MAはデジタルマーケティングの中でマーケティングの実務を効率化するツールです。MAはCRMやSFAとともにデジタルマーケティングを支えるコアなツールであり、中小企業でも普及が進んでいます。特にリード獲得からナーチャリングにおいては、MAの有無が大きな差につながるかもしれません。
MA(マーケティングオートメーション)の歴史
マーケティングオートメーションを初めて世に出したのは、米国のUnica社だと言われています。発祥は1992年で、まだインターネットが世に出て間もないころです。日本ではまだまだインターネットという言葉が広まっていませんでした。その後、1999年にEloqua社の製品が注目を集め、ようやくマーケティングオートメーションが市民権を獲得します。Eloqua社は、マーケティングの実務で求められる機能をパッケージ化して販売しました。これが世間で評価され、MA市場が形成されるきっかけになったようです。
その後、2000年代前半になると常時・高速接続のブロードバンド時代に突入し、MAの有効性が徐々に評価されていきました。日本でMAの導入が始まったのは2014年頃です。2000年代終盤に大手外資ベンダーのMA製品が次々に生まれ、こうしたMA製品が日本にも知られるようになりました。前述のEloquaやSalesForce社の「Pardot」などが代表的な例です。
なぜMAが広まったのか
MAが急速に広まった背景には、購買プロセスやBtoBマーケティングの変化があります。
Webからリードを獲得する
インターネットへの常時接続、高速通信が当たり前になり、小型のモバイルデバイスもどんどん高性能になりました。こうした状況において、顧客はいつでも好きなときに「解決策」を探せるようになりました。それまでは、課題の解決策を探す際に、雑誌・チラシ・電話を用いていたものが「検索」に置き換わったわけです。さらに、検索した情報をもとに「比較検討」を行い、場合によってはそのまま「意思決定=購入・契約」にまで到達できるようになりました。
つまり、オンラインの情報を使い、手のひらの上で意思決定までを行えるようになった顧客に対して、これまでと同様のアプローチは通じにくいのです。こうした流れの中でMAが持つ機能が注目されるようになりました。MAは、Webからの反応をベースにして、「解決方法を検索している顧客層」に対するアプローチを行います。比較検討・意思決定フェーズの前にいるリードを取り込んで育成し、SFAに展開することで受注までの橋渡しを行うわけです。
BtoBマーケティングコスト・セールスのコストパフォーマンスを底上げ
現代はマーケティング・セールスにもコスト意識が求められる時代です。顧客を「層」としてとらえるマスマーケティングよりも、「個」を想定したOne to Oneマーケティングが主流になりつつあります。ただし、One to Oneマーケティングは顧客の数が増えるほど労力も増大することから、マーケティング・セールスプロセスにも効率化が必要です。
もともとBtoBビジネスは、「意思決定組織」を相手方とした組織ぐるみの付き合いが基本です。また、BtoCに比べると新規開拓1件あたりのコストが高くなりがちで、受注までに要する時間も長いです。こうしたBtoB特有の事情に、前述のOne to Oneマーケティングの要素が加わり、「リード獲得・ナーチャリング・商談」といったプロセスをできるだけ効率よく進めることが求められています。
リード管理機能
オフライン(展示会やセミナー)から得た名刺の情報やWebコンテンツへのアクセスから得られた情報をリードとして管理します。
スコアリング機能
リードごとに受注角度を計算し、スコアリングによって管理します。例えば、メールキャンペーンで反応があったら1点、Web広告をクリックしたら2点といった具合に、接点単位で加減算を行います。
マーケティングシナリオの実行支援機能
マーケティングの現場では、リードが取り得る行動を予測したシナリオを作成することがあります。MAには「あるメールに反応したら次のメールを送信する」といった具合に、シナリオに応じたオペレーションを支援する機能が盛り込まれています。
他システム連携機能
CRMやSFA、ウェビナーツールなどと連携し、リード獲得やナーチャリングを行う機能です。キャンペーンと商談の紐づけや、ウェブ広告から獲得したリードの取り込み、取り込んだリードをキャンペーンへ追加するなど、マーケティング・セールスの一体化に貢献する機能を持っています。
その他の機能
Webコンテンツや問合せフォーム、簡易的なLPなどを作成する機能を持つ製品もあります。
CRMやSFAとの役割の違い
MAはCRMやSFAと連携することが多いですが、この2つとは明確に役割が異なります。
担当するフェーズの違い
MAはマーケティング・セールスプロセスの最も先頭で機能するシステムです。具体的には、リード獲得の実務領域を効率化し、ナーチャリングを経てセールスへと引き渡します。これに対し、SFAはMAで獲得したリードを商談化したり、商談の進捗状況を可視化したりと、セールスにおける情報共有と効率化を主軸とするシステムです。また、CRMは主に既存顧客の管理と育成、顧客情報の展開などが主な役割です。
近年のSFA、CRMはMA活用が前提
このように異なる役割を持つ3者を連動させることで、「MAで獲得したリードをSFAで商談化し、CRMに蓄積しながらアップセルやクロスセル、カスタマーサクセスにつなげてLTVを拡大する」といった施策が可能になります。そのため、3つの仕組みを一体化して運用する方法が一般的です。
ちなみに、CRMやSFAを提供するベンダーは、MAも提供していることがほとんどです。クラウドERP/CRMであるNetsuiteを提供するOlacle社は、MAとして「Eloqua」を持っていますし、SFA最大手のSalesforceも「Pardot」を提供しています。このことからも、MAがCRMやSFAと密接な関係にあることが理解できると思います。
MA単体で効果を創出する製品も
ただし、「CRMやSFAを導入していなければ、MAを使うことができない」というわけではありません。Oracle社の「Eloqua」では、SFAやCRMが存在しない状態でもマーケティング・セールスプロセスの効率化が可能です。例えば、「プロファイラー」というツールには、リードのプロフィールデータやアクティビティデータが保存されます。また、「エンゲージ」を使用すれば、営業担当者が顧客に送信したEメールに対する反応を追跡することができます。
MA運用のリソースをバーチャル化
MA運用はCRMやSFAと同様に、製品自体の知識や実際のビジネスを通じて得られたノウハウが必要です。こうしたノウハウは、長い時間をかけて蓄積されるため、導入したばかりの状態では運用がうまく進まないこともあります。
また、MA運用に長けたデジタルマーケティング人材は希少で、なかなか採用が進みません。中小企業の中には、採用に割く予算や時間が無いというケースも多いでしょう。
こうした企業に向けて、ベンチャーネットでは、MA運用の効率化を含むサービスを提供しています。
・デジトラ
Salesforce・Netsuite・Eloquaの運用課題を丸ごと解決する運用サポートサービスです。
・The Main
MAを軸として、デジタルマーケティングの仕組みづくりを行うコンサルティングサービスです。集客と商談化に特化し、ABMを盛り込んだ解決方法を提案します。
まとめ
ここでは、MAの歴史や普及した背景、CRMやSFAとの違いなどについて紹介してきました。MA運用が軌道に乗れば、マーケティング業務のデジタル化は一気に進むでしょう。もし、そのためのリソースが確保できない場合は、弊社までお気軽にご相談ください。次回は「SFA」について解説します。