経営の可視化とは?目的・方法・ポイントを解説

経営の可視化は、企業の内部および外部のデータを一元的に収集し、分析・表示することで、経営状況や業務プロセスを明確にする手法です。この手法は、経営者が迅速かつ正確な意思決定を行うために不可欠です。

本記事では、経営の可視化の目的・方法・成功のポイントについて詳しく解説します。

目次

中小企業が経営の可視化をする目的

中小企業が経営の可視化をする目的について詳しく見ていきましょう。

月次決算データによる舵取り精度の向上

経営の安定化には、決算による定期的な振り返りが必須です。しかし、決算を「納税額の把握」や「経営状態の報告」のために行っている企業は少なくないと思います。裏を返せば、必要最低限の決算のみを行っていて、「月次決算」にまでは着手していないという企業が多いのではないでしょうか。特にオーナー経営者の経験やノウハウで運営している場合、月次決算はなおざりにされがちです。

一方で、舵取りがうまい経営者は、手元に必ず月次決算のデータを置く傾向があります。変化の激しい現代において、意思決定の参考とすべきは「月単位の動向」であることを知っているからなのでしょう。

透明性とリアルタイム性の高い経営

利益率を高めるための第一歩は経営の徹底的なシステム化です。なぜ利益率が高まるかというと、システム化によって透明性とリアルタイム性が向上し、仕事の廃棄や効率化が進み、コア業務へ投下できるリソースが増えるからです。

ちなみにベンチャーネットが提唱するバーチャル経営では、経営のシステム化を実現するソリューション群として「ベンチャーネットエンジン」を提供しています。詳細はリンク先の記事で説明していますが、ベンチャーネットエンジンでは、下記のように複数のソリューション・サービスで経営のシステム化をサポートします。

ベンチャーネットエンジンの前提は「経営にまつわるあらゆるデータを可視化」することです。可視化は決して難しいことではありません。NetSuiteのようなクラウドERPや、セルフサービスBIが持つダッシュボード機能によって、比較的容易に達成できます。

経営の可視化をすぐに行える理由

経営の可視化をすぐに行える理由は下記の3つです。

ステップが少ない

1つ目の理由は「ステップが少ない」ということです。経営の可視化に必要な材料は常に生み出されていて、単に整理されていないだけであることが大半です。したがって、整理→可視化という2ステップですぐに可視化が進みます。

中小企業の場合、ビジネスモデルは比較的シンプルですから、整理すべきデータも限定しやすいはずです。例えば、「素材を仕入れ、加工し、納品する」というビジネスモデルであれば、「人件費」と「購買と出荷に関するデータ」のみを整理するだけで、経営の可視化は一気に進みます。

ツールの成熟

2つ目の理由は、可視化に必要なツールが成熟していることです。特に、「セルフサービスBIツール」の普及は経営の可視化を一気に容易にしました。BIツールは社内に蓄積されたデータを抽出・加工し、さまざまな分析によって意思決定を支援するツールです。

しかし、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの多くは組み込み型で、レガシーシステムの一部として機能するものが大半でした。また、組み込み型であるがゆえに導入コストも高く、比較的規模の大きな事業でなければ採算が合わないことが多かったのです。さらに、データ抽出に1日以上の時間を要することもあり、リアルタイム性がやや弱いことも課題でした。

一方で、近年普及が進んでいるセルフサービスBIツールは「独立型・低コスト・リアルタイム」という特徴を備えています。一般的なPC用のアプリのように、手元ですぐにデータ抽出と分析、可視化が行える点が売りです。さらに、ダッシュボード機能によってグラフ化が容易であり、データ分析と可視化に特別なITスキルを必要としません。

こうしたツールの成熟により、「経営者みずからが、手元ですぐに意思決定の材料を得る」ことが可能になりました。

データドリブン経営の基礎になる

「データドリブン経営」という言葉が世に出て数年が経ちました。データドリブン経営は、簡単にいえば「企業活動の中で発生するさまざまなデータを駆使し、動的に捉えて意思決定に活かす」という経営手法を指します。

中小企業の経営者には、頻繁な意思決定の変更、精緻なかじ取りが求められます。そこでデータを根拠とした経営(データドリブン経営)が役立つわけですが、その前提は「データの可視化」です。

経営の可視化の手順

経営の可視化を効果的に実施するためには、以下のステップに従うことが重要です。

STEP
経営理念・使命の再確認

経営の可視化の第一歩は、経営理念や使命を再確認することです。これは、企業が何を目指しているのか、誰にどのような価値を提供するのかを明確にすることを意味します。例えば、経営理念として「顧客第一主義」を掲げる企業は、その実現のためにどのような戦略を取るべきかを具体的に示す必要があります。

STEP
データ収集と整理

次に、現場に点在するデータを効率的に収集し、一元管理する方法を検討します。例えば、ExcelやGoogle スプレッドシート、TableauやPower BIなどのツールを活用して、データの整理と可視化を行います。これにより、予算と実績のデータを定期的に収集し、分析しやすくなります。

STEP
KPIの設定とツール選択

KPI(重要業績評価指標)を設定し、それに基づいて適切なツールやテンプレートを選択します。例えば、KlipfolioやGeckoboardなどの専用ダッシュボードソフトを利用することで、リアルタイムでデータを視覚化し、パフォーマンスをモニタリングできます。

STEP
問題・課題の見える化

現在の問題を把握し、必要な課題を設定します。例えば、既存顧客の注文が減少している場合、その原因を分析し、「既存顧客への営業強化」や「新規顧客の開拓」などの課題を設定します。このように、問題の早期発見と適切な対策を講じることが重要です​​。

