インサイドセールスは営業活動の効率化や経費削減、契約率を向上などが得られる施策です。バーチャル経営でもインサイドセールスの活用を推奨しています。なぜなら、前回紹介したABMと組み合わせることで、営業リソースが乏しい企業でも、相性の良い顧客を見つけられるからです。
複数のメリットを生むインサイドセールス
まず、インサイドセールスの概要やメリット、これまでのプッシュ型営業との違いについて紹介します。
米国発の「内勤営業」
インサイドセールスは、米国発祥の営業手法です。日本語では「内勤営業」と呼ばれることもあります。もともとインサイドセールスは、日本よりも圧倒的に広い米国において、移動にかかる時間やコストを節約するために生まれたと言われています。米国では、すでに売上高5億円以上の企業のうちの約3割以上がインサイドセールスを採用しているそうです。
また、米国と欧州全体を合わせると、企業の売上高に占めるインサイドセールスの割合が5割付近にまで達しているという調査結果もあります。日本とはビジネス環境が異なるものの、やはり「時間短縮」「経費削減」は世界共通の課題のようですね。今後は、人手不足対策や営業効率の向上対策などで、日本でもより一般的になっていくと考えられます。
インサイドセールスのメリット
時間短縮と経費削減以外のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- データ分析や顧客管理による効率的な営業活動
- 営業担当者間の情報共有、ナレッジベースの構築による能力の平準化
- 組織的な営業力強化(有望なリードソースへのリソース集中など)
インサイドセールスは、営業部門の「チーム力」を底上げできるというメリットがあります。また、CRMやSFA、MAといったICTツールを用いることから、データの蓄積を営業ノウハウに転化できることも見逃せません。営業部門では「エース」の退社とともにノウハウが失われることがありましたが、インサイドセールスでは属人性をできるだけ低くし、部門全体に営業ノウハウを行き渡らせることができます。
フィールドセールスやテレアポとの違い
以下は、インサイドセールスとテレアポ、フィールドセールスの違いを整理したものです。インサイドセールスと従来のプッシュ型営業の間には、目的・対象・評価指標の3点で違いがあります。
インサイドセールスの実践
実際にインサイドセールスを実践する際には、次の2通りの方法があると考えられます。
ビッグバン的導入
営業活動全体をインサイドセールス化する方法です。対面での接触や客先に足を運ぶ必要のない商材であれば、一気にインサイドセールスを浸透させることも可能でしょう。フィールドセールスにかける時間や経費が削減できるため、すぐに効果が現れることも珍しくありません。ただし、顧客との関係性を重視するBtoBマーケティングの観点から考えると、あまり好ましくない方法とも言えます。
部分的導入(フィールドセールスとの連携を重視)
BtoBの場合は、契約の単価が高く内容も複雑なことが多いため、部分的なインサイドセールス化が適しているかもしれません。また、クロージングをフィールドセールスに引き継ぐことで、顧客とのつながりを維持しやすくなります。
インサイドセールス運用時のポイント
インサイドセールスの運用では、まずKPIを設定していきます。一般的なKPIとしては、「電話数(発信数)」「有効会話数」「アポイント件数」「商談確定数」「契約数」などが挙げられるでしょう。また、リード獲得をインサイドセールス、クロージングをフィールドセールスが担う場合には、双方の商談内容を録音して相互チェックする方法もおすすめです。相互チェックを取り入れることで、インサイドセールス・フィールドセールスを通して、顧客の思考がどう変化していくのかを知ることができるからです。各担当者が顧客の思考を知ることで、それぞれの役割が明確になり、営業プロセスの質が向上していきます。
また、ヒアリング時には、「BANTC情報」を引き出すことに注力しましょう。BANTICとは「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(必要性)」「Timeframe(導入時期)」「Competitor(競合)」の頭文字をとった略語で、案件のセグメンテーションやスコアリングに用いられます。ヒアリングで得られたBANTIC情報は随時CRM・SFA・MAなどに蓄積していき、ナーチャリングやクロージングの材料としていきましょう。
ABMと親和性が高いインサイドセールス
バーチャル経営ではインサイドセールスとABMを同時に進めることを推奨しています。その理由は次のとおりです。
集めるべき情報が共通している
前述したようにインサイドセールスでは、BANTIC情報を収集していきます。このBANTIC情報はABMにおいても非常に重要です。通常、BANTIC情報はリード獲得の時点では集まっておらず、実際の商談を通じて徐々に蓄積されていきます。しかし、インサイドセールスではヒアリングの段階でBANTIC情報を得られるため、実際の商談に入る前に顧客に関する情報をリッチにしておけるのです。ABMは顧客の情報が多ければ多いほどアプローチの質があがっていくため、BANTIC情報の充実は大きなプラスになります。また、仮に商談にまで至らない場合でも、MA・SFA・CRMなどにこれらの情報が蓄積されるため、その後のABMに役立てることができるわけです。
根本の原理が同じである
インサイドセールスもABMには、潜在顧客を「引き込む」という共通点があります。つまり「プル型のアプローチ」ですね。従来のプッシュ型営業とは異なり、「狙いを定めて質の高い情報を提供し、リードにつなげる」という考え方です。したがって、インサイドセールスで得たノウハウはABMにも流用できる可能性が高いでしょう。
使用するツールが共通している
インサイドセールスもABMも、MA・SFA・CRMといったICTツールをフルに活用していきます。使用するツールが同じであれば、それぞれの活動で得たデータを連携させ、新たな知見を生み出しやすくなるでしょう。また、こうしたツールをカスタマイズしながら適切に運用していくことで、ある程度の自動化が可能な点も共通しています。
まとめ
ここでは、インサイドセールスの基礎知識や、ABMとの親和性について解説してきました。ABMとインサイドセールスは全く異なる手法ですが、共通点が多く、相互に利用可能な情報も多いです。営業・マーケティングプロセスの改革に取り組むのであれば、この2つを同時に導入してみても良いでしょう。