BtoCに比べると、BtoBはSNS活用があまり進んでいません。そもそもBtoBではSNSの良さが発揮されにくいものです。しかし、適切に使用すれば十分に効果は見込めると考えています。そこでバーチャル経営におけるSNS活用の考え方を紹介していきます。
BtoBでは扱いが難しいSNS
近年は、いわゆる「公式アカウントの中の人」のようなSNSアカウントが好評を博しています。公式アカウントは本来、企業もしくは特定のサービスからのオフィシャルなお知らせを拡散するためのツールです。しかし、そこにあえてパーソナルな情報を混ぜ込むことで、消費者との円滑なコミュニケーションを実現している例が増えてきました。
「公」と「私」の混合でファンを増やす
近年は、「専門家としてのオフィシャルな立場」と「”中の人”としてのパーソナルな立場」を混合させたSNSアカウントが人気です。例えば大手電機メーカーの「SHARP」では、Twitter上でスマートフォンや家電の新製品情報を提供しつつ、”中の人”が個人的につぶやくことで人気を集めています。最近では、2021年10月4日に「国際的な電機メーカーの展示会情報」をツイートしたあと、「ODDTAXIおもしろくておもしろかった」という極めて個人的な感想をつぶやいていました。先にツイートした展示会の情報よりも、あとにツイートした個人的なツイートのほうが「リツイート」も「いいね」も多く、閲覧者は”中の人”の個人的な投稿を楽しみにしていることがわかります。
SHARPのアカウントは、「個人」としても親しみを感じさせるアカウントを育成することでSNS運用を成功させた好例と言えるでしょう。このようにBtoC領域では、「頼りになるけど親しみやすい”中の人”」というアカウントが好評を博すことが多いのです。一方、BtoB領域ではこういった成功例はほぼ存在しません。
なぜBtoBでSNS活用が難しいのか
では、なぜBtoBでSNS活用が成功しにくいのかを分析してみましょう。BtoBでは訪問営業をベースにした1:1のクローズドなやり取りが主体であったため、その影響がデジタルにも残っていると考えられます。また、合議体による意思決定を主とする日本企業の場合、SNS上での個人的な発信をビジネスの場に持ち込みにくいのでしょう。BtoCに比べると顧客との関係が濃く、失言や誤情報が取引先に損害を与えてしまう可能性があります。簡単に言えば、炎上に発展した場合の責任とリスクが大きすぎるのです。
こうした事情から、SNSをデジタルマーケティングの中に組み入れていない企業が大半です。形式的にSNSアカウントは開設しているものの、「単なる情報発信媒体」としての役割しかなく、その先の戦略を設けていないのです。これが、BtoB領域でSNS活用が進まない最大の理由ではないでしょうか。
SNSが担う「ソーシャルセリング」
一方で、SNSが持つ認知拡大効果はBtoBでもしっかりと効果を発揮することがわかっています。
SNS利用はビジネスパーソン世代にも広がる
近年のSNSは、すでに「若者のコミュニケーションツール」ではありません。30代より上の層、つまりビジネスシーンで決定権を持つ層の多くが、SNSを積極的に利用しているのです。
特にTwitterは、営業やマーケティングに適したツールです。テキストベースでありながら。URLリンクや動画アップロードにも対応し、リツイートが繰り返されることで瞬時に情報が拡散するため、認知拡大効果は非常に高いと言えるでしょう。こうしたTwitterの特性を利用し、SNSアカウントに営業力を持たせる「ソーシャルセリング」が可能になります。
ソーシャルセリングとは
ソーシャルセリングとは、簡単に言えば「個人がWeb上のツールを使用して見込み客を発掘し、関係を深め、商談や契約につなげる営業手法」です。すでに海外では広く普及している営業手法ですが、日本ではあまり活用されていません。
しかし、ここ3年ほどで日本でもBtoBのソーシャルセリングが広まりつつあります。例えば、あるWebマーケティング企業では、経営のナンバー2が積極的にSNSアカウントを運用し、SNS上で自社のノウハウを公開しました。その結果、大きな反響が得られ、徐々にアカウントのフォロワー数が増加。さらに、ノウハウ公開をきっかけにつながった見込み客から受注を獲得し、数千万円単位の売上が立ったとのことです。
同社ではWeb広告の反応が鈍化していることをふまえ、SNSによるソーシャルセリングを試験的に開始したと述べています。SNSアカウントはほぼ無料で開設・運用できますから、金銭的なリスクはゼロに等しいでしょう。リスクゼロで数千万円の売上につながったのですから、SNSによるソーシャルセリングの効果は侮れません。
このようにSNSを利用する年齢層を踏まえ、SNSが持つ認知拡大効果や見込み客創出効果を上手く活用すれば、BtoBでも一定の効果が見込めるはずなのです。
BtoB向けSNS活用は「動画」との組合せが吉
バーチャル経営でもSNSは積極的に活用すべきだと考えています。ただし、BtoCのように「中の人」を無理に演じる必要はないでしょう。それよりも、次のような事柄に注力すべきです。
SNS+動画で小さくはじめる
SNS上に動画をアップロードすることで、製品・サービスの詳細を効率よく伝えることができます。特に、営業担当による製品・サービス紹介動画などはBtoBでもSNSと相性が良いでしょう。セミナーや展示会のみで公開していたノウハウをSNSにアップすることで、潜在顧客層の耳目を集められます。また、SNSで拡散されたノウハウは、見込み客の記憶や記録(PCやスマートフォンなど)に残り続けるため、タイムラグを経て問合せにつながることもあります。
- デモンストレーション動画
製品・サービスの仕様や強みを、実演をベースとして伝えられるため、コンバージョンにつながりやすいです。 - インタビュー動画
既存顧客に対してインタビューを行い、第三者視点で自社の製品・サービスを語ってもらうことで、実績と信頼性を高める効果があります。 - ブランディング動画
企業の歴史やコンセプト、商品開発のエピソード、技術力の背景などを動画にまとめることで、イメージアップが期待できます。
こうした動画は、質が高ければ非常に優秀な「営業マン」になってくれるでしょう。また、動画配信サイトなどへの誘導はあまり意識せず、SNS上で再生・視聴してもらうことを意識すると、より効果が高まるかもしれません。
SNSの特性に合った動画投稿を心掛ける
主要なSNSをタイプ別に分類すると、次のようになります。
- 交流、拡散型……Twitter、Facebook
- 個別連絡型……LINEなど1:1ベースのチャットアプリ
- 写真型……Instagram
こうしたSNSの特性に合わせ、「デモンストレーション動画はTwitter」「ブランディング動画はInstagram」といった使い分けを心掛けていきましょう。
まとめ
本稿ではSNS活用について解説してきました。SNS活用は最も低コストかつ、小さくはじめられるデジタルマーケティング施策だと思います。BtoCのようにシンプルではないのですが、使い方さえ間違えなければ徐々に成果がでてくるはずです。次回は、「動画」について解説していきます。