DXがトレンドになり早3年以上が経過しました。DXは、コロナ禍の影響を受けて、より実践的な経営改革へと変化しつつあります。ここでは、中小企業がDXを実践に移すための方法を、デジタイゼーション・デジタライゼーションも含めて解説していきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)へと至るための3ステップ
まずDXに至るためのステップを確認しておきましょう。DXへ至るためのステップは、さまざまな切り口から定義することができますが、ここでは「デジタル化」を軸として、下記3ステップを紹介します。
STEP1:デジタイゼーション
デジタイゼーションとは、簡単に言えば「アナログデータのデジタル化」です。紙文化からの脱却やローカル端末に保管していたデータの一元化などが対象になります。中小企業におけるIT化やデジタル化は、大半がこのデジタイゼーションに該当します。
例えば、エクセルへの入力作業をRPAで自動化したり、紙資料からPCへの入力をOCRで代行したりといったケースですね。これらは、ごく単純なルーチンワークでありながら、日常的に発生するため、生産性を押し下げる原因になっていることが多いのです。
デジタイゼーションによって単純な手作業の大半が効率化されれば、コア業務へのリソース投下量が増えるため、必然的に生産性を押し上げることができます。
STEP2:デジタライゼーション
デジタライゼーションとは、デジタイゼーションをさらに高度化し、デジタル技術を活用しビジネスプロセス全体の効率化を図るものです。具体的には「RPAによる高度な業務の自動化」「データドリブンな意思決定の仕組みの構築」「バックオフィスとフロントオフィスを連動させたCXの向上」などが該当するでしょう。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは「連携」や「付加価値の創出」が含まれているか否かです。デジタイゼーションは業務単体、部署単体でのデジタル化を指すことが多いのですが、デジタイゼーションではビジネスプロセス全体の効率化、新たなビジネスモデルの構築などを目的とします。
DXとして取り上げられる事例の中には、実はデジタライゼーションを指しているものが多くあります。しかし、デジタライゼーションはDXを目指すための前提であり、DXの達成にはもう一段上の施策が必要です。
STEP3:DX(デジタルトランスフォーメーション)
DXの定義として代表的なものは経済産業省の定義と、ウメオ大学の定義の2つです。以下はそれぞれの定義を要約したものです。
経済産業省によるDXの定義
- 組織と業務全体のデジタル化、顧客起点の価値創出のための変革
- 単なるレガシーシステムの刷新ではなく、事業環境の変化へ迅速に適応する能力を身につけること
- 固定観念を捨て、レガシー企業文化から脱却すること
ウメオ大学によるDXの定義
デジタル技術が人間の生活のあらゆる側面に引き起こす、あるいは影響を与える変化
2022年時点では、経済産業省による定義が実情に近いと言えます。また、より具体的な定義としては、次のような内容も含まれるでしょう。
組織変革としてのDX
- 業務効率と生産性の向上を目指し、ムリ・ムダ・ムラを排除する
- 従業員のモチベーションやワークライフバランスを考慮しつつ、新しい企業文化への脱却を図る
ビジネスモデル変革としてのDX
- データを武器と捉え、意思決定スピードの向上や製品、サービス開発に活かす
- 顧客接点の在り方を捉えなおし、ICTによってCS(顧客満足度)とCX(顧客体験)の向上を目指す
DXは企業風土や改革に強い体質への革新を意味するため、デジタイゼーションやデジタライゼーションとは本質的に違うものです。ただし、デジタイゼーションとデジタライゼーションを実現することで、DXへの下地が整うことは間違いありません。中小企業の場合、デジタイゼーションの途中でプロジェクトが頓挫するケースも少なくないため、まずはデジタイゼーションを経て、デジタライゼーションをゴールとする方法も検討すべきでしょう。
事例から見える「中小企業がDXを成功させるためのヒント」
では、実際の事例から中小企業がDXを成功させるためのヒントを抽出していきましょう。
顧客体験にフォーカスし、バックオフィスを変える
米オラクル社では、CX(顧客体験)の向上にフォーカスし、そこからバックオフィスを担うERPなどへDXを浸透させる方法を提唱しています。具体的には「ユニファイドプラットフォーム」という考え方で、マーケティング・セールス・ECなどのフロントシステムを、バックオフィスのシステム(ERP、SCMなど)と連動させ、顧客により正確でリアルタイム性のある情報を提供するというもの。
この方法は、顧客の瞬間的な欲求・行動である「マイクロモーメント」に対応できる点が強みです。顧客ニーズが多様化した今、CX向上のためには「瞬間的な顧客行動(=マイクロモーメント)をERPに取り込んで製品・サービスに反映させ、実際の店舗にいるかのような比較検討の場を提供し、意思決定を促す」という仕組みが必要だと考えられています。
さらにマイクロモーメントに対応するために、顧客接点を徹底的にカスタマイズする「ハイパーパーソナライゼーション」も重視されています。要は、「CX向上のために、徹底的に連動してリアルタイム性を高め、顧客ごとにカスタマイズされたアプローチを行う」ということですね。
マーケティング、セールスからイノベーションを進める
これに対し、国内のある企業では、マーケティング(MA)からDXを開始してセールス(SFA)へつなげ、全体的なDXを達成したという事例もあります。
この事例では、まずDXを「技術」「ビジネスプロセス」「マーケティング」「セールス」「マネジメント」全体にわたるものと捉え、最初の突破口として「マーケティングイノベーション」を選んでいます。
具体的には、マーケティングのメインシステムであるMAに「Pardot」を採用し、そこからセールスのメインシステムであるSalesforceの導入につなげました。また、ICT活用がイノベーションの大前提と捉え、ICTを基盤にしたビジネスモデルの構築を徹底したとのこと。
この試みが功を奏し、マーケティングとセールスをひとつながりのシステムで完結させ、DXの下地ができあがったとのことです。
「攻め」の部分から着手が肝
この2つの事例に共通しているのは、「攻め」の部分からDXを開始しているという点です。一般的にDXは「組織改革」「バックオフィスのデジタル化」と誤認されることがあり、どうしても「守り」の部分から着手しがちです。
バックオフィスからの着手は決して間違いではないのですが、大手企業のように資本の余力を持たない中小企業の場合は、効果が見えやすい攻めの部分(顧客体験(CX)、マーケティング、セールス)を起点としたほうが、スムーズに進む場合も多いことを覚えておいてください。
ベンチャーネットが提唱する「中小企業DX」
ベンチャーネットが考える中小企業DXも、基本的には前述の2つの例と同じです。マーケティング・セールスに突破口を定め、そこからDXを浸透させるべきだと考えています。
ベンチャーネットでは下記のように複数のDX関連ツール・サービスを提供中です。このICTツール・サービスを活用し、デジタイゼーションとデジタライゼーションを進め、DXへの突破口とすることが可能です。
デジタイゼーションに活用できるツール、サービス
- タスク自動化「WinActor」
- 決済、集金自動化「Payment Automation」
デジタライゼーション
- ABM自動化、BtoB EC構築「ABM AUTOMATION」
- SEO対策、コンテンツ作成自動化「SEO AUTOMATION」
- デジタルマーケティング実行支援「デジカツ」
- MA、SFA、CRM運用支援「デジトラ」
まとめ
ここでは、中小企業がDXに至るためのヒントについて解説してきました。ベンチャーネットでは、マーケティング・セールス領域のDXをサポートするツール、サービスを豊富に取り揃えています。ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。