営業部門は営業担当者の属人的な知識、スキルで成果が上下しやすいと言われてきました。そのためか、どちらかといえばデジタル化に乗り気ではない企業も散見されます。しかしプッシュ型営業からプル型営業への転換が進む中で、営業部門の業務も「ノウハウの蓄積と展開」の重要性が高まり、デジタル化が進んできました。日本国内の中小企業にも徐々にSFAの活用が広まってきています。
属人性をノウハウに変える「SFA(Salesforce Automation)」
SFAとは、「Salesforce Automation」の略語で、日本語では「営業活動の自動化」と翻訳されます。本来は、業務効率化のための手法を指す言葉です。
SFAは、1990年代に米国で誕生しました。当時の米国では、オートメーションの潮流があり、その一環として営業活動の効率化が叫ばれるようになりました。このような背景の中、シーベル・システムズという企業がSFAをリリースしたと言われています。ただし、SFAはオートメーションの流れの中でもそれほど広まらなかったようです。当時はコンピューターがまだまだ未熟であり、今よりももっとマイナーな存在でした。そのため、コンピューターを使いこなせるほどの知識をもった営業マンが少なかったようです。
しかし、コンピューターの進化と業務効率化・デジタル化が進む中で、徐々にSFAは注目されていきます。今では「セールステック(マーケティング・セールスで使用される技術の総称)」の中でも、抜きんでた存在に成長しました。
SFAの一般的な機能
SFAの一般的な機能としては、次の5つが挙げられます。
案件管理機能
営業案件に関する詳細な情報を保存・管理する機能です。管理項目としては、「相手方企業名」「営業担当者名」「提案中の商品・サービス」「進捗状況」「受注見込みに関する情報(確率・ランク・スコアリングなど)」「受注見込額」などが挙げられます。SFAの持つ機能の中でも特に重要で、管理者が一目で「どの担当者が、いつ、何をしているか」が分かるようになっています。
商談管理機能
案件管理よりもさらに具体的に商談管理を行う機能です。管理項目としては、「商談の相手方(担当者名)」「過去の商談履歴」「商談の目的」「商談時間」「提案者」「決済者」「提案書」「提案金額」「進捗状況」「次回の予定」などがあります。各商談の具体的な内容が記されるため、管理者は受注角度を上げるためのアクションを採りやすくなります。
また、商談管理機能には成績が良い営業担当者の商談プロセスをナレッジとして共有できるという強みもあります。提案書の内容やクロージングのタイミングなどは、担当者ごとに異なるため、実は貴重な情報です。こうした情報を横展開できる点は、既存の営業プロセスには無い強みであり、SFA特有のものと言えるでしょう。
行動管理機能
営業担当者の行動(営業プロセス)を管理する機能です。管理項目としては、「コール数」「アポイント数」「訪問数」「提案した商材の数」「商談の回数」「受注率」などがあります。営業担当者の行動を数値化することで、成績が良い人材とそうではない人材の差が明らかになり、そこから営業プロセスの改善点が明確になっていくでしょう。
売上予測と予実管理機能
売上予測や予実管理を行う機能です。担当者・部署単位で売上を予測できるだけではなく、顧客別・商品別・サービス別などさまざまな断面での予測が可能です。また、予算と実績を常に対比させながら、達成度合いを確認することもできます。
顧客管理機能
「会社名」「所在地」「電話番号」「担当者」「役職」といった顧客に関する情報を管理する機能です。CRMに似た機能ですが、SFAでは名刺管理ツールなどから顧客情報を取り込める点が特長です。
SFAがなぜ中小企業に必要なのか
SFAが大企業が導入しているもの、という認識を持っている方がいます。確かに間違いではありませんが、すでにSFAは中小企業にも広まっており、今後は企業規模に関わらず営業のデジタル化に必須のシステムです。
シンプルだが難しい「営業力の強化」への解決策
一般的な営業力は、「資本力」に比例します。営業部門の場合は「人の数」こそが力です。
裏を返せば、人海戦術を採用することで営業力は強化されるでしょう。しかし、人材採用が難しい中小企業にとっては、最適解とは言えません。そこで、営業担当者ひとりあたりの生産性、付加価値を高める方法を検討してみてください。そのため、大きな資本を持たない企業が営業力を上げるためには、営業担当者の業務をバーチャル化することで商談化率・成約率を高めていく必要があるのです。SFAで「営業部門の業務をデジタルに数値化」していくことで、いつ・誰が・何をすべきなのかが徐々に見えてきます。無駄のない営業プロセスが部門全体に広まれば、これまでよりも効率の良い営業ができるはずです。
生産性向上とデジタル化をけん引
バーチャル経営では、生産性向上のために「雑務の自動化(仕事の廃棄)」が必要だと考えています。営業部門では、各種報告書やプレゼン資料など、さまざまな雑務が存在していますよね。こうした雑務は可能な限り自動化(廃棄)していき、SFAに集約してしまうのです。
また、既存人材が持つ経験知や暗黙知がSFA上で定量的な情報に置き換えられ、ナレッジ化が進みます。SFAに集められた情報が、営業部門全体のパフォーマンス向上に役立つわけです。
さらに、ABMの実践でもSFAが力を発揮します。ABMは企業単位で「相性の良さそうな相手」とのマッチングを行うマーケティング手法です。ABMについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
MA、CRMとの融合が進むSFA
SFAはCRMの普及とともに広まったこともあり、CRMとの同時運用を前提として造られていることが多いです。また、近年は、マーケティング・セールス・サポートのシームレスな連携のために、MA・SFA・CRMのセット運用が一般的になってきました。MA(リード情報)→SFA(商談化)→CRM(顧客情報)というデータサイクルが定着しつつあるのです。
しかし、営業部門のためだけに3つのシステムを導入することは、コストの問題で難しい場合もあります。そのため、SFAが持つ機能を効率よく使いこなす運用スキルが求められるのです。
ベンチャーネットでは、Salesforce・Netsuite・Eloquaの運用課題を丸ごと解決する運用サービス「デジトラ」を提供しています。デジトラでは、「SFAを使いこなしたいが、仕様を知る人間がいない」「営業担当者にSFAの使い方をレクチャーしてくれる人材を探している」といった課題を解決できるサービスです。また、CRMやMAを導入済みであれば、連携に関するアドバイスやカスタマイズ、パラメータ設定なども対応可能です。
まとめ
ここでは、SFAの基礎知識と中小企業に必要な理由などを紹介してきまいた。SFAは単体でも十分に効果を発揮します。しかし、マーケティング・セールスの連動を考慮すると、ゆくゆくはCRMやMAとのセット運用を目指していきたいところです。次回は「BtoB EC」について解説します。