「メタバース」への関心が高まってきています。もともと仮想現実やVRは次世代の技術としてかねてより注目されていましたが、Facebook社が「Meta」へと社名を変更したことで、ビジネスシーンでも活用を模索する動きが高まっており、バズワード化しつつあります。
しかしながら、注目されつつある状況とは裏腹に、メタバースが何を指しているのが、実際のメリットやデメリット、ビジネスでの活用などの具体的な側面はあいまいないし混乱しています。この記事では、前提知識について整理した後、ビジネスにおける活用方法や注意点について紹介します。
そもそもメタバースとは?
メタバースはもともとSF小説で生み出された造語であり、いろいろな人によってさまざまな定義がされていますが、「インターネット上の仮想空間」は共通した認識といえます。
シリコンバレーの著名な投資家であるマシュー・ボール氏は、「仮想現実」など他の用語とは異なる「メタバース」の特徴として以下の5つを挙げています。
- 永続的:リセットや一時停止がない。1つの会社に左右されない。
- ライブ体験:世界中のだれもがリアルタイムで時間が共有されている。
- 無制限の同時接続:サーバーの制限がない
- 経済圏がある:メタバース空間にいる個人や企業が報酬を得られる
- 体験がまたがる:プラットフォームをまたいで装備品などが利用できる
もちろん現在のメタバースを称するプラットフォームが上記の5つの特徴をいずれも兼ね備えているとは言い難いです。今後インターネットのように、プラットフォームとして強固なものになるための要素として考察されています。
また、企業主体/コミュニティ主体と、NFTやブロックチェーンの利用の有無などの要素で、Web2.0型クローズドメタバースと、Web3.0型オープンメタバースで分けて考える見方もあります。
(参考:「web2.0メタバースとweb3.0メタバース」)
特徴 | Web2.0型クローズドメタバース | Web3.0型オープンメタバース |
---|---|---|
運営主体 | 企業 | DAO(自律分散型組織) |
出資者 | 株主 | トークンホルダー |
ブロックチェーン・NFT | 必須ではない | 必須のケースが多い |
コンテンツ | 企業がメイン、ユーザーはサブ | コミュニティがメイン |
具体例 | Meta社、VRChatなど | Decentraland、UPLANDなど |
いずれにせよ、まだまだ黎明期の概念であり定まった定義というものはありません。しかし、ビジネスとして活用する場合、参入を検討するVRプラットフォームがどのような属性を持つかは事前に把握しておく必要があります。
例えば、BtoBビジネスの商談やワークショップ開催では、企業が提供するVRプラットフォームが適している場合が多いです。一方、NFTの企画・販売を検討している場合、NFTの開発の予定がない・禁止しているプラットフォームは適しません。
インターネットと異なり、メタバースはまだまだプラットフォームが確立されているわけではありません。自社で検討しているビジネスを踏まえたうえで、プラットフォームを選定する必要があります。
ビジネスにおけるメタバース活用のポイント
次に、ビジネスでメタバースを活用するにあたって、考えられるメリットについて以下に列挙します。
2次元では得られない圧倒的な「存在感」「没入感」
OculusなどのVRデバイスを活用する場合、これまでと圧倒的に異なるのはコミュニケーションの相手の「存在感」と空間への「没入感」です。
近年はリモートワークの推進や、コロナ対策の観点からZoomやGoogle Meetといったオンラインミーティングツールを活用する企業も多くなったと思います。しかし、これらのツールによるコミュニケーションでは、リアルでのコミュニケーションに比べて画面上のやり取りになってしまうため、例えば営業で相手の熱量が読み取りにくかったり、参加者の一体感は得られにくいといったデメリットがあります。
このあたりの不都合を解消するうえで、メタバース空間でのコミュニケーションやワークショップは非常に適しております。また、メタバース空間でのコミュニケーションによって、ポジティブな気分が上昇する一方、ネガティブな気分が減少するといった研究成果もあります。
これだけ聞くと「なぜ?」と思われるかもしれませんが、テーマパークや映画で非日常の空間にいた時、時間があっという間に経過していて、その時は疲れを感じなかったという経験はありませんか?メタバース空間の参加はこれと同じことが起こっていると考えられます。
また、同じ空間にいながら、VRデバイスを経由しているため心理的安全性が保たれていることから、リアル空間とオンライン空間の両者のメリットを兼ね備えたのがメタバース空間だと言えます。
このメリットを生かし、営業活動やコンサルティング・コーチング、チームビルディングや組織開発にメタバースを活かすのがポイントとして考えられます。
参加者の「同時性」を活かす
先ほどのポイントにも関連しますが、メタバース空間では参加者が今何をやっているのかがリアルタイムで把握できます。そのため、参加者が何をやっているのかが影響されやすい分野では、この「同時性」をプラスに活かすことができます。
例えば、メタバース空間を用いた物販の事例では、他の参加者がリアルタイムで商品を検討しているのが可視化されたことで、デパートの贈答品が通常の通販よりも売れたというケースがあります。メタバース空間を活用したショッピングでは、通常のオンライン通販に比べて、購買検討者のモチベーションを上げることにつながります。
プラットフォーム黎明期の先行者利益
ガートナー社によれば、2026年までにメタバースに過ごす人が人々の4分の1以上になると予測しています。しかし、メタバースをめぐる開発やプラットフォーム確立はまだまだ始まったばかりであり、今のうちから検討しておくことでビジネス変化にもいち早く対応することができます。
インターネットやスマートフォンが登場した当初は、大半の人はこれほど普及するとは想像できなかったはずですが、今ではビジネスに多大な影響を及ぼしています。
新しい技術に対してアンテナを張り、定点観測と検討をすることで、自社にとって最適な参入タイミングを考えることができます。
メタバース活用における注意点
これまでメタバースにまつわるポイントについて見てきましたが、まだまだ課題や注意点も多いです。
デバイスやプラットフォームはまだまだ開発段階
VRデバイスを利用したことがある人なら誰でも、「デバイスが重い」「画質が荒い」「装着し続けるのが難しい」といった感想は一度は抱いたと思います。現在よく使われているPCやスマートフォンなどに比べると、デバイスはまだ発展途上であり、改善すべきポイントは多いなと正直感じます。
プラットフォームにおいても、現在さまざまなプラットフォーマーが参入と開発を行ってはいますが、いずれのプラットフォームも一長一短なところがあります。
利用活用方法は手探り状態・導入へのハードル
黎明期のプラットフォームであり、ユーザーもプラットフォーマーも手探りな状態は多いです。利用方法が活用されていないことに加えて、VRデバイスを用いる場合、PCを用いた導入のセットアップに比べてハードルが高いため、より一層のリテラシーが求められます。
直感的に使えるスマートフォンや、登場から数十年が経過しているPCに比べて、VRデバイスは登場して数年もたっていないため、まずデバイスを購入し操作する、という最初のハードルが低くなるにはもう少し時間がかかりそうです。
まずはいち早く「体験」してみる
これまでメタバースについて概観してきましたが、百聞は一見に如かず、VRデバイスやPC、スマートフォンを用いてメタバース空間を体験することをおすすめします。可能ならVRデバイスを通じて体験することで、メタバースが持つ可能性と現状の課題について体感することができるでしょう。
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