バーチャル経営アライアンス編~中小企業の新規事業こそ「アライアンス」に目を向けよう

中小企業が新規事業を単独で成功させるのは並大抵のことではありません。そこで他社と共同で事業を行う方法に目を向けてみましょう。他社との協力は、事業提携や資本提携などが挙げられますが、バーチャル経営ではこれらを包括的にとらえて「アライアンス」という呼称にまとめています。アライアンスは、日本ではまだまだ浸透していない考え方ですが、中小企業がイノベーションを起こし、新規事業を軌道に乗せるための有効な手立てです。ここでは、アライアンスの概念や構成要素について解説します。

目次

雇用でも縁故でもない同盟「アライアンス」

まず、一般論としてのアライアンスを簡単におさらいしておきましょう。

アライアンスとは

アライアンスは、日本語で同盟や提携などと翻訳されますが、その意味は使われるシーンによって微妙に変わっているのが実情です。日本国内でアライアンスと言う場合は、その大半が企業同士の「提携」を表しています。したがって、業務提携や資本提携がアライアンスとされることが多いです。しかし、本来アライアンスという考え方は、企業対企業のみならず、個人対個人、個人対企業にも適用できるものです。また、この点については、後程詳しく解説します。

アライアンスのメリット

アライアンスを組むことによるメリットとしては、以下2つが挙げられます。

事業基盤の強化

アライアンスには「資本提携」や「技術提携」「業務提携」などが含まれますが、これらはいずれも企業が持つリソースを集約し、事業のための基盤を強化することにつながります。同じように企業体力を強化する方法としてM&Aがありますが、こちらは経営権の移転が伴うため企業の独立性を保つことができません。企業が経営権を保持し続けたまま事業基盤を強化するためには、アライアンスが最適だと考えられます。

ノウハウの獲得

さまざまな提携や人事交流によって、ノウハウが蓄積されていきます。特に異業種、異業界の企業とのアライアンスは、市場動向や販路、営業ノウハウなども蓄積されるため、新規事業の成功率を上げることが可能です。

アライアンスの根本的な考え方

アライアンスのメリットは「良きパートナー」と巡り合うことによって最大化されます。そこで、良きパートナーに巡り合うための心構えとしてアライアンスの本質的な内容を理解しておきましょう。

書籍「ALLIANCE」では、シリコンバレーにおける企業と人との関係性を以下のように紹介しています。

雇用を「アライアンス」だと考えてみよう。自立したプレーヤー同士が互いにメリットを得ようと、期間を明確に定めて結ぶ提携関係である。マネジャーと社員がお互いを信頼して相手に時間と労力を投入し、結果的に強いビジネスと優れたキャリアを手に入れる。「アライアンス」は、そのために必要な枠組みなのだ。

リード・ホフマン; ベン・カスノーカ; クリス・イェ. ALLIANCE アライアンス (p.26). ダイヤモンド社. Kindle 版

企業同士の付き合いにでも同じことが言えると思います。つまり、アライアンスとは「異なる背景を持つ企業同士が、同一の目的に向かい、決まった期間、特定の条件下で同盟を組む」ことなのです。また、アライアンスが成立して何らかの成果を生み出すことで「仕事を依頼し、報酬を支払う」「労働やモノを提供し、対価をもらう」という取引重視の関係から、「双方の価値を高めあう」という関係性に昇華することも可能です。

日本では短期的、期間限定といった意味合いが強いのですが、本来のアライアンスは長期的な関係の強化に軸足を置くと考えてください。たとえ提携が解消されたとしても、そこで築いた関係や人脈、ノウハウなどはまた別のアライアンスを形成し、新たな成功につなげることができるでしょう。

「バーチャル社員」もアライアンスの一形態

少し本筋から外れますが、バーチャル経営が提唱しているバーチャル社員も、アライアンスの一形態だと考えています。バーチャル社員とは「組織・雇用・勤務形態に依らず、仕事の遂行に必要な能力を持った本質的な人材」です。また、「必要なときに」「必要なスキルを」提供してもらいつつ、長期的な関係の構築も前提としているため、アライアンスの概念と一致します。

バーチャル社員については、この記事弊社発行の書籍でも詳しく紹介しています。

同族企業とアライアンスの共通点

こうしたアライアンスの概念が、果たして日本企業に馴染むのか疑問に感じる方もいるでしょう。しかし、日本企業の大半を占める中小企業、さらには中小企業の9割以上を占める同族企業には、アライアンスとの共通点が多いのです。

共通点1:帰属意識が強い

帝国データバンクの調査によれば、日本国内で活動中の企業の96.3%が同族企業なのだそうです。※1同族企業の強みは「社員が自分事として事業に参画する」という点だと思います。
アライアンスも同様に、資本や人材、技術を持ち寄ることで一体感や帰属意識を高め、事業の成功を目指すものです。強い帰属意識の中で事業を行ってきた同族企業であれば、アライアンスに馴染みやすいと考えられます。

帰属意識は、一体感を醸成することに加え、義務感や安心感なども高めます。その結果、仕事の質が底上げされ、事業の成功につながるという好循環が生まれるのです。新規事業は困難の連続であり、限られた人員のすべてが「自分事」として事業に取り組まなければ成功は望めません。

共通点2:密な取引と人脈強化

アライアンスは「ネットワーク構築」が可能なこともメリットです。同族企業も非同族企業に比べるとインターロッキング(取締役会メンバーを送りあうこと)が盛んであり、ネットワーク構築に重きを置く傾向があります。また、インターロッキングが解消されたあともつながりが続く傾向にあることから、アライアンスの概念と共通した考え方があると言えるでしょう。

※1参考:

帝国データバンク 同族企業分析
https://www.tdb.co.jp/bigdata/articles/pdf/tradingnew01.pdf

中小企業の新規事業にこそアライアンスを

このように、アライアンスには極めて日本的な要素が含まれています。日本の中小企業は同族企業同士が同盟を組んで事業を進めることが間々あり、アライアンスとの親和性が高いと考えられます。

また、BMCの中にもKPやKRがあり、この部分はアライアンスで満たされる可能性が高いのです。

KP(パートナー:Key Partners)

ビジネスモデルを構築するうえで必要となる「取引先」や、取引先とのネットワーク。

KR(リソース:Key Resources)

価値を提供するために必要なリソース、資産。生産設備のような物理的資産以外にも、プログラムやWebコンテンツ、顧客データのような無形資産、流通システムなども含まれる。

これらのことから、中小企業が新規事業の成功率を上げるには、アライアンスありきでビジネスモデルを構築するという方法が浮かび上がります。バーチャル経営でもアライアンスは積極的に活用すべきと考えており、今後はアライアンスによる新規事業にも着手する予定です。

まとめ

ここでは、アライアンスの概念やメリット、日本の中小企業との親和性について解説してきました。中小企業のトップ同士がアライアンスで結びつくことで、意思決定のスピードを最適化し、事業の成功率を上げることができます。次回は、「新規事業のためのアライアンス」について解説します。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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