高利益の知的創造企業への道のり⑤~AI活用の思考 AIはなぜ必要なのか

前回は未来型ERPとしてAIと融合したERPを紹介しました。続く今回は、AIを実務に組み込み、効率化を促すため理由を整理していきます。
AIはすでに日常業務の中にも入り込もうとしています。しかし、AI活用がなぜ必要なのか、また、AI活用がもたらす具体的な効能は何なのかという点を理解している方は少ないように思います。
バーチャル経営の観点でいえば、AI活用は「必然」です。これは未来型ERPがAIとの融合を進めていることからも明らかです。ではなぜ必然なのかでしょうか。今回はこの点を深堀りし、AI活用の意義を明らかにしていきます。

目次

AI活用は時代の必然である

AIがバズワードになったのは2010年代半ば。2006年から続いていた第三次AIブームの中で「ディープラーニング」がAI技術のブレイクスルーとなりました。
それから早10年以上が経過し、Chat GPTに代表される生成AI(ジェネレーティブAI)の台頭によってAIは非常に身近な存在になっています。
こうした流れから「結局AIも技術革新で広まったのか」と考える人が多いと思います。
たしかに間違いではないのですが、弊社の考え方は少し違います。
AI活用が急速に広まったのは以下2つの理由からです。

AIを中心に産業同士の融合が進んでいるから

現在は産業構造が大きく変わっている最中です。どの業界でも20世紀のプレイヤーと21世紀のプレイヤーは大きく異なります。また、業界同士の「壁」や「層」がなくなり、各産業のプレイヤーが入り乱れています。
このような状況において、業界ごとに分かれていた技術分野が融合し、新しい技術が生まれ、その一部にAIが深くかかわっているのです。
前回の記事で紹介した未来型ERPもその典型ですね。本来ERPは、「情報整理と可視化」に特化した仕組みでしたが、AIとの融合でよりアクティブな機能を有するようになっています。現在では、CRMやSFAと壁が徐々に薄くなっており、その中心にAIが鎮座しているような状況です。つまり、「AIをどう使うか」というよりも「AIありきでどう作るか」という時代になっていて、これがAI活用の必然性につながっています。

仕事の方法が急速に変わっているから

また業界の壁が徐々に薄くなることで「今までは視野に入っていなかったプレイヤー」と競う必要がでてきます。これまでの方法が通用しなくなってきますから、ビジネスモデルも変えなくてはなりません。
これに引きずられるように企業内部では「仕事のやり方」自体が急速に変わっていきます。
単なる効率化だけでは競争に勝てないので、「付加価値自体を生み出す」「可能性を探る」といった業務に軸足が置かれるようになってきました。
こういった業務にAIが活用されており、ツールやシステムというよりは「プロセスの一部」になっています。

仕事の中でAI活用が必然化する理由

ここで一段ブレイクダウンして、社内で日々行っている業務目線で「AIが必然化した理由」を掘り下げて見たいと思います。

「正解を確率的に探る」業務が増えるから

いま企業に必要なのは「正解を割り出す」ことではなく、「正解を確率的に探る」ことです。
なぜこのような業務が必要になるかといえば、効率化だけでは価値が生まれない時代だからです。これまでの効率化は、「人間による業務遂行」から「電子計算機による業務遂行」によって、時間短縮や人的リソースの節約を実現し、それを「価値」として認識していました。

しかし、この価値はコモディティ化するので差別化につながりません。どの会社もITによる自動化はすでに着手済みだからです。
これから必要なのは「未知」を探り、思考と試行によって大きな付加価値を生み出すこと。
「高付加価値経営」の根底には、未知を当たり前のように扱い、付加価値を生み出す仕組みがなくてはなりません。
ここで必要になるのは「人間の思考→AIの思考→人間の試行」という連携です。
AI活用では、「正解の可能性をもつ答えを抽出する」部分をAIが担っています。
これに対して人間側は、

