バーチャル経営では、中小企業がイノベーションを起こすためのツールとして、ビジネスモデルを重視しています。激しい環境変化の中を生き抜くためには、既存事業が順調な時期にこそうまくいっている時期にこそ、あらたなビジネスモデルの構築に着手すべきです。ここではビジネスモデルの定義や重要性について解説します。
ビジネスモデルの定義
一般的にビジネスモデルとは、事業戦略や収益構造と言い換えられます。「誰に」「何を」「どのように」付加価値を届けるか、またどのように収益は上げるのか、などを明示するわけです。さらに近年は、「どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的かつ構造的に記述したもの」という定義も用いられるようになりました。バーチャル経営では後者をビジネスモデルの定義として採用しています。
なぜなら、中小企業には人手不足や資金力の問題を解決するために、「他者を巻き込む力」が必要だからです。他者を巻き込むには、複雑なビジネスの流れを単純化せずに説明し、誰もが納得できるような「共通言語」に置き換えなくてはなりません。また、「価値創造」に至るプロセスが明確であることも求められます。
ビジネスモデルの基本構造
一般的にビジネスモデルには「有用性」「実現可能性」「持続可能性」という3つの要素が必要だとされています。有用性とは、顧客にとって何らかの付加価値を提供できるかどうかです。有用性を証明するためには、「顧客からどのようなニーズがあるか」「どういった基準で選んでもらうのか」「どのように提供するのか」などを明確にする必要があります。
また、実現可能性とは資金、人的リソース、ノウハウ、技術などの面でビジネスが現実的なものかどうかを表しています。
3つ目の持続可能性は、ビジネスが継続的に収益を生み出すことができるかを表します。収益構造に穴があれば持続可能性は低いとみられるため、「稼ぐためのプロセス」を論理的に可視化しなくてはなりません。
さらに、これら3つの要素を踏まえつつ、「現在おこっていること(現象)とワンセットで構造を考える」ことも大切です。既存事業の概況、競合他社の状況、ビジネストレンド、業務上の課題などを加味したうえで、構造に落とし込むようにしたいところです。
代表的なビジネスモデル
ビジネスモデルを構築する上では、過去の事例分析が役立ちます。そこで、代表的なビジネスモデルをおさらいしておきましょう。
物販モデル(販売モデル)
物販モデルは、自ら製造・加工した商品を売るという、極めてシンプルなビジネスモデルです。製品の品質がそのまま付加価値となるため、製造プロセスやコスト計算が非常に大切です。
小売モデル
小売モデルは、物販モデルと同じようにモノを売るモデルですが「仕入れた商品を売る」という点に特徴があります。自ら製造・加工はせずに、仕入れと販売に特化しているため、それぞれのノウハウやルートの開拓が成功のカギを握ります。
広告モデル
広告モデルは、何らかのメディアやコンテンツを運営し、他社から広告掲載を募って広告料を稼ぐビジネスモデルです。テレビや新聞などのマス広告、インターネット上に掲載するWeb広告などが代表的な例です。また、個人でありながら非常に大きな影響力を持ち、旧来のメディアに依存しない「インフルエンサー」も広告モデルの新しい形態と言えるでしょう。
継続課金型モデル
何らかのサービスを提供する代わりに、決まった周期で一定の金額を支払ってもらい、収益の柱とするビジネスモデルです。サブスクリプションモデルとも呼ばれ、月単位・年単位での課金形態が主流です。音楽や動画の配信サービスは、大半が継続課金型モデルを採用しています。また、これまで物販モデルやレンタルモデルを採用していた企業も、徐々に継続課金型モデルへ移行する風潮が見られます。シェアリングエコノミーの影響から、近年大きく勢力を伸ばしたビジネスモデルです。
フリーミアムモデル
基本的なサービスは無料としながらも、一部のコンテンツを有料化し、有料会員を獲得するビジネスモデルです。消費者から「もっと便利な機能が欲しい」「内容の続きが気になる」といった衝動をうまく引き出し、収益につなげていきます。「基本無料+月額課金制」など、フリーミアムモデルは継続課金型モデルと併せて展開されることが多いです。フリーミアムモデルで集めた無料会員を有料会員へ転換させ、徐々にLTVの高いリピーターやロイヤルカスタマーへと育成していく、といった方法が王道かもしれません。
従量課金型モデル
従量課金型モデルは、サービスを利用した分だけ対価を支払ってもらうビジネスモデルです。一昔前の携帯電話業界で採用されていた「パケット通信料」や、ゲーム業界における「基本無料+アイテム課金制」などが該当します。また、身近なところでは電気料金や水道料金も従量課金型モデルです。古いタイプのビジネスモデルですが、無形商材との相性が良いために現在でも頻繁に採用されています。
マッチングモデル
マッチングモデルとは、商品・サービス・人などの需要と供給をマッチさせ、成功報酬を支払ってもらうタイプのビジネスモデルです。身近な例としては不動仲介業者(仲介手数料)や、婚活事業者(成婚料)などが該当します。また、比較的新しい例としては、クラウドソーシングサービス(システム利用料)も挙げられます。
ライセンスモデル
ライセンスモデルとはモノを使用する権利を提供(許諾)する代わりに、対価を得ることで収益につなげるビジネスモデルです。アプリケーションやキャラクターなど、特許権や著作権を根拠とした知的財産を提供することでライセンス料を得るケースが増えています。
レンタルモデル
レンタルモデルとは、商品やサービスを予め決められた間だけ貸し出し、時間に応じてレンタル料を受け取るビジネスモデルです。広義の従量課金型モデルとも言えるでしょう。また、カーシェアリングサービスのように「会費」と「レンタル料」を同時に得るケースも増えていることから、継続課金型モデルとの相性が良いモデルと言えそうです。
ビジネスモデルに「解」は無い
ビジネスモデルが優秀であると、次のようなメリットがあります。
- スケールイン、アウトがスムーズに進む
- 撤退条件が明確になり、失敗時のダメージを最小化できる
- 周囲に価値創造の仕組みを説明しやすくなり、影響力を強めてステークホルダーを巻き込む力が強まる
また、ビジネスモデルに決まった「解」はなく、企業によって最適解が異なります。先ほどのビジネスモデルの紹介でも触れましたが、近年は複数のビジネスモデルの特徴が融合していることが増えています。
そのため、物販モデルをベースにしながら従量課金型モデルやフリーミアムモデルの要素が加わる可能性もあるわけです。このように複数のビジネスモデルが絡み合う場合は、より一層「構造化」が重要になってきます。
さらに、中小企業の場合、資金力や販路、人的リソースなどが安定していないこともあり、頻繁にビジネスモデルを組み替える必要も出てくるでしょう。したがって、ビジネスモデルそのものも去ることならが、ビジネスモデルを作り出す思考法(フレームワーク)も熟知しておきたいところです。
バーチャル経営では、ビジネスモデルを生み出すフレームワークとして「ビジネスモデルキャンバス(BMC)」を推奨しています。ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスの構造を論理的に可視化するフレームワークです。現在のビジネスモデルに足りない要素や、他社との差別化要素、マネタイズポイントを洗い出せるという特徴を持っています。これについては、次回の記事で詳しく解説します。
まとめ
ここでは、ビジネスモデルの定義や種類について解説してきました。成功するビジネスモデルの背景には、必ずと言ってよいほど優秀なビジネスモデルがあります。次回は、ビジネスモデルを構築するフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」について解説します。