70%で成功とされるため、パーセンテージではなくプロセスで評価しています。それにより、個々のチャレンジ精神が可視化され、数値に現れない部分まで評価できるようになります。

OKRを導入したことで、会社の方向性が個々に伝わりやすくなったと同時に、チャレンジしやすい企業風土が形成されたそうです。

Chatwork株式会社

Chatwork株式会社は、今では標準的なビジネスコミュニケーションツールとなった「Chatwork」を手がけています。2017年にOKRを導入以後、目標設定の風土が根付き
、人事評価制度も明確になったといいます。

OKRの導入によって、経営陣の目標が細分化されて個々へ伝わり、チャレンジしやすい風土が根付きました。当時、イレギュラーの目標設定外のプロジェクトが発生したときに、本来の目標を達成できなくなっていました。元の状況に戻すことが目標となり、企業を成長させるための目標が形骸化していたのです。

OKRの成功基準を達成率70%として、「OKRを通じて、いかにチャレンジできたか」を評価対象としたことで、人事評価の適切な運用と社内コミュニケーションの活性化のメリットを得られたそうです。

株式会社日本経済新聞社

株式会社日本経済新聞社は、2019年からOKRを導入しました。その目的は、部署の開発内容と企業全体の目標のリンクの可視化です。

達成目標を数値化し、チーム、個人へと細分化してOKRを設定しました。その際には、OKRへの理解を深めてもらうために、10回程度の説明会を開催したといいます。四半期ごとに評価し、成果のフィードバックを実施することで、企業の上層部への理解も深めていきました。

また、様々な職種の従業員が集まる混成型のチームを結成し、新たなアイデアを創出しやすくしました。その結果、エンジニア職でも目標数値を意識できるようになり、事業目標への貢献度がわかるようになったそうです。

GameWith

GameWithは、ゲーム攻略サイト、ゲーム紹介、実況動画配信を提供しているゲーム関連企業です。OKRの導入と同時に人事データをクラウド上にアップして、全従業員に開示しています。数値に基づく組織側の課題を把握できるため、自分が何を求められているのかが明確になります。

SMARTの法則もしっかり守り、OKRの基本を押さえていることが特徴です。

まとめ

OKRは、組織と個人の足並みを揃えるために設定する目標管理方法です。SMARTの法則に基づき、5つのステップを踏むことで、適切に目標設定や主要な成果の設定ができます。OKRは現場のコミュニケーションの加速とモチベーションアップが期待できる手法です。今後も、OKRを導入する企業は増えていくことが予想されます。

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