~中小企業の革新は「1つの思想(≒欲)と1つのチーム」から始まる~
こんにちは。株式会社ベンチャーネットの持田です。
少子高齢化やコロナ禍など、企業経営を取り巻く環境は一層厳しさを増しています。こうした外的要因への対処法として、ベンチャーネットでは固定費を増やさず売上を伸ばす「バーチャル経営」を提案しています。前回はバーチャル経営の思想や定義、必要とされる理由などを解説しました。今回は引き続き、バーチャル経営の構成要素をより具体的に紹介してきたいと思います。
1.バーチャル経営の構成要素
バーチャル経営は「仮想化と本質化」を主としつつ、「人(≒固定費)を増やさずに売上を伸ばす」ための手法を体系化したものです。「何か難しいことをやるのでは?」と感じるかもしれません。しかし、その本質は従来の経営理論を一部踏襲しています。つまり、経営者であれば当たり前に気にかけていることに対し、これまでとは異なるアプローチで解決を試みているわけです。
従来の経営理論は、経営の3要素「ヒト・モノ・カネ」に「情報」を加えた「4大経営資源」の運用方法が大半を占めています。経営戦略の古典ともいえる「ランチェスター戦略」、次世代の経営戦略のお手本ともいえる「コーポレートトランスフォーメーション」や「両利きの経営」も、突き詰めれば経営資源の運用方法を解説したものなのです。
バーチャル経営もこの点は何ら変わりがありません。ただし、バーチャル経営では、これら経営の4大資源を、ICT(通信技術を活用したコミュニケーション)によって仮想化・本質化していくことで、生産性と付加価値を高めようという試みを提案しています。
また、「大資本を持たない中小・中堅企業がいかに組織を肥大化させず、プロフェッショナルチームを組成するか」という視点も大切にしています。
「優秀な正社員」「潤沢な資金」「ブランド力」が無い状態から、いかに高付加価値な企業へ変革していくか。バーチャル経営には、これを実現するための工夫が詰め込まれています。
ここまで解説した前提を踏まえ、バーチャル経営の構成要素を見ていきましょう。
バーチャル経営の構成要素は次の4つです。
・人と労働力の「本質化」
・会計的数値による「資金、生産性、付加価値の計測」
・デジタルマーケティングによる「販促と集客」
・高効率で価値の連鎖を生む「自動化」
人材と労働力の本質化
前回の記事でも紹介したように、日本は「労働力の減少フェーズ」に突入しました。バーチャル経営では「できる人材との専属契約が難しい時代」に、人材と労働力を効率よく確保するため、以下のような施策が必要だと考えています。
●バーチャル社員
バーチャル社員とは「本質的な能力を持った人材」のことです。雇用形態や勤務地などに依存せず、「必要なときに、必要なスキルを提供してもらう人材」を確保し、なおかつ中長期的な関係を築くことがバーチャル社員活用の肝です。バーチャル社員を上手く活用することで、固定費(≒人件費)をできるだけ抑制しつつ、ハイパフォーマンスなプロフェッシュナル部隊の組成が可能になります。
●クラウドソーシング活用
クラウドソーシングは、発注者(特定のタスクを発注したい企業)と受注者(時間、スキルを提供して報酬を得たい人材)をインターネット上でマッチングし、アウトソーシングを成立させる仕組みです。近年は専門的なスキルを持つ人材の登録が増えており、バーチャル社員候補を発掘する場としても役立ちます。
●RPA
RPAは、「ロボット・プロセス・オートメーション」の略称で、作業ロボットによって単純作業を自動化するツールを指します。データ入力と出力・ドキュメント作成といったバックオフィス部門の雑務が自動化できるため、業務廃棄によるリソース集中や省人化対策として優秀です。弊社でも国産RPAツール「WinActor」を取り扱っています。
●AI-OCR
AI-OCRは、従来のOCR(Optical Character Recognition/Reader)のように画像化された文字情報をテキストに変換する技術ですが、AIとの組み合わせによって認識精度が劇的に向上しています。例えば、帳票の画像データからテキストを抜き出してCSVファイルに自動変換したり、AI-OCRとRPAを連動させ、紙書類の電子化からデータ入力までを自動化したりと、これまでのOCRでは実現できなかったレベルの自動化が可能です。ベンチャーネットでも、AI-OCR「DX Suite AWS版」と国産RPA「WinActor」を連動させた業務自動化ソリューションを提供中です。
会計的数値による「資金、生産性、付加価値の計測」
バーチャル経営では、定量的な指標を用いた資金・生産性・付加価値の計測も推奨しています。なぜこうした指標が重要なのかというと「効率よく稼ぐ力」を上げることに役立つからです。ベンチャーネットでは、以下5つの指標を特に重視しています。
●ROA
ROAとは「Return On Assets」の略であり、日本語に訳すと「総資産利益率」です。ROAは、
・ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