STEP
データの明確かつ説得的な提示

最後に、データを明確かつ説得力のある形で提示します。例えば、ダッシュボードを利用して、KPIやビジネス目標に対する進捗状況を視覚化し、経営者やチームメンバーと共有します。これにより、迅速な意思決定が可能となり、組織全体のパフォーマンスが向上します​ 。

経営の可視化の方法

経営の可視化は、企業が直面する複雑なデータを理解しやすい形にすることで、経営判断を迅速かつ正確に行えるようにするための手法です。以下に、具体的な方法とその利点について詳しく説明します。

STEP
グラフやチャートを利用した可視化

グラフやチャートは、データを視覚的に表現する基本的な方法です。これにより、データの傾向や関係性を一目で把握することができます。棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなど、さまざまな形式があります。

例えば、売上の月別推移を折れ線グラフで表示することで、季節ごとの売上の変動や成長トレンドを簡単に確認できます。また、部門別の売上構成を円グラフで示すことで、どの部門が最も収益を上げているかを一目で把握できます​。

STEP
インフォグラフィックスの作成

インフォグラフィックスは、データや情報を視覚的に魅力的かつ理解しやすい形式で表現する手法です。テキスト、グラフ、画像を組み合わせることで、複雑な情報を簡潔に伝えることができます。

新製品の市場シェアを示すインフォグラフィクスを作成し、社内プレゼンテーションで使用することで、関係者全員が新製品の市場での位置づけを迅速に理解し、今後のマーケティング戦略を立てやすくなります。

STEP
ダッシュボードの構築

ダッシュボードは、複数のデータソースからの情報を一つのインターフェースに集約して、リアルタイムでのデータモニタリングと分析を可能にする手法です。これにより、重要な経営指標(KPI)の追跡や業務の進捗状況の監視が効率的に行えます。

経営者がダッシュボードを使って、売上、在庫、顧客満足度などのKPIをリアルタイムで監視することで、問題が発生した際に即座に対応策を講じることができます。また、営業チームはダッシュボードを利用して、週ごとの売上目標達成状況を確認し、必要に応じて戦略を修正できます​。

STEP
プロセスマップの作成

プロセスマップは、業務プロセス全体を視覚的に示した図で、各業務の関係性やフローを明確にするものです。これにより、業務の無駄やボトルネックを特定しやすくなります。

製品開発プロセスをプロセスマップで示すことで、各段階でのタスクや責任者を明確にし、開発の遅れや重複作業を防ぐことができます。また、プロセスマップを使って新入社員に業務フローを説明することで、迅速なオンボーディングが可能になります​ 。

STEP
KPIの設定とモニタリング

KPI(重要業績評価指標)を設定し、それを定期的にモニタリングすることで、目標達成度を評価し、必要な改善策を講じることができます。KPIは、具体的かつ測定可能な目標であることが重要です。

例えば、顧客獲得コスト(CAC)や顧客生涯価値(CLV)などのKPIを設定し、月次でその数値をモニタリングすることで、マーケティング戦略の効果を評価し、必要に応じて調整を行います。また、KPIをダッシュボードに表示することで、経営陣がリアルタイムで状況を把握できます。

NetSuite+Power BIによる経営の可視化

経営ダッシュボードの実装は、ERPに組み込まれているものを利用することでも可能です。例えば、クラウドERP「NetSuite」には、経営ダッシュボードとして利用可能な機能が標準搭載されており、経営ダッシュボードをブレイクダウンして業務領域ごとに表示できる各種ダッシュボードも充実しています。

費用ダッシュボードでは、費用・経費に関連する情報を表示し、支出動向やパターンを迅速に理解できます。財務ダッシュボードは財務状況や業績に関する情報を表示し、財務の健全性やリスク、投資の機会などを評価するのに役立ちます。

営業・マーケティングダッシュボードは営業活動やマーケティング活動の成果を取りまとめて表示し、経営者、営業チーム、マーケティングチームで施策ごとの成果を共有し、調整を行うためのデータベース的な役割を果たします。

顧客ダッシュボードは顧客関連のデータを中心に、顧客の動向、行動、満足度などの情報を視覚化し、効果的なマーケティングやサービスの提供、顧客対応の実施につながります。

経営データの可視化は「経営ダッシュボード」を作ってしまえば非常にスムーズに進みます。

PowerBIでより使いやすい経営ダッシュボードも実現可能

NetSuiteに渡すデータを事前に集計・抽出する、もしくはNetSuiteに蓄積したデータを別なフォーマットで表示したい場合には、「Power BI」の活用もおすすめです。Power BIは、Microsoft社が提供するビジネスアプリケーション開発プラットフォーム「Power Platform」の一部です。いわゆる「クラウド型のセルフサービスBI」であり、データ抽出や変換、統合、レポート作成などを半自動で実行できます。

また、Power BIは「ノンプログラミング」がテーマのひとつであり、非IT人材であっても自由にカスタマイズ・運用できる点が強みです。さまざまなデータソースとの接続も可能で、エクセルからの変換やNetSuiteとの連携にも対応できます。

ちなみにPower BIは、デスクトップアプリ・SaaS・モバイルアプリの3つの形態で利用可能なほか、モバイルであればAndroidやiOSにも対応可能です。このことから、デバイスやOSを限定することなく、経営ダッシュボードの作成が進められます。

移動中や出先ではスマートフォンから、オフィスではPCからといった具合にアクセス環境が異なる場合でも、常に一定の情報を得られるという点が大きなメリットです。

まとめ

経営の可視化とは、企業の内部および外部のデータを一元的に収集し、分析・表示することで、経営状況や業務プロセスを明確にする手法です。ツールの成熟により、経営の可視化は比較的容易に実現できるようになっています。ベンチャーネットでは、経営の可視化についてNetSuiteやPowerBIについて導入支援を行っておりますので、お気軽にお問合せください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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