2020年は新型コロナ対策として、さまざまな給付金が支給されました。しかし、事業者向けの給付金として最も耳目を集めた「持続化給付金」は、2020年度いっぱいで終了となります。これを受けて2021年は「持続化給付金の後継制度」と言われる「事業再構築補助金」が開始されることをご存じでしょうか。ここでは、事業再構築補助金の概要・趣旨とともに、支給対象に成り得る具体例を紹介します。
2021年コロナ禍対策の目玉!「事業再構築補助金」とは?
事業再構築補助金は中小企業庁によって実施される事業者向けの補助金事業です。「再構築」と銘打っているものの、実際には「事業のたてなおし」だけを対象とするわけではありません。その実態は、「新規事業の創出・既存事業の改革・既存事業からの撤退」のすべてが対象となる超大型の補助金です。
また、人件費以外のほぼすべての費用が対象になるため、企業の経営層からにわかに注目されています。当然、DX対応などデジタルシフト・オンラインシフトへの対応も含まれるでしょう。そこで、事業再構築補助金の概要を整理してみます。
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金の正式名称は「中小企業等事業再構築促進事業」であり、持続化給付金の後継制度とみなされています。
その目的は「ポストコロナ、ウィズコロナにおける中小企業の事業再構築支援」とされており、対象事業は「新規事業への進出、新分野展開、業態転換、事業及び業種転換、規模拡大、再編、撤退など」となる予定です。
予算総額は2021年2月時点(令和2年第三次補正予算案額)で1兆1485億円。持続化給付金のように5兆円規模とはいかないまでも、中堅・中小企業向けの支援策としてはかなり大型な部類に入ると言って良いでしょう。
事業再構築補助金の対象業種は2021年2/1時点で未定です。ただし、中小企業庁が公表しているWebパンフレットによれば、「飲食」「製造」「運輸」「サービス」などほぼすべての業種への適用を予定しているとのことです。
事業再構築補助金の要件の紹介
以下は、中小企業庁のWebパンフレットより抜粋した「補助対象の条件」「金額」などです。
以下3要件全てを満たす場合に審査可能
- 申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
- 事業計画を認定支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。
金額
中小企業(中小企業基本法の定義に準ずる) | |
---|---|
通常枠 | 補助額 100万円~6,000万円 補助率 2/3 |
卒業枠(※1) | 補助額 6,000万円超~1億円 補助率 2/3 ※卒業枠は400社限定 |
※1 卒業枠:計画期間内に①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより資本金または従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠
中堅企業 | |
---|---|
通常枠 | 補助額 100万円~8,000万円 補助率 1/2 (4,000万円超は1/3) |
グローバルV字回復枠(※2) | 補助額 8,000万円超~1億円 補助率 1/2 グローバルV字枠は100社限定 |
※2 グローバルV字回復枠:①直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業。②補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成すること。③グローバル展開を果たす事業であること。
補助対象経費
建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)等
出典:中小企業庁
持続化給付金と事業再構築補助金の違い
以上の要件から、持続化給付金と事業再構築補助金の違いを明確にしてみたいと思います。
持続化給付金は「補填」、事業再構築補助金は「成長への投資補助」
持続化給付金は「売上減少分の補填」が中心であり、いわば「救済策」です。一方の事業再構築補助金は「成長に向けた投資補助」の側面が強い施策と言えます。
要件は持続化給付金が「前年同月比で売上5割減」であったのに対し、事業再構築補助金は「直近6カ月のうち、任意の3カ月合計がコロナ禍前に比べて10%減」となっており、要件だけを見ると緩和されているように感じます。
ただし、事業再構築補助金は「付加価値額の増加」が求められることに注意が必要です。要件を見ると「補助終了後3~5年で付加価値額が年率3%以上増加」という記載があり、中期経営計画において堅実な成長曲線を描くことが求められます。
人件費以外であれば何にでも適用
補助対象経費を見ると、人件費以外のほぼすべての費用が対象となっていることがわかります。持続化給付金は、単純に売上の減少分から支給額を決定していましたが、事業再構築補助金は「事業の動き」に応じて、きめ細かく補助を提供する考えのようです。
特に特徴的なのは、建物関連の改修費用も対象となっている点。これは事業拡張、転換、撤退など幅広い事業の動きに対応していることの現れです。
今後、日本企業の大半が意識せざるを得ない「DX(デジタルトランスフォーメーション)対応」についての費用も、補助対象になることはほぼ間違いないでしょう。DX対応の要諦は付加価値と生産性の向上を目的とした、デジタル化・事業改革です。これは、今回の事業再構築補助金の要旨と一致しており、新規事業の進出・新分野展開・業態や業種転換、規模拡大、再編に該当すればデジタル対応も当然含まれると考えられます。
「認定支援機関」との連携が必要
事業再構築補助金の支給対象となるためには、経済産業省が公表する「事業再構築指針」にそった事業計画を「認定支援機関」とともに策定し、審査を通過する必要があります。
また、すでに仕掛中の案件・プロジェクトが補助対象になるか否かは決定されていません。このあたりは、今後の状況を注視していく必要があるでしょう。
いずれにせよ、2021年の企業向け支援としてはナンバー1の施策であり、DXを含めた事業改革を低コストで進める絶好の機会といえます。
事業再構築補助金の支給対象となるDX対応の具体例
最後に、DX対応の中で事業再構築補助金の対象になると想定される施策を具体的に紹介します。
SFA、MA、CRM導入後の運用改善
SFAやMA、CRMといった企業向けパッケージソリューションを導入することで、新規事業の開始・変革が起こなれる場合は、導入費用も補助対象となるでしょう。また、すでに導入済みの場合でも、大幅に運用方法の改善などで事業変革を行う場合は、補助の対象になると思われます。例えば、MAとCRMを連携させ、集客やキャンペーンを一部自動化するような施策では、システム購入費や外注費が補助対象となりそうです。
ベンチャーネットでは、SFA・MA・CRMなどの運用改善を担う専門チームサービス「デジトラ」を提供しています。
オウンドメディアの再構築
ブランディングや認知拡大の一環として、オウンドメディアを大規模に再構築するようなケースも補助対象になると考えられます。具体的には、従来型のWebサイト(階層構造型Webサイト)から複数の着地点を持つ新しいWebサイト(マルチエントランス型Webサイト)へのリニューアルなどが想定できます。
ベンチャーネットでは、マルチエントランス型Webサイトを想定したBtoB向けWebサイトリニューアルサービス「No.1戦略ウェブサイトサービス」を提供しています。
SEO対策
新規事業などにかかる広告宣伝・販促としてSEO対策も補助対象になりそうです。ベンチャーネットでもBtoB領域に特化したSEO対策サービスとして「No.1 SEO」を提供中です。
デジタルマーケティング全般
中堅・中小企業の成長戦略には、デジタルマーケティングが欠かせない時代です。デジタルマーケティングはITツールを駆使し、小さいコストで大きなリターンを狙えるほか、「欲しい顧客」へダイレクトにアプローチする効果があります。これらデジタルマーケティング全般にかかる費用も、広告宣伝費や販売促進費、外注費として補助対象になるかもしれません。
ベンチャーネットでも、デジタルマーケティングを担う専門サービスとして「デジカツ」の提供を開始しました。
まとめ
本稿では、2021年の企業向けコロナ対策「事業再構築補助金」を解説しながら、補助対象と成り得るDX施策を紹介してきました。弊社では、補助対象になりうるサービスの提供のみならず、認定支援機関の紹介も可能です。補助金を有効活用したDX対応を検討中であれば、ぜひお気軽にお問合せください。