という指揮で求められます。ROAが高い企業は、「資本を使って効率よく稼いでいる」と言えるため、優良企業の判定基準として使われることが多いです。ます。一般的には「ROA5%」以上が優良企業の基準となりますが、ベンチャーネットでは20%を推奨しています。
●経常利益
「従業員1人あたりの経常利益」も「稼ぐ力」を測るための重要な指標です。従業員ひとりあたりの経常利益は「限界利益から固定費を差し引く」ことで求められ、上場企業平均で200万円ほどです。経常利益は「固定費の削減」で増大するため、ICTを使った業務廃棄・自動化がダイレクトに影響する分野といえるでしょう。
●付加価値
ここでいう付加価値とは「従業員一人当たりの付加価値額」であり、生産性とも言い換えられます。資本金10億円以上の大企業における生産性(従業員一人あたりの付加価値額)の目安は「1300万円台後半」です。これに対し、中小企業(資本金1億円未満)の場合は、「550万円前後」であり、実に2倍以上の差があります。中小企業が目指すべきゴールは「1000~1300万円前後」にあると言えるでしょう。付加価値を増大させるには、
・バーチャル社員活用による少数精鋭の体制を確保
・SFA/MA/SEO/RPAなど先端テクノロジーをフル活用し、顧客課題に応じた柔軟かつ良質なサービス提供
という2つのアプローチが効果的です。
●労働分配率
労働分配率とは「付加価値に占める人件費の割合」です。ここで言う人件費には役員報酬も含みます。バーチャル経営では、労働分配率の上限として50%程度(従業員人件費30%、役員報酬20%程度)を推奨しています。
●F/M比率と損益分岐点比率
F/M比率は「固定費を粗利で割る」ことで算出され、企業の安定性を評価するための指標です。F/M比率が高いほど安定性の高い企業と言えます。
・F/M比率=固定費÷粗利×100
バーチャル経営では、F/M 比率の上限目安として「80%」を推奨しています。
また、損益分岐点比率は「売上全体に占める損益分岐点売上高の割合」です。この数値が低いほど「不測の事態に耐えやすい」と言えます。バーチャル経営では、売上が20%~50%消失しても耐えられるように、損益分岐点比率70%以下を推奨しています。
デジタルマーケティングによる「販促と集客」
デジタルマーケティングは、複数のチャネル・タッチポイントを活用し、消費者行動をリアルタイムに収集・分析しながら「売れる仕組みづくり」につなげる効果を持ちます。
バーチャル経営では、より精緻に「優良顧客となりうる企業」を把握し、リード獲得・ナーチャリングを進めるために以下の施策を推奨しています。
●BtoBデジタルマーケティング
BtoB領域におけるデジタルマーケティングは、「コンテンツマーケティング」「SEO」「広告」に加えて、MA・SFAなどのICTツールも活用します。また、「ABM(アカウントベースドマーケティング)」を用いて「得意客になりそうな顧客の選別と適切なアプローチ」を進め、優良顧客と効率よく出会うことも目的としています。
●コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、コラム記事などを通じて「顧客の課題、悩み」にフォーカスした情報を提供するマーケティング手法です。顧客の検索意図やペルソナを理解したうえでコンテンツを作成し、サイト流入とリード獲得を繰り返しながら、LPや商品ページでの成約を目指します。
●コンテンツSEO
SEOとは「検索エンジン最適化」のことで、「狙ったキーワードで検索結果の上位表示を目指すための施策」を指します。具体的には自社のコーポレートサイトやオウンドメディア内に、キーワードを意識したコンテンツを配置したり、サイト構成を見直したりといった施策が該当します。もちろん、読みやすく訴求力の高い文章の作成も含まれます。SEOによる集客では、GoogleやYahooなどメジャーな検索エンジンのアルゴリズムやトレンドを理解することが大切です。
●インターネット広告出稿
インターネット広告は、ターゲット・用途・目的などに応じて、次のように複数のタイプを使い分けていきます。
・検索キーワードに対応したテキスト広告を配信する「リスティング広告」
・提携先のWebサイトに広告を掲載してもらう「アフィリエイト広告」
・複数媒体に広告を配信する「アドネットワーク広告」
・消費者の閲覧履歴から後追いで広告を配信する「リターゲティング広告」
・SNSユーザーを対象にした「SNS広告」
雑誌やチラシ、マスメディアへの出向に比べて予算と効果のバランスがとりやすかったり、具体化な効果測定がしやすかったりといったメリットがあります。
●ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、うまく機能すればリード獲得からナーチャリング、問合せ(商談化)まで効果を発揮するマーケティングツールです。一般的な記事コンテンツとは異なり、リードの「数」よりも「質」に重きを置いていることも特徴です。
ホワイトペーパーの作成では、市場動向やトレンドの分析を中心としながらも、自社製品・サービスの強みを自然に混ぜ込む手法が一般的です。過剰に自社製品・サービスを売り込まないことで、見込み客の課題に寄り添う姿勢を見せ、信頼関係の構築を目指します。
