マイクロ天国?マクロ地獄?(借金玉のマイクロ起業 Vol.16)

こんにちは、借金玉です。僕は現在、2足の草鞋を履きながら「マイクロ起業」に挑戦しています。今回は前回の予告通り「マイクロ起業だからこそ儲かる飲食業」について考えてみたいと思います。

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逆転の発想、バーエデン

最近僕は「借金玉バー」というイベントをやりました。僕が料理を作って皆さんに振舞いつつくっちゃべるというアレなイベントだったのですが、幸いに、50人以上のお客様に恵まれ大繁盛のイベントとなりました。こちらを開催させていただいたのが、池袋のエデンというバーです。

エデンは「バー」と名乗っていますが、驚くべきことにバースプーンすらありません。バーテンダーもいません。カウンターがありグラスがあり、椅子があり、後は何か色んなものが曖昧にあるお店です。管理状態はお世辞にも良いとはいえませんし、椅子はグラつくし、時に照明が全て点灯しないなどのオモシロハプニングも発生しますが、その代わり店主は「勝手にやれ、大規模な破壊行為と出火だけはやめろ」という鷹揚さでそのスペースを貸し出してくれます。尚、おしぼりやコースターといった気の利いた消耗品なども一切ありません。

そして、このお店のオモシロいところはバーテンダーが日替わりだということです。カウンターにたってお客様を迎えたい人がお店を借り切って、その売り上げから場所代を支払うのです。ドリンクなどの経費はエデン持ち、フードなどをやりたい場合も相談です。(僕の場合はフード経費もエデン持ちでした)そして、利益を店主とバーテンダーで分配する、そういう仕組みです。要するに、タダでバーイベントがやれちゃうのです。

こちらのお店は池袋から徒歩20分、要町から徒歩15分とあまり恵まれた立地にはありませんが、その分賃料は非常に安い。7万円とかそんな感じだったと聞いた記憶がありますが、まぁ大体そんなもんだと思います。ここで一日バーテンダーをやる際の条件はたった一つ、「場所代最低1万円分だけは売り上げろ」それだけです。売り上げ1万円に到達すればタダで一日バーテンダーを楽しめますし、それ以上を売り上げれば利益配分があります。この利益配分比率については多分売り上げ比例だと思います。僕は「これくらいはよこせや、よこさないならやらねえぞ、その代わり過去最高の集客を見せてやる」とねじこんだので他の人の配分比率がどうなっているのかはわかりません。

エデンでは連日様々な(ちょっと形容しにくいほど実に様々な)イベントバーが開催され、連日大変にぎわっています。さて、他人の懐具合を詮索するというゲスなことをやってみましょう。1日バーテンダーをやる方は多分、平均15人くらいは集客すると思います。客単価は3000円というところでしょうか。売り上げは4万5千円くらい。お酒の原価はせいぜい15%というところでしょう。フードはそれほど出さないと聞いていますので、あまり考慮に入れません。

月に25日稼動するとして、売り上げは112万円くらい。そこからドリンク原価の15%を差し引き95万円程度。賃料の7万円を差し引き、88万円。電気光熱水道費はせいぜい3万というところでしょう。これで85万円。まぁ、諸雑費が6万やそこらかかるとして、なんと79万円が残っているのです。さて、では一日バーテンダーとの利益配分比率ですが流石に5割ということはないと思うので(経費も全てエデンもちで5割はないでしょう)仮に3割とすると手残り55万円ちょっと。売り上げ300万のお店より、売り上げ112万のお店が儲かっている。これが商売の恐怖です。

更にバーエデンには謎の「書生」という存在がおり、エデンに「住んで」います。(これは比喩でもなんでもなく、本当に彼らの寝床はバーエデンなのです)彼らは従業員ではなく、好き好んでエデンに住み着き、掃除をしたり給仕をしたりして暮らしています。彼らの人件費は謎に包まれていますが、かなりお得な感じになっているのは間違いないでしょう。しかし、彼らも独特の異空間を心底楽しんでいるように僕には見えました。なお、『お小遣い』という概念が存在するようです。駆け出し力士のようなものでしょうか?

さて、そういうわけでどう転んでもバーエデンは売り上げ300万円の飲食店より儲かっている、という結論が出たところで「マイクロ起業」のポテンシャルを感じていただけたでしょうか。ちなみに、この店はえらいてんちょう(@eraitencho)と名乗る奇人が経営しているのですが、彼がこの店舗の取得にかけた費用は保証金数ヶ月と賃料のみ、内装は何一ついじっていないとのことです。まぁ、かなり多めに見積もっても100万なんて全然かかっていないでしょう。それで、月の純利益はかなり少なく見積もっても40~50万です。

マイクロは侮れない

もちろん、これは池袋を代表する奇人「えらいてんちょう」氏が各方面に顔が広く、集客力のある人間を多数動員できるという特殊能力に基づいたビジネスです。彼の顔の広さはツイッターに依存しており、人との間合いを詰めるのが異常にうまいため、気づいたら僕も彼の店で料理を作っていました。(尚、僕のイベントは3万5000円どころではない売り上げでしたので、エデンの売り上げは本稿の予想より大分上ブレしている可能性があります)

しかし、100万に足りない資金と人脈、後はアイディアで月間40~50万の利益を叩き出すビジネスは「やれてしまう」んですね。もちろん、誰にでも出来ることではありませんが、やれるかやれないかの二元論でいえば、やれるのです。そして、このえらいてんちょう氏は、他にも学習塾経営、講演登壇、ライター業、カーシェアリング投資等々各方面に手を広げており、お店にコミットするのは売り上げの確認程度です。つまり、これもまた明確に「マイクロ」のひとつの形といえます。「飲食」というマイクロという概念とは程遠いと思われる業態ですら取り込める「マイクロ起業」(えらいてんちょう氏は「ショボい起業」と表現します)の裾野の広さとポテンシャルをご理解いただけたのではないでしょうか。

ちなみに、この文章は全て僕の経験からの予測で、彼から聞いた直接の情報は賃料くらいですが、大きくは外していないと思います。あいつ年収少なく見積もって800くらいあるんじゃねえのか、今度和牛とか奢らせましょう。ワインも飲みたい。

そういうわけで、本日は他人の懐具合を詳細に分析するという大変底意地の悪い記事になりましたが、「マイクロ起業は儲かる、具体的にいうと数千万かけた店より純利益が多いなんてよくあること」というのはご理解いただけたかと思います。正直悲しくなりますが、これは厳然たる事実です。泣いていいですか。いいですよね。

そういうわけで、皆様も「マイクロ」を探してみてください。ガツンと儲かる資本主義の隙間は結構あちらこちらにポカっと空いています。

僕もがんばって生きますので、やっていきましょう。

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この記事を書いた人

1985年、北海道生まれ。大学卒業後、大手金融機関に就職するが2年で退職。
現在は不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。
著書に『発達障害サバイバルガイド: 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』(ダイヤモンド社)、『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)がある。

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