バーチャル経営における集客・販促は「デジタルマーケティング」が主軸です。特にBtoB領域の特性を踏まえた「BtoBデジタルマーケティング」は、中小企業がぜひとも活用すべき手法のひとつと言えるでしょう。ここからは、前回までに紹介した「BtoBマーケティング」を基礎とした、デジタルマーケティングについて解説していきます。
個の時代に台頭する「デジタルマーケティング」
ネット社会の成熟で、デジタルマーケティングがより一般的になってきました。今後は中小企業にとってデジタルマーケティングこそが集客・販促の中心になると言っても過言ではありません。そこで、まずデジタルマーケティングの全体像を理解しておきましょう。
デジタルマーケティングとは?
デジタルマーケティングとは「複数のチャネル・タッチポイントを活用して顧客行動をリアルタイムに収集・分析し、売れる仕組みを作ること」です。ここで言うチャネルとは、Eメール・Webサイト・SNS・アプリなど情報がやり取りされる場所(媒体)を指します。また、タッチポイントとは「チャネルで使用されるコンテンツ」と考えてください。
デジタルマーケティングでは、これら複数のチャネル・タッチポイントを連動させ、顧客行動を精密・迅速に捉えていきます。こうして蓄積したデータを活用しながら、販促・集客を行い、顧客満足度や収益力の向上につなげていくわけです。
ネット社会では、顧客が自ら「リサーチ・比較・検討・決定」という購買プロセスのほぼすべてを「単独で」行うことができます。したがって、売り手側は買い手側とのマッチングを意識した、具体性のある情報発信を心掛けたいところです。
なぜデジタルマーケティングなのか?
デジタルマーケティングが重視される理由としては、「ニーズの多様化」「ツールと環境の成熟」「コロナ禍によるオンラインシフト」の3つが挙げられます。
マスマーケティングによる後半で画一的な情報発信は、知名度や認知度の向上には絶大な効果をもたらすものの、「優良顧客と効率よくつながる」という点ではコストパフォーマンスが良いとは言えません。近年はBtoBでもニーズが多様化しており、自社の業務プロセスにマッチしたサービスを探す企業が増えています。
また、デジタルマーケティングに使用するツール(MA:マーケティングオートメーションなど)が急速に普及し、非IT人材を有しない企業でも使いやすくなってきています。こうした状況をコロナ禍によるオンラインシフト(オフラインの商取引をオンラインに移行する流れ)が後押ししているのが実情です。
マスマーケティングとデジタルマーケティングの違い
デジタルマーケティングへの理解度を深めるために、マスマーケティングとの違いを比較してみましょう。
デジタルマーケティングは、ターゲットやペルソナの細分化から始まり、さらにペルソナを起点としてカスタマージャーニーを作成するなど、マスマーケティングよりも具体的かつ精密に「顧客像」を想定します。また、成果は「リード獲得」「コンバージョン(問合せ)」などで、認知拡大を最優先としないこともあります。さらに数万円~数十万円レベルの少額から開始できることも特徴です。
一方マスマーケティングは、少し雑な物言いをすれば「画一的で大艦巨砲主義的」です。ターゲットは設定するものの、媒体が持つ宣伝効果があまりにも大きいために、ターゲット以外にも到達するという特徴があります。そのため、認知拡大効果が極めて高く「宣伝しているから安心」「広告で見かけたから買う」といった横並び主義的な感情を喚起させる点が強みと言えるでしょう。成果は「認知拡大」「ブランディング」などですが、予算と成果が比例しにくい場合が多いかもしれません。
中小企業の攻めを担う「BtoBデジタルマーケティング」
デジタルマーケティングをBtoBに最適化させた施策が「BtoBデジタルマーケティング」です。BtoBデジタルマーケティングでは、SEOやデジタル広告・オウンドメディア・Webマーケティングはもとより、MAやSFAといった企業向けITソリューションとの連動によって、商談・受注増・LTV増大を目指していきます。下記は、BtoBデジタルマーケティングの流れを表した図です。
①は、既存のオウンドメディアやコーポレートサイト、ランディングページなどの弱点が無いかを確認する工程です。この工程で見つかった「穴」を集中的にメンテナンスしていくことでコンバージョン率を上げていきます。
②コンバージョン率が一定以上になった段階で認知拡大施策を開始し、さらに③と④でセールスとの連携や改善、⑤でLTV上昇を狙うという流れになります。
一般的には、まず①と②を集中的に行うのが良いでしょう。この2つのフェーズでは、さまざまなツール・手法を駆使するため、まずはこれらの扱いに慣れていくことが大切です。
バーチャル経営におけるデジタルマーケティングの構成要素
バーチャル経営においては、デジタルマーケティングで下記のようなツール・手法を駆使していきます。本章ではこれら個別のツール・手法について具体的に解説していく予定です。
コンテンツマーケティング
コンテンツ(=内容を伴う情報の塊)を駆使してマーケティングを実行し、売れる仕組みを作り上げる手法です。潜在顧客のニーズやインサイトを想定したコンテンツを配信することでリード獲得につなげ、最終的には見込み客や優良顧客になってもらうことがゴールとなります。バーチャル経営では、リード獲得につながりやすいマルチエントランス型ウェブサイトの構築によって、コンテンツマーケティングの効果を高めていきます。
コンテンツSEO
SEO(検索エンジン最適化)対策のひとつで、コンテンツマーケティングの一部でもあります。閲覧者に対して有益な情報を提供し、集客につなげる手法です。また、記事コンテンツの量および質によって上位表示(=露出機会の増加)も目指します。バーチャル経営では記事制作のみならず、エンジニアによる技術的な内部施策も併せて行います。
ウェビナー(オンラインセミナー)
コロナ禍をきっかけとして一気に普及したウェビナーは、セミナーをオンライン化した手法です。デジタルマーケティングの入り口として使用することで、潜在顧客層から顕在顧客層への誘導がスムーズに進みます。
動画プラットフォーム
Yotubeをはじめとした動画プラットフォームは、テキストベースのウェブ検索に比べて上位表示が容易です。バーチャル経営では、動画プラットフォーム特有の検索アルゴリズムに適応した「VSEO」と組み合わせて動画によるアプローチも行います。
ランディングページ(LP)
ランディングページは製品・サービスの”顔”ですが、運用方法を最適化することでより高い効果が見込めるようになります。バーチャル経営では、ターゲットの属性を踏まえたマーケティング(ABM)と組合せながら、ランディングページによるリード獲得の「質」を向上させていきます。
ウェブ広告
ウェブ広告では、「SNS広告」「記事広告」「リスティング広告」「リターゲティング広告」など、ターゲットや用途に応じて最適な手法を選択していきます。
ホワイトペーパー
自社が携わっている事業やノウハウをとりまとめ、読者にとって有益な情報となるように資料化したコンテンツです。記事広告やコンテンツSEOと組み合わせることが多く、濃いリードの獲得につながります。
これらの他にも、下記のような手法・タッチポイントを駆使して、BtoBデジタルマーケティングを推進していきます。
- メールマーケティング
- SNS
- ABM
- インサイドセールス
- CRM
- MA
- SFA
まとめ
本稿ではデジタルマーケティングの概要と、BtoB領域において有用なツール・手法を網羅的に紹介してきました。次回はBtoBデジタルマーケティングの第一歩として「コンテンツマーケティング」を解説していきます。