このことが、強いリード獲得につながっていくわけです。また、ダウンロードの条件にメールアドレスや連絡先の記載を求めることで、半自動的に見込み客の名簿を作成できます。
●メールマーケティング
メールマーケティングも、ホワイトペーパーと同じく顧客の課題に寄り添った内容を配信し、信頼関係を構築する手法です。ただし、メールマーケティングはホワイトペーパーよりもプロアクティブ(能動的)で、かつ段階的という特徴があります。また、メール送信先リストの構築には、前述のホワイトペーパーや名刺交換などで宛先を収集しなくてはなりません。そのため、施策を実行するまでにはある程度の準備期間が必要です。
●LP(ランディングページ)
LPとは直訳すると「着地ページ」であり、検索や広告から流入した訪問者が、最初に目にするページを指します。その目的は「訪問者のアクションを促すこと」であり、自社製品・サービスの訴求を優先することが多いです。コンテンツSEOや広告と組み合わせることで、訪問者の意思決定を促す効果があります。うまく機能すれば「インターネット上の敏腕営業マン」と化すツールです。
●SNS
SNSマーケティングは、自社アカウントからの情報発信やコミュニケーションを通じて、顧客の「エンゲージメント(絆)」を高める効果があります。エンゲージメントが十分に高まった顧客は、ロイヤルティの高い「リピーター」「ファン」など、自社に対して長期的に利益をもたらす存在になりやすいため、SNSマーケティングに成功すれば大きな資産となります。また、SNSは「いいね!」や「お気に入り」「拡散」といった反応がリアルタイムに可視化されることから、施策の効果測定が容易なこともメリットです。
●動画
テキストベースのマーケティングが徐々に飽和し、動画マーケティングが注目され始めました。動画によるマーケティングは「雰囲気」「ストーリー性」「世界観」などを伝えやすく、昨今の動画共有サイトの人気も相まって急速に広まっています。また、VSEO(動画コンテンツの検索エンジン最適化)を施すことで、動画サイト内での認知拡大効果も期待できるでしょう。ベンチャーネットでもビジネスアニメーションを主体としたYoutube動画作成・VSEOサービスを提供しています。
●ウェビナー
ウェビナーの強みは、事前に告知されたテーマに興味を持った参加者を対象とするため、「見込み客に近い良質なターゲットを集めた状態」からスタートできることです。また、ストリーミングや動画ベースであることから視覚的にわかりやすく、潜在顧客層に強くアピールできます。さらに、質疑応答など「双方向型のコミュニケーション」も可能なことから、信頼性を高めやすいというメリットもあります。ただし、単なる対談や資料解説とならないように、企画にはそれなりの労力を投入すべきです。ベンチャーネットでも、ウェビナー企画・チューニングサービスを提供しています。
●インサイドセールス
インサイドセールスは、自社WebサイトへのアクセスをMAやCRMなどを用いて分析し、顧客の行動パターンや興味・関心の傾向を特定したうえで、「訪問無し」で営業活動を展開する手法です。人件費や移動コストなどを最小化しつつ、強いリード獲得・商談化率向上といった効果が見込めます。ただし、インサイドセールスの材料となる「アクセスの可視化・具体化」には、既存のWebサイトでは不十分かもしれません。ベンチャーネットでは、匿名ユーザーの中からインサイドセールスの対象を見つけ出すため、マルチエントランス型Webサイトへのリニューアルを推奨しています。
●ICTツール活用
これまで紹介したようなデジタルマーケティングによる販促・集客は、ICTツールの活用が前提です。バーチャル経営においてICTツールは「人材と労働力の不足」を補うだけではなく、新たな付加価値を生み出す起点と位置付けています。特に以下4つのツールは、デジタルマーケティングの実行に欠かせません。
・RPA
・AI-OCR
・CRM
・SFA
高効率で価値の連鎖を生む「自動化」
「人(=固定費)を増やさず売上を伸ばす」ためには、「人とシステムの役割分担」を明確にし、システムの担当分野を可能な限り増やしていくことが重要です。また、システムは「自動化」をゴールとして構築し、積極的に業務廃棄を進めていく必要があります。ベンチャーネットでは、以下4つのソリューションで業務廃棄と自動化を支援しています。
●The AUTO
●Payment Automation
●ABMオートメーション
●SEOオートメーション
2.まとめ
この記事では、バーチャル経営の構成要素と、各カテゴリーで推奨する施策を併せて紹介しました。バーチャル経営は、ベンチャーネットが蓄積してきたノウハウの集大成ともいえる思想であり、経営手法です。終わりのない大手との競争、遅々として進まない企業変革に加え、少子高齢化やコロナ禍といった外的要因に対し、いかに立ち向かい進化するか。バーチャル経営には、このような「中小企業経営者の普遍的な悩み」を解決するヒントが詰め込まれています。次回からは、「人と労働力の本質化」にフォーカスし、各施策の具体的な内容を紹介していきます。