・AIが創出した「答えの候補」をチェックして選択する思考
・「AIに思考させるべき課題は何か」「優先順位は」などの思考

を持つことが非常に重要になってきます。
このようにAIと人間の思考の融合が、新たな付加価値を生み出す時代が近づいています。

意思決定者がAI活用を推進する意味

さらに経営者の視点からもAI活用の必然が見えてきます。

単独での分析には限界があるから

経営者の仕事は、「意思決定」です。意思決定とは「明日の予測」でもあります。
経済は常に変動します。市場も同じです。しかし、変動し続ける中を何とか生き残り、成長につなげるのが経営者の役割。したがって、変動に対する「予測」を行うわけです。予測は分析から生まれます。
分析方法はさまざまですが、汎用性の高いものとしては底流分析と趨勢分析があるでしょう。2つの分析方法の詳細は割愛しますが、底流分析は「今起こっていることをミクロな視点」から分析して将来を予測します。これに対して趨勢分析は「過去のデータを参考にしたマクロな視点」での予測です。
しかし、どちらも単独では使えず、常に2つの視点が必要です。また、当然のことながら「確率」を探っていくことになるため、確定的な答えは見つかりません。
現代はデータがあふれており、人間が単独で予測できるには余りにも難しい時代です。
AIによってさまざまな分析手法を用い「起こりうる可能性の探索」を行うことで、意思決定の精度が上がると考えられます。

イノベーション思考の「たたき台」として最適だから

DXがバズワード化して久しいですが、DXで最も難しいのは「意識改革」だと思います。
つまり「変化に対する抵抗」をいかにおさえ、変化を当たり前の状態にするかです。
変化が日常にならなければ、イノベーションは怒らず、企業は成長しません。

したがって、経営者は「変化が日常であること」を社員全員が受け入れるような企業風土を作るべきなのです。
では変化を日常とするにはどうすれば良いでしょうか。バーチャル経営では「未知を身近におくこと」がその近道だと考えています。未知を身近におくことで不安が消え、変化を受け入れることが容易になります。

AIはまだまだ多くの人にとって「未知」です。一方で、バズ的に急速な普及が始まったことで身近な存在になりました。現状で「身近で」「生活を侵さず」「未知なもの」として、AIは非常によくできた存在です。
社内にAI活用を根付かせることで、「未知を受け入れ、イノベーションにつなげる風土」が出来上がるかもしれません。

AI×Netsuiteで社内にAI活用を根付かせる

・社員レベルでは「正解の可能性を探る仕事(=付加価値が大きな仕事)」が増えたことでAI活用が必須になっている。また、AIに投入する課題に対する思考、AIが示した選択肢を選ぶための思考が重要である。

・経営者レベルでは「分析の限界」「変化が当たり前になる風土づくり」の2点でAI活用が役立つ。

以上のことを踏まえて、啓江社はAI活用を根付かせるための現実的な選択肢を見つけていかなくてはなりません。バーチャル経営では、クラウドERPであるNetsuiteとAIの組み合わせを推奨しています。

前回の記事でも紹介したように、未来型ERPは対話型AIの搭載によって「入力」「検索」「チェック」の自動化を進めています。Netsuiteでも、「NetSuite Text Enhance(テキスト生成用AI)」、「Planning and Budgeting(意思決定サポート用AI)」などの機能が実装されています。

こうしたAI関連機能は、「正解」を提示するものではありません。しかし、「正解につながる可能性(材料)」は非常に素早く、大量に出力できます。

今我々がやるべきことは出力される可能性を選択する目をもつこと、つまり「目利き力の強化」なのです。また、「AIが効率的に動くための仕組み(業務フロー)」を考えることにも慣れていかなくてはなりません。
そのためにも常にAIがある環境を作り、その中で日々の業務を回していくことが大切です。

まとめ

今回は、高付加価値経営に欠かせないAI活用の必然性について解説しました。AIは、本質が見逃されやすい技術だと思います。AIの本質とは「自動化」でも「効率化」でもなく、「正解の可能性を出力する」という点です。
現状は業務効率化に役立つレベルに過ぎませんが、近い将来、確実に意思決定層の業務にも進出してくるでしょう。NetsuiteのようにAI機能を盛り込んだERPを今から使い慣れておくことをおすすめします。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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